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アルテナの箱庭が満ちるまで  作者: 赤野用介@転生陰陽師8巻4/15発売
第三部 第九巻 天鎚戦争(12話+2) ~支配者の領域~

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第06話 集結命令★

 バダンテール歴1265年4月。

 ベイル王国軍による旧ハザノス・ラクマイア王国の神宝珠回収作戦は、獣人帝国に開戦以降かつてない衝撃を与えていた。



 神宝珠の加護範囲という絶対安全な寝室で甘美な夢を見ていたところ、物音がしてふと目を覚ます。

 すると周囲には部屋の壁も天井の屋根も無く、荒廃した世界には加護の代わりに瘴気だけが永遠と広がっていた。

 これは一体どういう事だと慌て始めたところ、周辺の全ての家が同様に加護を失って瘴気で満たされていた。


「よし、これは夢だ。とりあえず寝よう。夢の世界で寝たら現実の世界で目が覚めて、そこには加護の世界があるはずだ」


 そう思って寝ようとしても、魔物の泣き声が煩くて中々寝付けない。

 しかも魔物の声は、次第に大きくなっていく。


「魔物が都市に入ってくるなんてそんな馬鹿な……ははは、どうやら本格的に寝ぼけているようだ。こんな悪い夢は、早く覚めてくれ」


 そのまま寝れば、こちらの世界では二度と目を覚ます事は無くなるだろう。



 つまり獣人達は、衝撃が大きすぎて現実を受け入れられなかったのだ。

 軍団長戦死の時ですら「一体どれほどの激戦であったのだ。倒した者は何人掛かりであったのか」と現実に向き合ったにもかかわらず、今回の彼らは現実を受け入れかねた。

 純軍事的には「なぜ最前線から遠く離れた都市が」「同時多発的に」「獣人戦士たちの防衛があるにもかかわらず攻め落とされたのだ」との理解不可能な部分が現実を受け入れる事を拒んだ。


 尤もそれは一般レベルの話であって、獣人帝国自体は国家組織として対応に全力を挙げていた。

 宝珠が失われたからと言って、周辺へ振り蒔かれた加護が即座に消えて無くなる訳では無い。月単位の時間を掛けてゆっくりと薄れていくだけであり、対策をする時間はある。

 まず大型伝令鳥や早馬、深謀のイグナシオによる転移で各都市の詳細な被害状況や敵軍の確認が行われた。

 次いで応急的な対策が検討され、宝珠を失った都市からの住民避難と後方都市での受け入れ命令が飛び交った。

 この時点でも獣人帝国側が保有している神宝珠は人口995万人規模であり、避難民の受け入れには全く支障が無い。1都市辺りの人口密度を増やす事によって宝珠の力を失わせる時間が多少早まるが、それでも人類の側より密度は低いのだ。


 だが、これ以上の被害拡大を防ぐ必要はある。

 宝珠を奪われた都市に隣接している全都市は、直ちに24時間の防衛態勢に入った。国家自体も平時から非常時態勢へと切り替わり、予備役の点呼が行われ、祝福上げのために解かれていた部隊が編成され直して前線への移動を開始した。

 そして…………。






 Ep09-06






 ベリンダの眼前には、各情報が集約された地図があった。


 地図をいくら睨みつけても、紙に記された情報自体が変わるわけではない。

 だが皇女ベリンダは『驚愕の事実を受け入れるための時間』と、『茫然自失から立ち直るための怒り』の二つを得るために暫くの間、唸り声を漏らしながら地図を睨み続けた。


 ★地図

  挿絵(By みてみん)


 地図を睨みつけてから、一体どのくらいの時間が経っただろうか。

 ベリンダの体感時間では、これまでの人生で僅かに数度立ち止まった時と比べても、かなり長い間を必要としたように思える。

 もしかすると弟である皇子ブレーズと皇帝に次ぐ実力者であった金羊大公ヴィンフリートが、二人揃って人間に殺された時の最長記録を塗り替えたかもしれない。

 あの時は、ブレーズがヴィンフリートの足を引っ張ってしまったのではないかという思考の迷路から抜け出せなかった。

 そして今回は、情報収集の不足が現状を招いたのではないかという迷いからの脱出に時間が掛かった。


「まさか、神宝珠を持ち去るとはな」


 かつてない衝撃は二つある。

 一つは『神宝珠を持ち去る行動』自体で、もう一つは『空から回収するという実行手段』に関してだ。


 まず一つ目の『神宝珠を持ち去る行動』について。

 ベリンダも、神宝珠を物理的に持ち運べるという事は知っている。その影響力を目の当たりにした地上の統治者でありながら、どうして神宝珠を調べずに居られようか。

 人類から情報を得る聞き取りだけではなく、天山洞窟内に運び込めないものかと移設を試みた事もある。その結果として第一宝珠格が2つ永久に失われた。

 これらの経過を経たベリンダは『神宝珠を無暗に動かしてはならない』という人類の不文律を理解していた。

 そして今回、その不文律が人類によって破られた事は衝撃であった。


 次に二つ目の『空から回収するという実行手段』について。

 人類はペリュトンという翼の生えた飛行生物を乗騎とすることにより、空での作戦行動を可能としている。リーランド帝国が行ったジュデオン王国側での偽りの戦いなどはベリンダの記憶にも新しい。

 だが、人類が扱えるペリュトンは数十頭程度と決して数が多くない事も知っている。その程度の数で複数の都市を攻めてくるなど正気の沙汰では無く、空から回収するなどという実行手段は取り得ないと考えていた。

 その二つの相乗効果が、今回の結果へと繋がったのだ。



 神宝珠の消失は、獣人帝国に少なからぬ影響を与えると同時に、人類にとっても諸刃の刃である。

 では一体誰が神宝珠消失のような悪名を引き受けてまでやるのかという事であるが、その答えは金狼のガスパールや無敗のグウィードを殺した男であった。

 ベリンダにとっては、無名の者が行うよりもずっと納得できる。

 実力と実績を兼ね備えた男であれば、多少強引な作戦でも周囲を納得させ易い。例え不満を口にする者がいても「ではその理論を提唱する貴様は、これまでに一体どのような成果を出したのだ?」と問えば済む。

 むしろハインツという男でなければ、このような暴挙にも近い苛烈な行いを実行する事は出来なかったであろう。

 ベリンダは相手に出し抜かれたことを悔しく思ったが、それが軍団長を2度も殺した男であれば、小物が姑息に蠢動するよりも遥かにマシであると思い直した。


 (強い男が、それに見合う成果を出した)


 ならばそれを受け止めて過小評価を改めるべきであって、現実逃避して自己満足に浸るなど、皇女という地位に伴う責任の放棄である。


「ハインツは、私の敵だ」


 そう口にしたベリンダは、ようやく思考の迷路から脱した。

 ベリンダは、軍団長を2度殺した上に逆侵攻まで果たしたハインツに対する評価を『軍団長以上の男』と改めた。ならば今後はベリンダの敵となる。

 事実を完全に受け入れたベリンダは、次の対策へと歩みを進めた。それは「仮の」や「応急の」ではなく、頭に「根本的な」や「抜本的な」が付いた対策だ。


「ベイル王国のハインツは、ガスパール軍団長とグウィード軍団長を殺した男。南部地域は奪い返される事も想定しており、重要な施設は何一つ置いておりません」


 そもそも獣人帝国は、地上本土と見做す旧インサフ帝国領の一部都市以外には、存立を脅かされるような基幹施設は一切置いていない。

 それはイグナシオ自身が日頃公言しており、ベリンダにとっても改めて言われるまでもない事だ。

 他に大切なものと言えば人材だろうが、イグナシオは皇帝が下賜した転姿停止の指輪を嵌めている者以外をそこまで重要だとは見做さない。皇帝への忠誠心と、転姿停止の指輪の効果故に。


 イグナシオは老化や死亡でいずれは戦場を離れる者達を多少長らえさせるよりも、次代の駒を絶やさない事にこそ重点を置くべきだと考えている節がある。

 そしてベリンダ自身も「確かにそれはそれで一理ある」と考えている。

「次代の者」ではなく「次代の駒」との認識に対しても、イグナシオ自身が獣人帝国の国家運営の根幹を担う人材であり、彼の立場ならば戦闘員一人一人の人格にまで斟酌していられないとしても無理は無い。

 それで何らかの問題があれば、その都度イグナシオを監督する立場のベリンダが正せば良いのだ。


「地図を俯瞰しますに、ハインツの目的はベイル王国と我ら帝国との間に瘴気に満ちた距離の壁を作ることのように思われます」

「かつて暮らしていた天山洞窟内に宝珠都市が存在せず、その瘴気に満ちた天山洞窟を踏破した我々が歩めぬ距離とは思えぬ。それよりも廃墟都市となった地域から、残った者たちも全て撤収させよ」

「はっ」


 そもそも獣人は、宝珠都市を一つも持たずに永い時を暮らしてきた強い種族だ。仮に全ての宝珠都市を失ったとしても、それで獣人が死滅するわけではない。

 もっともベリンダや軍団長たちがいる以上、人類に全ての神宝珠を奪い返されるなど想像できない。

 ベリンダの想像する軍団長たちならば、アルテナ神殿に突入したベイル王国軍を軽々と薙ぎ払える。魔導師特殊系のイグナシオならば、神殿ごとクロスアストラルウォールで一網打尽にしてしまうだろう。


 軍団長一人と1個軍団では『軍団長以上の男』に不覚を取るかもしれないが、二人以上の軍団長が2個軍団以上を伴って同時に戦えばどうだ。

 ベリンダは唯一前線に出してリーランド帝国を睨ませている破壊者オズバルドの第一軍団に対しても、直属軍団長補佐である銀猫のカルディナと巨爪のウルマスの2名と、5個大隊もの増援を出している。

 1個軍団に配備される大隊長の定数は本来4名であるから、軍団長補佐2名と大隊長5名の増援を含めて合計11名の大祝福2が配備されているオズバルドの軍団は、大祝福2の配備数で言えは実質的に3個軍団にも匹敵している。

 そこへ転移でイグナシオも戦列に加えさせれば不覚は取らない。


「此度の最大の問題は、人類の移動手段がどうやら空を飛ぶ船であるらしい点です」


 ベリンダの想像する軍団長たちがアルテナ神殿に突入したベイル王国軍を薙ぎ払っていると、その軍団長の一人であるイグナシオが懸念を表明した。


「どういう意味だ?」

「船は人が造れます。壊しても新たな船を造り続けられ、全ての都市に自由に攻め入られては、今後帝国は数多の都市の加護を失います。ですが神宝珠を安全な本国へ運ぼうとも、神宝珠が加護を発しなくなれば意味を成しませぬ」

「では、お前はどうすべきだと考える」

「他国が真似をする前にベイル王国自体を早々に滅ぼし、可能ならば我々がその船を手に入れるべきでしょう」


 ベリンダの眼前では、あくまで忠犬を装うイグナシオが畏まっている。

 だがフェンリルの肌に感じられたのは。表情と相反する彼の歓喜だった。

 ベリンダは一瞬イグナシオを咎めようかと思ったが、彼が私的感情に走っているとしても、その好奇心はイェルハイド帝国の利に適うと思い直した。

 ベイル王国を滅ぼし、かの飛行する船とやらを手に入れるのは獣人帝国の国益に適う。そしてベイル王国が気ままに飛び回る現状を座視する事も出来ない。

 ようするにベリンダ自身が手綱を握れば良いのだ。


「…………ベイル王国への対策を告げる」

「はっ」

「侵攻軍総司令を私自身とし、イグナシオには副将を命ずる。動員は5個軍団。グレゴールの第七軍団、イルヴァの第八軍団、ヴァルターの第四軍団、イジャルガの第二軍団、そして直属5個大隊。これにアギレラを加えて大祝福3台は7名同時に投入する。後方支援は1万人以上。敵船数より多くの飛行獣人も揃えよ。圧倒的な力を以て、ベイル王国を一気に滅ぼす」

「ははっ!」


 人獣戦争の勃発時、天山洞窟内で人獣両軍による『天山洞窟内会戦』が行われた。

 ベイル王国に倍する人口規模であったインサフ帝国が、アスキス、ハザノス、ラクマイア、エンドア、ディボー、ベイルの6国、さらにそして北部連合にまで働きかけてかき集めた数万人の迎撃軍は、獣人帝国の5個軍団によって瞬く間に壊滅させられた。

 そのかつての戦いに比肩する強大な牙と爪が、ベイル1国に向かって真っ直ぐに振り上げられた。






 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 獣人帝国の大軍が、続々と第一宝珠都市アズラシアに集結を続けていた。

 このアズラシアは、ベイル王国のエルヴェ要塞都市まで6都市の距離に位置する獣人地上本土最西の都市である。

 ここから最短距離でベイル王国へと突き進み、その懐へと潜り込んで叩き潰すのだ。

 普通定期便で18日の距離であるが、徒歩の者も多いので時間的には2倍以上を要するであろうか。何しろ1個軍団で4000人。5個軍団なら2万人である。

 各都市からかき集められた2万近い支援兵と輸送用の馬車、そして沢山の軍事物資はそれら大軍の軍事行動を支える為に用いられる。


「意外に速かったな」

「…………何がだ?」

「戦争の再開が。アギレラなど大祝福3に上がった直後で、まだ自分の軍団を持っていないのに」

「……ああ」


 大軍の集結を眺めながらそう話した首狩りのイルヴァに対して、皆殺しのグレゴールは何を悠長な事を言っているのだと思った。

 草食獣が生まれた直後だからと言って、逃げ切れる足を持つまで肉食獣が狩りを待ってくれるとでも思うのかと。


 (生まれた時から戦いだ)


 勝つ者と負ける者が居る。その者がいずれに属するのかは、最終的には結果だけで判断される。そして勝ちたければ、運に見放されても実力でゴールまで走るしかないのだ。


 (何事も他者に与えられる事を望むな。走って辿り着けるのであれば走れ。死に物狂いで走れ。走れなければ死んで囮となれ)


 子供を産むのならば、産む以前に完全に安全な場所へ避難しておく。敵を仕留める機会があれば、確実に仕留めておく。そこまでは、確かに親の義務である。そして軍団長である皆殺しのグレゴールが、帝国臣民に対して行う義務でもある。

 だが5年もの歳月を与えられてなお時間が足りないなど、甘いにも程がある。それに従軍している戦士達は、生まれてからではなく祝福を得てから5年くらいは自分を高める時間を貰っているはずだ。

 それで足りないなら一体何年欲しいのだ。10年か、それとも20年か。だがそれだけ無ければ勝てない相手であれば、狩りの対象自体を再考すべきである。

 単に雪豹のイルヴァが、近親種である豹のアギレラを気にしただけかも知れないが。


「此度の出兵は、果たして戦争と言えますか。大祝福3台が7名も出るなど、これは一方的な蹂躙でしょうなあ!」


 無双のヴァルターが確信を以てそう断言した。

 どうやら最近は、力でねじ伏せる考え方が主流であるらしい。加えて獅子であるヴァルターは、その典型的タイプであるようだ。

 力を振るうにしても敵に対して奢り油断すべきではない。戦いとは互いに全力で殺し合う事であり、一方的な蹂躙ではないのだ。


 (オレが慎重なだけか?)


 皆殺しのグレゴールはその二つ名に似合わず、皇女ベリンダがアスキス王国攻略時に各地で突出しようとする軍団長を抑えさせようとした時にも、その対象から外される程に慎重な男だと目されている。

 グレゴールが自ら攻める時は、それが必要な時だ。必ず勝てるとは限らないが、それならば尚更攻めなければならないほどに必然性が高い。だから、グレゴールは止める必要が無い男だと見なされて放任されている。

 だが今回は大祝福3を7人も集め、5個軍団と2万の支援要員まで用意している。確かにグレゴール自身も帝国軍が負ける姿は想像できない。


 (……どうにも引っかかりはあるが)

「各個撃破に注意すべきでしょう」


 凜とした美声が響き渡った。

 美しい水馬アハ・イシュケの獣人、蒐集のイジャルガである。

 塩水湖や沼を住処とするアハ・イシュケは、獲物を騙して水中に引きずり込み貪り食う。獲物を狩るにしても、力だけではなく大いに知恵を用いる生き物だ。


「金羊大公ヴィンフリート様の戦死は、戦場で軍団長1名が孤立した際の出来事です。地上の軍団長も全て同様。皇女殿下をお一人にさせない事は無論、我々自身も心すべきかと」

「…………ふむ」「…………ぬぅ」


 金羊大公の名を出され、イルヴァとヴァルターが若干鼻白んだ。

 既に過去の人となりつつある金羊大公であるが、彼はイェルハイド皇帝と共に東の地上世界で竜人種と戦った最後の仲間の一人である。

 どれくらいの強さであったかというと、同じく生き延びた祝福99の惨殺者アミルカーレ、祝福98の悪魔ゲロルトよりも上であった。両者はいずれも銀の優越種であり、おそらくは地上軍団長の誰よりも強いのに。

 そんな上の上である金羊大公だが、それでも人類に殺された。

 だから確かに油断すべきではないのだ。


「白槍のゲイズティによる報告では、人類側には大祝福3の魔導師特殊系が居るとの話だ。大祝福3の『トランスファレンス』、『クロスアストラルウォール』のいずれも確認されている」


 沈黙を守っていたアギレラが議論の波に新たな一石を投じた。

 その報告は、アロイージオ軍団長とラビ軍団長戦死の原因と考えられている。

 アロイージオ軍団長が石化されて落とされ、ラビ軍団長は麻痺など何らかの状態異常を使われて弱ったところを殺されたのだろうと。

 これまで一度も姿を見せた事のない大祝福3の魔導師が突然戦場に現れたなど俄に信じがたいが、そうであれば軍団長戦死という驚愕の事実にも納得ができるのだ。

 それに目撃者も複数居る。直属軍団で1個大隊を預かるシアン大隊長もその一人であり、件の『ゲイズティ報告書』は事実であろうと判断されている。


「可能性としては、ベイル王国宰相ハインツの妻オリビアが最有力候補だ。違うかも知れぬが」


 アギレラが言うとおり、可能性としてはそれが高い。

 オリビアは祝福80として知られているが、金狼や無敗を殺したベイル王国宰相の妻であれば、獣人帝国に目を付けられないために実力を隠すと言う事もグレゴールにならば理解できる。

 もしもオリビアが大祝福3ならば、グレゴール達も警戒するからだ。

 ジュデオン王国は冒険者の都と言われており、冒険者であるオリビアが偶然居合わせていた可能性が無いとは言い切れない。

 だが、アロイージオ軍団長を倒したのはオリビアではないかも知れない。

 そう考えるのにも理由がある。


「金羊大公ヴィンフリート。それに冥界のアギラルや古のアドフィン、死神のエステルなど多数の軍団長たちを殺したのは、『別大陸からやってきた人類の冒険者パーティ』であった」


 アギレラが言葉を足したとおりである。

 それはつまるところ、周辺国でも把握していない冒険者が混ざっていると言う事である。


 (まだ居るのではないか。例えば、大祝福3の魔導師特殊系など)


 そんな事は誰も分からない。

 世界がどれだけ広いかなど、誰も知らないのだ。


「…………油断はせぬ方が良い」


 グレゴールの万感を込めた一言に、軍団長達が黙して頷いた。

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