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アルテナの箱庭が満ちるまで  作者: 赤野用介
第二部 第七巻 改革の導き手(11話+エピローグ) 結の章
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第01話 宿屋にて

 遡る事1年以上前のバダンテール歴1261年10月。

 王国の新たなる継承者誕生を告げられて歓声に湧く王国民に対し、父親となったイルクナー宰相代理の演説が行われた。


 『王都ベレオンに集いし民よ、汝らに問おう。国の指導者が唯一為すべき役目とは何であるか』


 エアーエコーの重ね掛けによって王都の広範囲に届いたハインツの言葉に、過去の前例を捩った宣言だろうと思っていた人々は首を傾げた。

 唐突に国の指導者がすべきことを聞かれても、平民に分かるはずもない。

 いや、「暮らしを楽にする事」や「税を軽くする事」や「外敵から民を守る事」などと様々に答える者達も居た。だが、唯一と言われてはどれを優先して良いか分からない。人々は口々に答えた後、結局イルクナー宰相代理の次の言葉を待った。

 充分な間が置かれ、ハインツの言葉が続いた。


 『国の指導者が唯一為すべき役目とは「次代の者に、より良い状態で国を引き渡す事」である』


 その言葉の後に、また暫くの時間が置かれた。

 言われてみれば、当たり前のことである。国家は個人の寿命よりも長く続く。

 であればその時代の指導者は、次の時代の指導者に自分が引き継いだ時よりも良い状態で国を引き渡すのが役目であろう。

 ハインツは言葉を注ぎ足した。


 『国家が大きすぎるのであれば、個人で考えよ。親が子に受け継がせるのは、財産と借金のどちらが良いか。あるいは商会が次代の会長に受け継がせるのは、人脈や信用と軽蔑や不信のどちらが良いか。語るまでもない。国家とて同様である』


 その説明を聞いて、ようやく民の大半がハインツの説明を理解した。

 親から借金と近所での悪評を受け継ぐより、財産と好評を受け継ぐ方がずっと良い。

 あるいは大商会を受け継いだ者が財産を増やして子供に渡せば良い経営者と言われるし、先代が築いた財を失えば無能者との誹りを受ける。

 国家もそうだと言われれば、なるほどその通りである。

 国家の指導者が次代の指導者に引き渡すべきは借金ではなく財産であり、衰退した都市ではなく発展した都市であり、疲労困憊した民ではなく英気を持った民であろう。


 国力30で引き渡されたのならば、国力を35に、40に、あるいはそれ以上にして次代の者に引き渡すのが指導者の役割である。

 もちろん国家が30から40に上がっても、個人では50にまで上がる者や、逆に20に下がる者もいる。

 だが国が30から40に上がると言う事は、民の平均も30から40に上がっているのだ。そして国の向上率が上がるほど、暮らしが改善する民の割合も高くなる。そして文句を言う人間が少数になればなるほど不満の声も減っていく。

 ちなみに法の公平性や当人の努力によって暮らしの明らかな改善が見込まれるのであれば、その状態で不満を言ってもただの言いがかりになる。そういう制度改革も『国をより良い状態にして引き渡す』に含まれているので、結局ハインツの言った通りの話になる訳だ。


 『敢えて宣言しよう。私、ハインツ・イルクナーの果たすべき役割は、エドアルド王陛下から預かったベイル王国を、預かった時よりも良い状態で次代の継承者に引き渡す事である。そして今日、ベイル王国の継承権を持つアリシア・ベイルが誕生した』


 この時、王国民は誕生した王位継承権者が女児である事を尊名と共に知らされた。

 父親は、数年で国力を倍加させた政治の天才イルクナー宰相代理。

 母親は、周辺国で最後まで民に慈悲を示し続けたアンジェリカ次期女王。

 生まれたベイル王国は史上類を見ない速さで躍進を続けている大国で、アリシアは母の女王就任後に王位継承権1位となる未来が約束されている。

 まるで神々の寵愛を一身に背負ったかのように全てに恵まれて誕生した殿下だが、アリシアという名は誠実な者との意味がある。彼女には身分に奢るべからずとの意味を込めて、その名に人生の自戒が示された。

 民には、今後の王国がどのように歩んで行くのかが見えた。


 『私はアリシアの成長と共に、ベイル王国も成長して行くように努力しよう。今日はその第一歩となる。新生したベイル王国の未来に、民の数だけ幸あらん事を』


 ベイル王国民は自分達が今どれほどの国で暮らしているのかを理解した。

 そしてハインツが演説を終えた後、彼らの怒涛の歓声が王都全体に響き渡って行った。






 Ep07-01






「ねぇ、朝だよ。起きて」


 人は寝ているときに見た夢の殆どを目覚めた時には覚えていない。

 もちろん例外があるからこそ、夢という生理現象が人々に認知されているのだが、その中でも比較的覚えて居やすいのは、夢が中断されて強制的に覚醒させられる場合であろう。

 ロランが強制的に起される寸前まで見ていた夢は、1年以上前に王都べレオンで聞いたイルクナー宰相代理の演説だった。

 あの時ロランは、ベルネット商会の仕事で王都まで行っていた。

 冒険者支援制度で借りた装備はとっくに返していたのでロラン個人に式典への参加要請があったわけではないのだが、恩があるイルクナー宰相代理の祝事であったし、「タイミングが合えば王都に居合わせても良いか」位の気持ちで王都に行った。

 そして、脳で処理し切れない衝撃を受けた。


 冒険者とは、その能力を用いて様々な問題を解決し報酬を得る職業である。

 イルクナー宰相代理は、国家の問題をその力量で解決できる飛び抜けて有能な冒険者だ。

 そういう人物は、人々から総じて英雄と呼ばれる。

 ロランも英雄と言う存在の目撃を認めざるを得ず、演説を受けた後に同じ冒険者である自分を振り返ってみた。


 冒険者には祝福数と言う明確な基準があり、この祝福数が高いほど様々な経験を積んでいるとされる。

 ロランはドリー事件で祝福40に上がり、それから1年半もの時間をかけて祝福数を46にまで上げた。もう手が届く範囲にある祝福50に上がれば、それ以降は一流冒険者と呼ばれる事になる。

「一流冒険者とは何か」との問いが出された際の模範解答は、「知識・技術・経験のいずれも数多を積み重ね、生命の危機を幾度も潜り抜け、あるいは回避し、酸いも甘いも知り尽くした冒険者」である。

「一流冒険者の待遇はどうなるのか」と問われれば、「国で将軍として迎えられ、傭兵ならば最高指揮官、冒険者協会ならば幹部、都市ならば防衛責任者」が正解であり、どこへ行っても通用する最高位の人材と目される。

 だが未だに17歳でしかないロランには、最低でもあと5年は早い。


 (祝福50台には当分成りたくねぇ)

「朝ー朝ー朝ーだーよー!」


 バダンテール歴1259年9月にロランが冒険者に成ってから、瞬く間に3年以上の時間が過ぎた。既に1262年の終わりが近づきとなり、レナエルの錬金術学校卒業も間近に迫っている。

 ロランには、この3年間をとても有意義に過ごしたという確信がある。

 それは他の新人冒険者達の大半も同様で、この3年間にロランを含む冒険者になって3年未満の冒険者たちは冒険者支援制度で祝福上げを爆発的に加速させ、続々と騎士並の祝福数に上がっていった。

 冒険者歴3年目で支援制度を受けた冒険者の中には、ロランのように大祝福に上がった冒険者すら他にもいる。

 そして経験不足によって命を落とした者も過去に比べると大幅に減っていた。

 イルクナー宰相代理が作った冒険者支援制度には、経験不足の新人対策がしっかりとなされていたのだ。


 だが冒険者として活躍する以上、たとえ新人であっても祝福20ならば祝福20の力量が求められるし、祝福30の冒険者には祝福30の手腕が求められる。

 そしてロランには祝福46の冒険者として人々に騎士団長並の礼節を持って応対されると共に、当然それにふさわしい能力も求められていた。

 だが騎士団長並の能力が身に付くのには、時間がかかって当たり前だ。いくらなんでも3年少々でそれを求められるのは早すぎる。


「おーきーろー」

「早えぇよっ!」

「早くないもん。もうとっくに陽が昇ったよっ!」


 ロランを起こした娘が怒り出し、勝手にカーテンを引っ張って窓を開け放った。

 窓の外では小鳥がチュンチュンと鳴いていた。いわゆる朝チュンである。但し、ロランの隣には誰も寝ていない。

 目覚めたロランは両手を伸ばし、大きく背伸びをした。


「うーんっ、ぬああっ!」


 すると、窓を開け放った少女からすかさずツッコミが入る。


「変な声出さないでっ!」

「オデット、反応が普通すぎるぞ。たまには面白リアクションとか無いのか?」

「わたしは宿屋の娘。旅芸人じゃないんだから」


 ロランがずっと活動拠点にしてきた宿屋の娘だけあって、オデットは冷静に切り返した。

 オデット・アンセルミ。ロランが宿泊している宿屋『セレスタイト』の長女で現在14歳。本来は中等生だが、目下冬休み中だ。


「うむ、良いツッコミだ」

「馬鹿」


 大抵の冒険者は、馴染みの宿屋を持っている。

 同じ宿屋を馴染みにする事には沢山の利点がある。宿屋の信頼度や料金やサービスを確認する手間が省ける。冒険者仲間が連絡をし易い。自分宛の郵便物を預かってくれる。料金を安くしてくれる、食事の時間を融通してくれる。自分の性格を理解してくれる。このように利点を挙げて行けばキリが無い。

 そしてロランは、宿屋セレスタイトを都市アクスでの拠点にした。

 具体的には月額900Gの先払いで、宿屋セレスタイトの角部屋にあたる1部屋を借りている。


 これは自分で考えたのではなく、半ば専属契約をしているベルネット商会のジョスラン・ベルネット氏から連絡先を作るように言われた過程で教わったのだ。

 部屋の掃除などは当然宿屋側がしてくれるし、夜遅くに都市アクスへ戻ってもそこから宿屋を探す必要が無い。レナエルやサロモン、リリヤやディアナなど知り合いからの連絡も言付かってくれるし、実際にやってみたらとても便利だった。

 新人冒険者ではなかなか思い付かない発想だ。ジョスランと契約したロランは、彼から様々な事を教わった。

 宿屋は第一宝珠時代の旧都市アクスの防壁の中にあり、大通りからは少し外れているものの騒がしい大通りに比べれば立地として悪く無い。

 レナエルの通う錬金術学校が近く、周囲は食事をする所に困らず、近くにはお気に入りのパスタの店があり、おまけに宿屋自体にも可愛い年頃の娘が働いている。

 ロランからすれば良い事尽くめであり、その結果として宿屋セレスタイトがロランの活動拠点と相成った。

 もっとも、朝と夜の食事は宿屋が格安で用意してくれるのでパスタの店に行く頻度はそれほど高くも無いが。


「宿泊者用の朝食時間、もう終わっちゃうよ。B定食で良いの?」

「あー、任せる。着替えたら降りるから」

「はいはい。早く降りて来てね」


 そう言ってオデットは部屋から出た。


「なんか嫁みたいだな」


 ガタガタガタン。

 誰かが階段から足を踏み外す音が聞こえて来た。


「面白リアクション…………じゃなくて、オデット大丈夫か?」






 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 幸いオデットは軽い打撲だった。

 視診、触診、冷やして終わり。冒険者として慣れてきたために割と手際の良かったロランだが、オデットの足を触った時にはなぜか頭を叩かれた。

 理由が分からなかったのでエプロンドレスがやや捲れていたのが恥ずかしかったのかとロランが訊ねたところ、さらに叩かれた。


「馬鹿じゃないかな。馬鹿じゃないかな」


 給仕となったオデットがB定食を運びながらロランに愚痴をこぼす。

 ロランはオデットの行動に支障が無いのを確認しながら言い返した。


「悪かったって。お詫びにレナエルが作った回復剤を渡しただろ。あれ生命力が200も回復するから、市販だと400Gもするぞ」


 必殺『女がなぜか怒っていたら、とりあえず謝っておけ』戦法。

 この技をロランに教えたのは先達冒険者のサロモンである。先達の言う事は聞くものである。なぜなら先人達はロランに先んじて女性から理不尽に怒られ、その際にどうすれば良かったかを経験で学んでいる。つまり先人の教えでは、とにかく謝るしかないのだ。

 しかし謝罪に言い訳を混ぜるのが、ロランが未熟たる所以であった。


「女性から貰った品物を他の女性に渡すなんて、馬鹿じゃないかな?」

「なんでだよ。というか、あれは回復剤と言うより飲み物だぞ。甘くて美味しいから病気の子供でも飲み易いんだって。それで失った体力は全快する優れ物。試供品で3本貰ったんだ」

「何味?」

「お前の好きなリンゴ味」

「……まぁ良いか」


 ロランが説明するとオデットは機嫌が直ったのか、それ以上は愚痴らずに仕事に戻った。

 オデットは忙しい。まずはチェックアウトした部屋のシーツを交換して洗濯しなければならない。冬は日照時間が少ないのでのんびりしていられない。シーツを干している間に部屋の掃除。昼から開く1階の軽食屋の給仕、宿泊客の案内。

 彼女はあくまで手伝いなので、買い出しや料理の仕込みなどは一切しない。だがあと1年少々で中等校を卒業し、15歳の成人として何かしらの職に就かなければならない。


「専業主婦と言う手もあるけどね」

「そうだな。ロラン、あいつを嫁にどうだい?」


 ロランの独り言を聞いていたオデットの兄であるエドガー・アンセルミが、カウンターの奥から声を掛けて来た。

 兄の方は宿屋の跡取り息子で妹より5歳年上の19歳。昼から開く軽食屋の準備をしている従業員たちを監督し、自身も手伝っている。

 セレスタイトはあくまで宿屋で、軽食屋は朝夕の食事を宿泊客に提供し、昼と夜は客引きとしてやっているに過ぎない。しかも宿の部屋数は10で、個室が4つと2人部屋が6つで全てだ。ハッキリ言って小さい部類に属する。

 ロランの見た所、バダンテール歴1260年度の第一次商業税半額と、現在も続いているアリシア殿下誕生に伴うバダンテール歴1262年度の第二次商業税半額の期間中にそれなりの稼ぎが出たようだが、いくら稼げたと言っても元々の宿屋が小さいので大した事は無い。

 精々この数年で宿屋の改装費を稼げたくらいだろう。

 これはエドガーが予想していた倍の速さで金が貯まった計算になるのだが、使い切ったところで不景気になられても困るので、エドガーから見ても施設への投資にはまだまだ早い。

 と言う訳で妹オデットの将来を考える兄エドガーは、将来有望な冒険者ロラン・エグバードに妹を売り込もうと考えている次第である。


「いやあ、冒険者なんていつ死ぬか分からない職業っすよ」

「でも君は、ミス・レナエルに求婚してるじゃないか」


 エドガーがミス・バランドと言わなかったのは、レナエルの妹リディもミス・バランドで紛らわしいからだ。


「いや、レナエルの場合は経緯があったんすよ。というか金髪碧眼の美少女、これを逃す手は無いと」

「くっ、分かる!」


 妹オデットの味方はアッサリと陥落した。

 黒髪のロランも亜麻色の髪のエドガーも、やはり金髪には憧れる。

 何せ『金色の髪』と言えば神の色だ。

 もちろん神の場合は金色に発光しているのであって、厳密に言えば金髪など全く関係ない。意味合いとして単に縁起が良いだけだ。だが金髪は憧れる。金髪は良いものだ。


「しかし少年。いや、成人しているから青年よ」

「何っすか」

「ちょっと小耳に挟んだのだがね。何でもベイル王国騎士になれば、妻たちの登録都市を調整してくれるそうじゃないか」

「ああ、新制度っすね。正確には騎士とその最初の妻を好きな都市に登録させてくれて、2番目以降の妻もその周辺の都市に登録してくれるらしいんすよ。冒険者の間では大ニュースになってますね」

「うむうむ。じゃあ、オデットなんてどうだい」


 どうやら妹思いの兄は売り込みを忘れたわけでは無かったらしい。

 だがロランはキッパリと断った。


「俺の祝福は46だから、今従軍したらロラン・エグバード騎士団長っすよ?」

「…………ぶわっはっは」


 ロランの騎士団長姿を想像したエドガーだったが、そのあまりの似合わなさに堪え切れず笑い出してしまった。

 どうやら廃案らしい。

 ちなみにレナエルは都市ファルクの登録民なので、レナエルと結婚した後に都市アクス登録民のオデットとも制度的に結婚できない事は無いのだが、ロランもその点は説明しなかった。

 都市アクスにはアクスで先約が居るのだ。

 レオノーラ・アレッシ。

 吸血鬼ドリーに誘拐されてしまった義妹予定のリディ・バランドの同級生。

 ドリーはロランとレナエルに会う為にリディを誘拐しようとして、レオノーラはその巻き添えで誘拐されてしまった。

 誘拐されるとケチが付いてしまう。

 別にロランのせいでは無いのだが、誘拐された後に塞ぎ込んでいるレオノーラを見たリディから詳しい情報を得て、ロランの方から二番目の妻に誘った。

 レナエルもそれには反対せず、むしろ積極的にリディを交えてレオノーラを食事や買い物に誘った。

 と言う事で、都市ファルクと都市アクスは買約済みである。


「お前なら相当稼ぎが良さそうだから、4番目の妻でもいいぞ」

「オデットに怒られますよ」

「いや、お前が4番目の妻にならないかと誘えば怒りはしないだろう。17歳で祝福46と言う事は、いずれ大祝福2に行けるだろうしな」


 大祝福2の冒険者は、現在は人口50万人に1人と言われている。

 バダンテール歴1262年現在、人口345万人規模を誇る大国ベイルですら公式に国内で活動している大祝福2の冒険者は10人に満たない。

 有名なのはハインツ・イルクナー宰相代理、メルネス・アクス侯爵、オリビア・リシエ秘書官、紅塵のクラウス・バスラー団長、紅塵のロータス・ボレル副団長、未所属のフランセスク・エイヴァン、未所属のロランド・ハクンディ。不確かな情報で良いのなら、さらにあと何人か居るのだが。

 冒険者数千人に1人しか居ない彼ら大祝福2は、体力はともかく戦闘力では中位竜と互角を誇り、獣人大隊長と対等に渡り合い、世界に犇めく魔物の大半を雑草でも狩るかのように打ち倒し、数多の困難を乗り越えて巨大な功績を打ち立てる。

 そしてやがては宝珠都市を創り出す神となるだろう。


 宰相代理は彼らを引き込むために、傭兵団に所属する者達の家族全員分までの都市民権を用意して多大な支度金と共に取り込んだ。あるいは高性能な転姿停滞の指輪を提供して招いた。王都には彼らの邸もある。

 宰相代理は大祝福2がベイル王国の門扉を叩くならここまで優遇すると示した訳だが、大祝福2の冒険者は自分の稼ぎや力量で同じような事を出来るし、あるいは貴族家の娘と結婚するなどやり方は色々とある。

 ようは単にお互いの希望が釣り合っただけなのだが、大祝福2の冒険者の非常識さが改めて示された形だ。

 大祝福2の妻ならば、4番目でも悪い話では無い。


「怒られるのはエドガーさんの事っすよ。あと4人目と結婚すると、浮気は即ハゲっすからね」

「ああ。身の潔白を示す証明にはなるが、浮気が出来ないのは痛いか…………結婚を3人までに抑えておいて、オデットを愛人にする手もあるな」

「………………」


 ロランが無意識のうちにゴクリと唾を飲み込んだのを、エドガーは見逃さなかった。

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