転校生
オレは中学2年生の時、ある4人組と仲良くなった。
その4人は、桐島、新井、栗田、榎本だ。
この4人は最悪の不良で、生徒指導の先生もやれやれと言っている。
中学3年生になってからは、あいつらと仲良くなってオレはどうしたかったのだろうと思っていた。
しかも、オレも不良扱いにされていた。
前、好きな子に告白したら、
「怖いからやだ」
と言われた。
あのときはオレも泣きそうでさ、机をダンダン叩いてさ。
もうあいつらのせいでオレの青春が終わったなんてと思うと、すげーやだった。
こんなことがあってから、オレはあいつらと距離を空けたが、また縮めてくる。
オレは今の自分に後悔している。なぜ、あんな奴らと友達になったんだろう。
あいつらは毎日遅刻してくる。
平均的に3時限目ぐらいだ。それまでは、オレは普通の人として見てくれる。 だが、あいつらが来ると、オレは不良となる。
その境界線はオレはものすごく嫌だった。
「あの不良五人組、いつもうるさいよね」
「高校受かんないよ絶対」
とひそひそ話をしている。それも嫌だった。
当の不良たちは、
「言わせるだけ言わせりゃええがな」
とか言っている。
あいつら、幸せだな。絶対。
ある日、オレは先生に呼ばれた。
聞いてみると、
「おまえの内申点は不良たちとは多いが、第一希望の高校は無理だと思え。わかったな」
って言われた。あいつらといるせいで、オレは高校も落ちそうだ。
「くそっ!」
オレは廊下の壁を蹴った。小さく響いた。
後輩がオレにびびって逃げてゆく。
ふっ、オレが不良に見えたのだろう。好きに不良にしてくれや。
オレはそう思って、膝をついた。
人はこの人の周りの状況だけで、人の性格を判断する。外れても、当たってると確信する。
そして、人を落としてゆく。
一人で歩いて帰ってみた。
うざったい4人組がいないと、なんて気が楽なんだろうか。
翌日、いつもの通り、玄関で立ち止まる。
だが、一回頷くと、玄関のドアを開ける。
これはごくせんのヤンクミがファイトーオーとやってるのとまあ同じものだ。もう日課なのだ。
今日はクラスのみんなが違うテンションだ。
不良はいない。
ただいま、オレは普通の中学2年生だ。
「どうしたん?」
普通のオレが近くの人に話しかける。
「転校生が来るんだよ。面食いの太田が一目惚れするほどかっこいいんだって」
クラスメイトは普通のオレとして話してくれた。
不良のオレだと、
「金は持ってないよ」
とか言う。
ところで、面食いの太田は、
「これは、私の運命よ。私の運命」
とか言っている。
オレも前、ナンパされている太田を助けたところ、2日後、告白された。
オレは自画自賛はしたくはないが、多分ジャニーズ顔だろう。
キーン、コーン、カーン、コーンとチャイムが鳴った。
先生が教室のドアを開けると、それを合図に全員が席についた。
「今日も不良は遅刻か。まあいいよな」
出席簿を教卓の上に置いて重い荷物を降ろした感じの笑顔になった。
オレは思ったがあいつらは出席確認以外は全ての先生に不良と呼ばれてる。
「別に名前で呼ばれたくねえ」
とかあいつらは言ってるが、裏では気にしてるかもしれない。
「ところで、今日は転校生が来た」
待ってましたかのようにクラスが騒ぎ始める。
「福原、入れ」
太田がとてつもない笑顔になってゆく。
教室のドアが開く。
教室に入ってきたのは目と鼻が成り立ってて、背が高く痩せてるイケメンだった。
「福原徹です。よろしくお願いします」
福原はふかぶかとお辞儀をした。太田はおっとりしている。
チャイムが鳴った。太田が福原に質問できなくて残念がっている。
「それじゃ、朝のホームルームは終わりだ。福原に質問したければ休み時間にしろ。あっそうだ。福原は奥山の隣だ」
そう言って先生は教室から出て行った。あっ、俺の名前は奥山まことです。
福原はオレの隣にいそいそと座った。イケメンなのにすごく緊張するそうだ。オレはなんかかわいそうだから話しかけた。
「大丈夫、オレのクラスメートは全員いいやつだから。オレの名前は奥山まこと。よろしくな」
「そうなん、よろしく。僕は福原。てかさっき言ったよね」
「そうだったな。よろしくな」
なんだいなんだい。緊張してると思ったら以外と面白い事話すじゃんか。
オレが思っていると、いつのまにか女子の人だかりが出てきて、内心ビビった。
まあいいや。女子と福原の会話でも聞いてやろうじゃないか。
「福原君の家ってどこ?」
「さくら商店街とメチャ旨コロッケの池田の間だよ」
おっ、オレの向かいじゃん。
どうりで引っ越し屋とコロッケの池田がワーワー言ってたな。
「福原君の兄弟って何人?」
「企業秘密にしてもいい?」
企業秘密かよっ!!しかも女子しらけてるよ。
「こういう芸風なんだ。面白いね」
どこがだよ。
「企業秘密にしてもいい?」
意味わかんねぇよ!!しかも太田がおっとりしてるし。
「かっこいい…」
太田が呟いてます。
すげーな福原は、って思いながら聞いていると、中学校ではありえないバイク音。
あいつらだ。光輝くハーレー部隊に学校に送ってもらった不良のあいつらだ。
「うぃーす、どうも」
ハーレー部隊のリーダーらしい人が清掃のおばちゃんに言ってる間にあいつらは校舎に潜入した。
オレはその情景をまじまじと見つめながら、後ろでは不良になってるオレに対する視線が気になった。
しかもそんな情景は生徒指導が許すはずもない。急いで階段を駆け降りる音が聞こえた。
生徒指導はまず、あいつらを外に出した。
窓を閉めてるから聞こえないのでオレは窓を開けた。
「何やってるんだ!!?」
「遅刻したから送ってもらったんだ!!悪いかよ!!」
「送ってもらう場合は学校に連絡!!あとハーレーなんかに送ってもらうな!!」
「じゃあ、スピーカー内蔵の車に来てほしいんですか」
「ふつうの車だ!!」
「ふざけるな」
ハーレー部隊のリーダーが生徒指導に膝げりをした。
生徒指導の先生が後頭部を押さえてのたうち回ってるのを、ハーレー部隊とあいつらが笑っていた。
オレはとてつもなくやばいことに気づいてカーテンを閉めようとしたが、目が合ってしまった。
「奥山!!」
あいつらもハーレー部隊もクラスのみんなもオレをみた。もちろん、福原もだ。
福原はキョトンとしている。
「奥山!!あそこのパチンコ屋に新しいパチスロが入ったからやろうぜ!!こんな場所、サボろうぜ」
あいつらの辞書には受験と言う単語がないのでしょうか?
「行こうぜ!!ハーレーに乗せてやるから」
すると、ハーレー部隊のリーダーがオレを窓から引きずり出して、ハーレーに乗せた。
桐島がヘルメットを被って、
「レッツアgo!!」
と叫ぶと、ものすごいスピードで校門から出ていった。
本当にこれでいいのか。
福原にとっては、最悪の転入生デビューとなった。