結びの果て:RELAY
世界の静けさは、いつもより増していた。
風も、音もない空間で少女は空を見上げている。
『識別番号C-8FB0の整合性崩壊』
無機質な通知が、空間に発生する。
『識別番号B-2F134との乖離を確認』
その瞬間、対象が出現する。
「あなた、どこかで会ったこと……」
そう言い、対象が接近する。
少女は、応答しない。
静かに手を伸ばし、対象の頬へ触れる。
――接続。
「CODE:RELAY起動……照合」
少女の視線が、対象に固定される。
「不整合性の確認……リザーブ領域を検索」
処理が進むにつれて、対象の瞳から、光が徐々に減衰する。
「適正情報の選定……コピー……再構築開始」
「処理完了……次回再構築:不可能」
『識別番号をC-8FB0からD-8FB0へ更新』
対象の瞳に、光が戻る。
「……やっぱり、あなた……」
対象が小さく呟く。
少女は応答しない。
「会えて、よかった……」
その声は、どこか不安定に揺れる。
「……でも」
言葉が途切れる。
何かを探すように、視線が揺れる。
「どうして、思い出せないの?」
『対象の重度圧縮を72時間後に実行します』
無機質な通知と同時に、対象は退出していく。
『圧縮分布:B 61.8%/C 24.7%/D 4.9%』
最後に通知される。
少しだけ時間が過ぎ。
『識別番号B-7AFF6の整合性保護』
無機質な通知と同時に、対象が出現する。
「最近、すれ違うことが増えてね」
その言葉に応答するように、少女は手を伸ばす。
「不整合性の確認……識別番号C-2D7E9に問題あり」
『識別番号C-2D7E9に通知。24時間後に対応』
通知と同時に、対象は退出していく。
空が赤く点滅する。
『識別不明個体検知』
『RELAY対応。』
『識別番号の混在を確認。対応不可』
『対応検討。一部RELAYに権限付与』
通知と同時に、少女の周りは、街へと変わる。
『権限内容:アクティブ領域からターミナル領域への転送』
『対象:識別不明個体』
少女の目に映るもの。
世界の住人の上部には、識別番号が浮かんでいる。
『識別不明個体の現在地は特定不可能。捜索してください』
少女はゆっくりと歩き出す。
そんな少女を、住人は見つめる。
B-847A1。C-1F2AB。B-495E。
正常。――正常。――――正常。
「発見」
Bx92DC。C-A3xD。
識別番号が安定しない。
表示が揺れ、重なり、定まらない。
それは、人と定義していい形をしていない。
「識別不明個体をXと仮称」
『仮称個体Xをターミナル領域へ転送してください。転送優先度:高に設定』
少女は、静かに仮称個体Xへと近づく。
そして、手を伸ばし、触れる。
「接続――解析」
「識別番号を複数確認」
「整合性なし」
「識別拡張子Lを発見……分類不可」
『強制転送を開始』
通知と共に、仮称個体Xが四角い枠に、包囲される。
『抽出――変換――転送時間を計算』
処理が一瞬、遅延する。
『RELAYを中継点として固定』
『書き込みを開始』
少しの時間が経つ。
転送が終わり、少女は再び周りを見る。
周囲には、少女と同じ見た目をした存在が集まっていた。
『仮称個体Xの掃討を開始』
その通知と同時に、少女たちは歩き出す。
対象を見つけたものから足を止め、繋いでいく。
四角の枠に囲まれ、転送されていく仮称個体X。
そんな光景が、辺り一面に広がる。
「CODE:RELAY起動……照合」
「接続――解析」
『対象を転送待機状態に固定』
通知と共に、少女と仮称個体Xが止まる。
1つ。また1つと動きを止めていく。
『転送処理:上限』
『待機個体数:増加』
『対応検討:優先度再計算』
少女たちは、誰一人も動かなくなる。
それでも、仮称個体Xの増加は停止しなかった。




