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賞味期限切れなんて誰が決めるんです?私の未来を勝手に決めるなんて許しません!  作者: はるくうきなこ


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5/5

5義理母と義理妹にお仕置きを


 私は翌日すぐに馬車で出発することになった。当然だろう。

 前日の夕食の席で父が言った。

 「ジュリアーナ。いいか、これは王命だ。くれぐれもおかしな真似はするなよ。辺境伯はかなりお年と聞いているがその分お前に無理はしいないだろう。家の事をきちんとこなしておけば何の文句も言われないはずだ。いいな。わかったか?」

 私への心配はなかった。

 まあ、王命だからそうかもしれないけど。

 「お姉様。これって凄い事ですわ。きっとカトレーヌ王女殿下も心苦しいと思われたのですね。辺境伯とのご縁談なんて。だって先代は元王弟様でしょう?奥様も跡取りもなくされてると聞きましたわ。今度こそお姉様が活躍できるはず。ねぇお母様」

 どういう意味?

 「ええ、これはわが侯爵家にとってもまたとない縁です。それも王命となれば。ジュリアーナ何としても跡取りを設けるのですよ。そうなればあなたも王族の縁せきの子を持てるのです。これほど名誉な事があったとは‥とにかく体を冷やさないよう、妊娠の兆しがあったらすぐに医者に見せるのですよ。あなた、本当に楽しみですわね」

 「ああ、またとない縁を頂いたんだ。ジュリアーナ、お前はそのままの端麗な姿で辺境伯を射止めればいい。何も心配するな。すべてうまく行く。なあ、タマラ」

 父は自分でそう言っておきながら義理母に同意を求めた。

 「‥え、ええ、そうよジュリアーナ、あなたは美しいんだから自信を持ちなさい。相手は50歳近いお年寄り。あなたみたいな若い令嬢ならどんな男性でも‥まあ、これ以上はねぇ。ほほほほ」

 義理母は父を見て二人でうなずき合った。

 何の自信だろう?若いんだから年寄りはいちころのはずではないかとでも言いたかった。だろう。馬鹿馬鹿しい。そんな事。最初から予定にありません。もちろんお断りです。


 「何か必要なものはないか?あればタマラに仕度を頼め」

 「ええ、何でも言ってちょうだい」

 「でも、辺境って夜会もないと聞きました。ドレスや宝石はいらないんじゃ?それに魔獣も出るんですって」

 イリヤが顔をしかめ驚いたような仕草をする。

 「仰る通りです。ドレスは持っているもので充分です。それに宝石は公爵家に置いてきましたので。ただ、メイアは一緒に連れて行きます。他には何もいりません」

 ダリルから宝石を貰った事も慰謝料の事もましてや宝石を売った事もメイアしか知らない。むしろ話していなくて良かったと思った。

 「ああ、それは構わん。他に必要なものがあれば何でも持って行け。タマラ、ジュリアーナがいると言ったものは整えてやってくれ」

 「もちろんです。でも、寂しくなりますわ。辺境ですとなかなか会えなくなりますから」

 「そうですね。お姉様お身体に気を付けて下さいね」

 「はい、皆さんも‥そうだ。義理母様。母が持っていた毛皮のコート、確か義理母様がお持ちでしたよね?辺境は寒いと聞きました。あのコートを頂ければ‥確か留め具には母が嫁ぐとき持って来た宝石ついていたはずでした。それも一緒にお願いします」

 「えっ?ああ、あのコート。わかりました」

 義理母が狼狽した顔をした。

 「タマラ?どうした。そうだったな。あれはナタリアが持って来たものだったな。宝石は確かに紫色の美しいアメジストだった。ジュリアーナが持つのがふさわしいな」

 「ありがとうございます。そう言えばイリヤに欲しいとねだられて仕方なく渡したダイアモンドのネックレスとイヤリング。あれも返して欲しいわ。あれは私の10歳の誕生日に買ってもらった大切なものだったのよ。いいわよねイリヤ?」

 イリヤが眉を寄せた。父は驚いた顔で私達を見た。

 「イリヤ。本当か?確かにジュリアーナの10歳の誕生日にダイアモンドの宝石を買った。覚えている。それをイリヤが?お前には同じようにプレゼントを贈ったはずだろう?」

 「でも、私はダイアモンドじゃなかったわ。お姉様にだけずるいわ!だから‥」

 「だからなんだ?私は言ったはずだ。ダイアモンドがいいと。でも、お前がどうしてもピンクサファイアがいいと言ったんじゃないか。すぐにジュリアーナに贈ったプレゼントを持って来なさい!」

 父は知らなかった。驚いた顔をしてイリヤを叱った。

 イリヤは渋々席を立って私から取り上げたダイアモンドを持って来た。私に手渡すときダイアモンドのネックレスをなかなか話さないので「イリヤ。いい加減にしなさい!」と父に再度叱られた。

 私は手渡されたダイアモンドをすぐに身に着けた。

 「ありがとう。やっと返してもらえたわ。お父様ありがとう」

 「いや、すまなかった。イリヤがそんな事をしたとは知らなかった」

 「ええ、お父様は私には無関心でしたから。でも、もういいんです。私は王命で辺境に嫁ぐんですし会う機会もあまりないでしょうから」

 「すまなかった。ジュリアーナ。身体には気をつけてな。落ち着いたら私も一度辺境領を訪れよう」

 父は寂しそうな顔をした。

 「お父様も気を付けて。それと、お父様。お金は湧いて出てくるものではありません。入ってくるお金と出て行くお金。これをきちんと見極めなければ今にこの家は立ちいかなくなります。お金の管理はお父様がきちんとなさってください。お二人の金銭感覚のままお金を使えばこの家はすぐに立ちいかなくなるはずです。まあ、すでにそうなりつつありますけど」

 「まあ!ジュリアーナ。それは私が無駄遣いしてるって言ってるの?」

 義理母が心外だと言う顔で奇声を発した。

 「お姉様、私もって事ですの?まっ、失礼だわ!」

 二人が憤慨する。

 父はばつが悪そうな顔で私を見つめた。

 「まあ、私には関係のない事ですけど」

 それだけ言って席を後にした。

 食事の後、父が母の毛皮のコートを持ってきてくれた。

 きれいに手入れされていた。ただ留め具の宝石はなかった。宝石はブローチに作り替えられていた。

 「ジュリアーナ。すまなかった。ただ、宝石は‥でも、これはお前のものだ」

 「ええ、いっそペンダントにでもします。ありがとうお父様。少しきつい事を言いました。でも、お二人は本当に金銭感覚がずれていらっしゃるので気を付けておいた方が」

 「ああ、これからは私が目を光らせる事にする。お前は心配せず辺境伯に可愛がってもらいなさい。お年と言っても領主様だ。困った事は何でも頼るんだぞ。もちろん何かあったらいつでも私を頼ってほしい。いいな?」

 「今さら心配ですか?結局私はいつもこの家の犠牲なんですから。いいですよ。行きます辺境。空気はいいし静かでこんな所よりずっといいと思いますから」

 「‥悪かった」

 父はどうしたら良いか分からないような顔をして部屋を後にした。

 まあ、もうどうでもいい。

 私は父と言う人を良く知っている、きっとすぐに義理母に言いくるめられるだろう。

 でも、もう気にしない。すべきことは言ったしもう終わりにする。

 私は辺境伯の妻になるが、もう、大人しくしているつもりはない。言いたい事ははっきり言うつもりだし権利も主張する。その代り仕事はきちんとするつもりだ。

 メイアが一緒なら案外楽しいかも知れない。

 気持ちを変えるにはこれが一番だと思う事にしよう。

 ブローチにはめ込まれたアメジストは3センチ程の細長い円柱の形をしていた。

 よく見ると宝石の周りには紋様が彫りこまれていた。今まで気づかなかった。でも、ペンダントにすればいつも身に着けられるわ。

 お母様、空から私を見守っていてね。

 私はそんな事を思いながら母の宝石を手の中にぎゅっと握りしめた。

 

 

 









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