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賞味期限切れなんて誰が決めるんです?私の未来を勝手に決めるなんて許しません!  作者: はるくうきなこ


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1/6

1賞味期限切れ?ですか


 春の園遊会。それはデヴェーラ国の夜会シーズンの始まり。貴族のとっての一大イベントだった。

 バルハン公爵邸でも、この日の夜会の為の準備で大わらわだったがやっとすべての準備が整った。

 私、ジュリアーナはバルハン公爵であるダリルの妻となって3年が経っていた。彼との婚姻はもちろん政略結婚でおまけに彼は嫁いだ王女が忘れられずに私との関係は白いままでいわゆる私は形式上の妻と言うわけだ。

 それでも、私は私なりに公爵家を支え日々夫人としての仕事をこなして来たつもりだ。

 さあ、今夜も淑女の微笑みを張り付けて夜会を乗り切るしかないと気持ちを切り替えた。

 「メイア、支度が出来たと知らせて頂戴」

 「はい、畏まりました」

 メイアはすぐに部屋を出て行く。彼女は私が実家のスタールクス侯爵家から連れて来た侍女で、何でも話せる唯一の女性だ。彼女がいなかったら私はこの3年耐えて来られなかった父がいない。弱音を吐き愚痴をこぼしてもメイアはいつでも親身になってくれた。



 「旦那様、奥様のお支度が整いました」

 「ああ、私は玄関で待っていると伝えてくれ」


 階段を下りると端整な顔立ちの旦那様、ダリルが待っていた。

 煌めくような金色の髪はぴしりと整えられ正装に身を包んだ姿はほぉっとため息が出るほど美しい。

 彼はこちらは向いておらず窓の外に視線を向けている。横顔も絵になるほどきれい。

 彼が私を見ないのはいつもの事だった。

 彼が愛しているのは今もカトレーヌ王女殿下なのだ。学園に通う頃からカトレーヌ殿下に恋い焦がれ学園を卒業してからは王女様の護衛騎士までしていたと聞いている。

 そしてその恋焦がれているカトレーヌ王女殿下が隣国キルナートの王太子と離縁して王都に帰って来たらしい。

 ここ最近のダリルは少し気持ちが浮ついて仕事も上の空のように感じていた。

 でも、いくら何でも傷心中の王女殿下は夜会には参加されるはずがないだろう。

 私達は仮面夫婦だけれど、それでも夫婦なのだから。



 王城の大広間は眩いほど華やいでいた。

 天井から吊り下がったシャンデリアはおびただしいほどのクリスタルで光のシャワーを磨き上げられた大理石の床の上に落としている。

 その広間には色とりどりのドレスに身を包んだ貴婦人や令嬢がいて貴族たちの笑い声や歓談する姿があり楽団が優雅な演奏を奏でていた。

 そして王族の方々の登場が一斉に貴族たちの視線を攫った。


 カトレーヌ王女殿下も夜会会場に姿を現した。

 離縁間もないと言うのに彼女は優美な微笑みを浮かべ、銀色のシルクのドレスを身に纏い煌びやかな姿を見せた。

 夫と同じ金色の髪をなびかせ深い青色の瞳で周りに笑いかけている。

 貴婦人方が密やかにに扇を口元に宛てる。

 そんな光景をちらりと横目に流しながらも国王陛下、王妃殿下、アラン王太子に続いてカトレーヌ王女殿下が壇上に上がった。


 まあ、王族には違いない。

 貴族たちは心の内をすぐに推しとどめにこやかな笑みを壇上に向ける。当然。


 国王陛下が高らかに園遊会の開幕の合図を行いパーティーは始まった。それぞれが何事もなかったかのように思い思いの人たちとグラスを片手に会話を始める。


 しばらくしてダリルが「悪いけど知人と話があるから君は適当に楽しんでいてくれ」

 いつものことだった。

 彼は会場には妻と同伴するが会場に入ればすぐに知人の所に行ってしまう。

 「わかりました」

 私はグラスを持って壁際に移りダリルを目で追った。


 彼は知人の所に行こうとして壇上から下りて来たカトレーヌ王女殿下に話しかけられる。

 いや、最初からそのつもりだったのかも知れない。



 カトレーヌ王女殿下は手慣れた仕草でダリルの腕に自分の手を絡ませる。

 当たり前みたいに。

 ダリルもおやつを貰った駄犬みたいに嬉しそうに顔をほころばせる。

 なに?あれ。見ていられない‥心の中に小さな黒い点みたいなものが浮かんだ。

 


 しばらくしてダリルがグラスをチリリ~ンと鳴らした。 

 みんなの視線がダリルとカトレーヌ王女殿下に向く。

 「ジュリアーナこちらに来てくれないか」

 私は慌てて中央にいる彼の元に行く。

 向かい合う私達。ダリルのすぐとなりにはカトレーヌ王女殿下がいる。彼女の口角がわずかに上がった。

 えっ?

 「みんなも知ってと通りジュリアーナと結婚してすでに3年が経った。だが、彼女に妊娠の気配は全くない。よって貴族婚姻条項3条を適用し本日で私とジュリアーナとの婚姻を解約する。ジュリアーナ、君はこれまで公爵家には尽くしてくれたが後継者が期待できなければ婚姻は継続できない。君もわかってくれるな?」

 頭の中が真っ白になって言葉が出てこない。

 どうして?私達は白い結婚で妊娠するはずがないじゃない。そんなのダリルあなたが一番わかっているはずじゃない。こんなの言いがかりじゃない。

 思わずそんな事を口走りそうになる。

 で、でも、こんな事をこの場で言えば私は女として価値がないからだと思われてしまうかもしれない。

 妻としても責任も果たせない落ちこぼれだと。

 それに実家のスタールクス家にも恥をかかせることになるかもしれない。

 何も言えないままぐっと唇を噛みしめてダリルを見つめた。

 あなたは嘘を言ってるじゃない。どうして?そんな恥を私にかかせたいの?私の事なんか一度だって見向きもしてくれなかったくせに。それでも私は一生懸命頑張って来た。

 なのに!

 もちろん、離縁することは構わない。

 でも、こんな場所で言わなくたって!!そう思ったらつい言葉が出ていた。


 「でも、それならそれで‥ああ、もぉ!ダリル様、こんな話、こんな場所でするべきでしょうか?」

 ダリルが眉をぎゅっと寄せた。悪いと思っているのだろう。

 「あっ、ち、いや、それは‥」

 その時ダリルを庇うようにカトレーヌ王女殿下が前に出た。

 「ちょっと、ジュリアーナさん、あなた女として賞味期限終わってるんじゃない?3年もあったのよ。その間に一度も妊娠しないなんてあり得ないでしょう。ダリルが離縁したいって言う気持ちわかるわぁ~。でも、きっと彼、ほら、言い出しずらかったのよ。ずっと抑えていたものが‥ねっ、あなただってそんなことあるでしょう?だから許してあげてよ。ねぇ、私に免じて。いいでしょう?」

 「カトレーヌ!」

 ダリルは言い過ぎだと思ったのだろう。カトレーヌ王女殿下の名を呼んだ。

 そんな二人のやり取りを見て私の3年は何だったのだろうと思ってしまった。


 その瞬間、頭の中に知らない記憶が流れ込んで来た。

 デヴェーラ国。ダリルと言う夫。彼の想い人であるカトレーヌ王女殿下。

 あっ!。これって。

 私って転生者だったの?この世界とは違う世界で生きていた時の記憶を思い出す。

 前世で流行った小説と同じじゃない。「初恋の彼方に」って言うタイトルだったかしら?

 夫に捨てられ、ダリルはカトレーヌ王女殿下と一緒になったんだった?‥‥ああ、私、この小説あまり読んでないのよね。せいぜい本の紙帯にあった紹介キャッチコピーくらいしか見てなくて‥夫が初恋の相手と一緒になるために妻は離縁されて苦労するみたいな事が書いてあった気がするけど。

 私はこのまま行けばせいぜい義理母が決めて来た年寄りの色ボケじじいの所に嫁がされて惨めに生きていくなんて事にもなりかねない。

 ああ、そんなの。せっかく前世を思い出したのはきっとこんな現実を受け入れるなって事じゃない?

 そうよ。こんな茶番。ばかばかしい。もういいわ。誰がこんな男と何か!


 私は頭の中を整理するため少しの間うなだれていた。

 どうするかはわからないけど、このまま言われっぱなしなんて我慢できるはずないじゃない!

 私ははっと顔を上げると二人を見返す。

 カトリーヌ王女殿下が”何よその目は”みたいな顔で私を見る。

 「わかりました。離縁は受け入れました。御心配には及びません。明日屋敷を出て行きますので」

 ほら見た事かとカトレーヌ王女殿下の顔がぱぁと華やぐ。

 「ほら、私の言った通りでしょうダリル。ジュリアーナさんあなたが物分かりのいい人で良かったわ」

 「ええ、王女殿下と同じ離縁ですね。殿下、夫であったダリルが男としての機能を果たせればいいですけど。何しろ淡泊な夫でしたので。うふっ。私達お互い離縁したもの同士。王女殿下も賞味期限切れでなければよろしいですね。では、失礼します」

 ふいに白い結婚とはいわゆる私に魅力がないと言う訳でもないと思った。最初から彼は私を求めていなかったのだしこれくらい言ってもばちは当たらないわ!


 私は一礼をすると踵を返した。ダリルが驚愕の顔をしていた。ほんとの事を言うとでも思ったのかしら?いい気味。

 「はっ?ちょっと待ちなさいよ!私に向かって何よ。このあばずれ!!」

 「か、カトレーヌ。やめろ!これ以上#%+!!」

 そんな二人の声が聞こえた気がしたがそんな事どうでもいい。





 









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