君は世界を救うべく生まれた英雄だ さあ剣を取れ …………何してる? 早く取れ!
掲載日:2026/02/22
「君は世界を救うべく生まれた英雄だ。さあ、その伝説の剣を取れ! ……何をしている? 早く取るんだ!」
真っ白な空間で、俺は困惑していた。目の前には、仰々しい鎧を纏った老人が立っている。
「……誰、あんた?」
「俺は新たな英雄を育てる使命を帯びた者だ。我が一族は代々、こうして若き才能を見出し、導いてきたのだ」
「何だって!? じゃあ、この俺が……あの物語に出てくるような英雄だってのか?」
俺の心に、淡い期待と野心が芽生える。
「そうだ。さあ、君の真実の力を見せてくれ。遠慮はいらん。全力で、この俺に斬りかかってくるんだ!」
「よし……! いくぞーーー!!!! おらぁぁぁぁーーーー!!!!」
俺は渡された剣を握りしめ、人生で最高の気合を込めて踏み込んだ。
グシャッ!!!
一瞬だった。
俺の剣が届くよりも早く、老人の「無意識の反撃」か、あるいは「防御の衝撃波」か、とにかく俺の身体はトマトのように地面に弾け飛んだ。
「………………。」
老人は、手元の血飛沫を払いながら、深く、深くため息をついた。
「……また、間違えてしまった。今度こそは本物の英雄だと思ったのだがな。次は……もう少し丈夫な奴だといいが……」
(完)




