ゴーレムくんはでかい
「ついたよー!」
森を抜けて砂漠を歩み、白蛇をずりずりしながらボクたちは目的地、アーガナージャへと帰還する。
遠目にも見えた、おっきな骨で武骨に組まれた東門をいざくぐる時!
ボクは感極まって、そう到着の喜びを口に出す。
「あれ、もしかしてこれって――へじゃぷ?」
「おそらくだけど、デジャヴね、メリアちゃん」
「そうともいいますっ!」
「言いません」
ぴしゃりと、そうお師匠様に言われちゃったりなんかしていると。
「おい、なんだよ、あれ」
「あ?……ってうわっ!!」
門に背を預けるうちの一人がこちらを見て声を上げる。
声を皮切りに、四方八方、様々な方向に意識を囚われていた人々がこちらを凝視する。
「なんだありゃ!」
「うわあっ!」
騒ぎはあっという間に伝播して、ボクたちはたちまち注目の的となった。
そしてもちろん、ボクたちをそうたらしめているのは……。
「ゴーレムくん、だよね……」
振り返れば、ふんすとゴーレムくんが白蛇の尻尾を掴んだまま華麗にダブルバイセップスを決める。
皆の注目を受けて、パンプする筋肉に対して放たれたのは黄色くないガチの悲鳴だった。
「ぎゃあああ!!」
群衆の一人が叫び声をあげながらしりもちをつく。
逃げ惑う人々。
「ゴーレムくんは怖くないよ!優しいよ!」
「そうです!あの筋肉は人を襲ったりしません!」
「あの子の美脚も見てやってくれ!」
そう、ボクたちは叫ぶけど。
焼け石に水とはこのことなんだろうなあ。
声は届くことなく、まるでふたを忘れちゃったポップコーンのように。収集は付かなくて、事態はどんどんと悪くなっていく。
そんな中、時間だけが過ぎて行って。
「これは一体どういうことだ!」
怒号と共に、剣を携えた一団がボクたちの前に躍り出る。
「げっ!ロゼルさん!」
「その声は――!」
どすどすと、その男は一段の中から躍り出る。
「リズハーンっ!!貴様、また協会にたてつく気か!」
「まってください、ロゼルさん、誤解なんですって!」
「言い訳なら、協会でじっくり聞いてやる――おい!こいつを連行しろっ!」
あっという間に、リズは集団に囲まれる。
「わわ、リズが連れてかれちゃう!」
「――私に任せてください」
するとそう言って、お父さんが一歩前に出た。
息子さんを背負ったままに、彼に話しかける。
「おい、邪魔をするなら、お前も一緒に……」
「お久しぶりですね、ロゼルさん」
「あ、あなたは副協会長!?」
ロゼルと呼ばれた男はそう叫んで、声音を変える。
「副協会長?」
「私のことですよ、メリアさん」
優しく、お父さんはそう言う。
「……勤勉に働いてくれているようですね」
「は、はい、こうやって、我が街の治安を脅かす輩を――」
「いや、リズ君はこの騒ぎの原因ではありませんよ」
そう言って、お父さんは背後を顎で示す。
そこには少しでも怖くないようにと、三角座りで背を低くしているゴーレムくんと白蛇の姿があった。
「な、なんだあれは!」
「あれに民衆が驚いたことが今回の原因です、あの巨体を見落とすとは、少々、あなたは視野が狭いようですね……」
「いや、これは……」
きょろきょろと目が泳ぎまくるロゼルさん。
「……しかしそれも、この騒ぎを迅速に解決して、皆さんに安心を早く取り戻してあげたいと言う強い思いがあるから、そうでしょう?」
そこに、手が差し伸べられた。
「も、もちろん、そうです」
「やはり、そうでしたか……」
声は優しく彼を包み込む、そして。
「……本来ならば、街の案件はそちらの管轄ですが、彼らは私の恩人です、私の顔を立てると思って、今回の指揮は私に譲っていただけないでしょうか?」
そう言ってお父さんは頭を下げる。それは華麗な脅しだった。
「そんな、頭を上げてください……皆の者、聞いたな、今回はこの副会長どのの指揮に従うように!」
「ありがとうございます、では人を集めて、広場に火を焚き、大鍋に湯を沸かしてもらえますか?私の恩人たちは、あの白蛇を食べたいようです」
苦笑しながら、放たれたその命令に。
「は?」
ロゼルさんは、自分が何に巻き込まれたのか。すぐに理解することはできなかった。




