もってかえる
「なあ、それ本当に持って帰るのか……?」
お師匠様と一緒に、白蛇の尻尾をうんとこしょと引っ張っていると、そうリズに問いかけられる。
「もちろんだよ!」
「もちろんよ!」
ボクたちは寸分の狂い無くそう答える。
「そうは言っても、さっきから全然白蛇動いてないしさ、それに、俺たちは二人を担いで街まで戻らなきゃいけないんだぜ?」
「……それもそうなんだよね」
お師匠様が言うには二人とも安静にしていれば大丈夫らしいけど、でも早く街に連れて帰って安心させてあげたいよね。
「じゃあお師匠様、一旦白蛇はここにおいておいて、後でとりにこようよ」
「持って帰るのは確定なんだな……」
リズがあきれたようにそう呟く。
「もう、リズは黙っててよ、ね、お師匠様、そうしようよ」
「うーん、それはちょっと難しいかなあ」
珍しく歯切れが悪く、お師匠様はそう答える。
「え、どうして?」
「メリアちゃん、静かに耳を澄ませてみて?」
「わかったよ!」
ボクは言われた通り、両耳に手を当てて、耳を研ぎ澄ます。
すると。
「あっ!」
木々の奥、そこで草葉の陰から静かにボクたちを見ている、影たちに気が付いた。
「血の匂いにつられてやってきたみたいね……」
「白蛇は血、出してないけどね」
白蛇の顔は焼灼止血されちゃってるし。
「もう、メリアちゃん、意地悪しないの!じゃあ、あれよ、この美味しそうな匂いにつられてやってきたのよ」
ぷんぷんとまくし立てるようにお師匠様はそう結論付ける。
「狼か、屍漁りか……いずれにしても、戻ってきたころには食い散らかされているでしょうね!」
「えー、それは困るよ」
せっかくボクたちが倒したのに、みすみす森の獣たちにあげちゃうなんて!
「ねえ、お師匠様、どうにかならないの?」
「どうにかって言われても……なるわ、どうにか」
うーんうーんと顔を左右に揺らしていたお師匠様はピタッと止まるとそう呟く。
「え!なるの!」
そのボクの言葉にお師匠様はにやっと口角を吊り上げると。
「出でよ、惹きの杖っ!」
と、杖を呼んだ。
みるみるうちに、空に帯びた光の粒子は集まっては伸びて、杖の形へ変化して。
それは立派ないつもの惹きの杖となった。
「聞け!意思なき大地よ!今からあなたに形を与えます!」
そう唱えながら、お師匠様はしゃがみ込んでとんっと杖の先で地面を叩く。
するとぼわっと一瞬だけ地面が光った。
そして。
「作るわよ!二人とも!」
そう楽しそうに声を張り上げて、お師匠様は両手で地表の土を集め始める。
さっきの魔法の影響だろうか。
土は程よい湿気を帯びて、あっという間にお師匠様の真っ白な指は泥に覆われた。
「作るって何をだよ?」
リズが問う。
「何ってもちろん――」
お師匠様はぶんっと勢いよく地面からこちらへ振り返る。
その瞳はキラキラと、まるで泥団子を作ることに夢中な子供のような瞳で。
「カッコいいやつよ!」
そう言い放った。




