あまねく緑!
駆け足になるのは仕方なくて、サクサクと砂を蹴飛ばしながらにボクたちは急ぐ。
目の前の緑はだんだんと被さるように大きくなっていって。
あまねく緑は砂漠の太陽を遮り、静かな木漏れ日を産む。
その中から、きゅーきゅーと聞こえてくるのは、鳥かな?
砂漠のただ中では考えられないほど多くの命が、ボクたちを出迎えた。
「よし、じゃあ、始めるか!」
そう言いながらにリズは背負っていた大きなかごを地面に置く。
地面、それはすでに砂ではなく、枯れ葉と土と苔でできていて。
かごの中、空っぽだと思われたその底には実は何かが収められていたようだった。
「ほれ」
そう言ってリズはかごの中から、小さなナイフを取り出した。
純白の刀身に、紐を巻いた柄がついたナイフ。
これもきっと骨でできているんだね。
刀身をもって、こちらに向けられた柄をボクはそんなことを考えながら受け取る。
「これで、じゃんじゃん、動物を狩るんだね!」
「違うぞ?」
しゅっしゅっと蛇のように、逆手でナイフを握り直しているとすぐさまリズから訂正が入る。
「俺たちのお目当てはこれだ」
そう言って、リズは森の中、慣れた手つきでナイフを振るう。
鮮やかな赤色を携えたそれはぱさりとリズの手の中に落ちた。
「え?お花?」
「そうだ、お花だ」
手に落ちた真っ赤な大輪を見せびらかすように持つと。
「俺の家は代々続く、花屋だからな」
息をするようにそう言った。
その言葉に。
「リズって、お花屋さんだったの!?」
ボクは素っ頓狂に聞き返してしまい、やばっと思わず口をふさぐ。
「なんだよ、そんなに驚くことでもないだろ……あっいや、お前らにとっては意外なのか」
リズは呟くようにそう言った。
「前に出会った旅人が言ってたんだ、この街ほど、花を大切に扱っている街は見たことがないって」
「……どうやら、アーガナージャでは、花は特別な意味合いを持つみたいね、良ければ、教えてくれないかしら?」
「ああ、お安い御用だ、だがその前に――」
リズはそう言いながら、ボクへ一歩踏み出すと。
ぱっと、ボクの口に当てられた両手を取った。
「手を動かしながら、聞いてくれ」
そう言って、リズは優しく笑った。




