またね!
駅舎の前で、ボクたちは顔を合わせる。
「なあ、本当に今日発つのか」
「うん……」
「もう少し――」
「ルーランやめないか」
マスターがルーランの言葉を遮る。
「そう、だよな、ごめんなメリア、無理言って」
「ううん、大丈夫だよ」
そう言ってボクは無理矢理に笑顔を作る。
「本当に、お世話になりました」
お師匠様がそう言って、二人に頭を下げる。
「私たちこそ、この数ヶ月、メリアには元気をたくさん貰いました、本当にありがとう」
「……旨いコーヒーありがとな、あの旨いお菓子もありがとう」
マスターにつられて、真面目そうにそう言うルーランにボクは思わず吹き出す。
「なんだよ、メリア」
「ごめんね、なんだかおかしくて」
そう、謝りながらもボクは笑いが止まらない。
「やっぱり、メリアは笑顔が似合うな」
「ルーラン、いっつもそれだね」
「本心からの気持ちだから、いっつもなんだ」
そう言って、ルーランも笑った。
「メリア、身体に気を付けるんだよ」
「うん、マスター」
「危ないと思ったらすぐ逃げるんだよ」
「大丈夫だよ、それにほら!」
そう言ってボクは右手からぷしゅーっと蒸気を出して、左手からぱらぱらと氷を生み出して見せた。
「ボク、すごくなっちゃったから!」
あのネレイアの夢の後から、ボクは氷を作り出せるようになった。
修行の成果もあって、熱ーい蒸気も作り出せるようになったし、ボク最強だよ!
「すっかり、水操術をマスターしたね」
「マスターのおかげでね!マスターだけにねっ!」
一瞬、ぽかんとしていたマスターはすぐにボクのスーパーだじゃれに気づいて、にっこりと笑う。
その時だった。
ぷわーんと機関車の汽笛が駅舎を駆け巡る。
「さあ、早くいかないと遅れてしまうよ」
「うん」
そう返事をしながらもボクの足は動かない。どうしても我慢できなくってボクは俯いた。
「それじゃあ、また今度」
「え?」
マスターのその言葉に思わず顔を上げる。
それはまるで、いつもボクがバイトを上がるときとおんなじ調子で。
「必ず、また会おう」
「うんっ!」
マスターがいつもとおんなじだから、ボクはいつもとおんなじように返すことができた。
涙は頬を伝うけど、でも笑顔でボクは。
「またね!また今度!」
「またなーっ!」
「また会おう!」
駅舎に向かいながら、ボクは背に向かって大きく手を振る。
「またっ、またねっ!」
大声で叫びながら。
駅舎の壁で見えなくなるまで、ボクはずうっと二人を見て歩いた。
そして、どうしても立ち止まってしまう。
「……ねえ、次はどんな街かな?」
「きっと、すっごく楽しい街よ」
お師匠様はそう言いながらボクをぎゅうっと抱きしめてくれて。
「たのしみだなぁ!」
その言葉に嘘はなく。
ちょっぴり、お師匠様の胸を涙で濡らしたのだった。




