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メリアと不思議な旅  作者: 首長イ鳥
霧の街
32/41

お師匠様への報告

「ただいまー!」


「メリアちゃん、お帰りなさい!」


ボクは我が家のお家の扉を開けたまま、大きな声でお師匠様に呼びかける。


「ねえねえ、お師匠様、ちょっと来てよ!」


「どうしたの、メリアちゃん?」


狙い通り、お師匠様は不思議そうにこちらにやってきた。

そこでボクはわざと自分の体で玄関から先を隠して。

そしてお師匠様が目の前にやってくるとばっと飛びのいた。


「じゃじゃーん!」


「わっ、どうしたのこれ、メリアちゃん」


「バイトの就業祝いで貰っちゃったぁ」


そう言いながらボクは背後の三輪車にさっと乗り込み、ぷしゅーっと蒸気を空ぶかしする。


「バイト……ってことはもしかして、メリアちゃん、お仕事見つかったの?」


「あ、まずはそこから話さないとね」


ボクはお師匠様に今日の出来事を報告するのだった。



「メリアちゃん、今日はよく頑張ったわね」


「えへへ、頑張ったよ?ボク」


ソファーに座るお師匠様の膝の上に座ってボクは上目遣いにお師匠様を見る。


「コーヒーの淹れ方も教えてもらったから、お師匠様にも美味しいコーヒーごちそうできるよ!」


「それは楽しみね!」


「それにね、マスターは水の魔法を使える人だったんだ!なんでも、魚人族の血が流れているんだって」


「水の魔法を?」


「うん、ボクに魔法のこと、教えてくれるって!」


その笑顔にお師匠様はボクの頭を撫でてくれる。


「それはよかったわね」


撫でながら、でもお師匠様は申し訳なさそうな顔になって。


「私、メリアちゃんに魔法教えられないでしょ?少し心配してたの」


「えっと……有声魔法と失声魔法の違いだよね」


ボクは昔、お師匠様に教えてもらった二つの魔法について、思い出す。


「その名の通り、術者が呪文や魔法名を唱えることによって発動する有声魔法と術者のイメージによって発現する失声魔法は似ているようで根本から全く違う、私は有声魔法使いだから、メリアちゃんの、イメージによって水を作り出す失声魔法は私にはまったく理解できないの」


「そうだったよね、あ、そう言えば、マスターはそれは魔法じゃなくて水操術だって言ってたなぁ」


「水操術?」


お師匠様はその言葉を反復し、そしてふっと口元に手を当てて黙り込んだ。

それはお師匠様が何か深く考え事をしている時の癖。


「あれ、お師匠様でも、わからない?」


「知らない言葉だわ……まさかメリアちゃんに関することで私が知らないことがあるなんて……」


「そんな、大げさだなあ、お師匠様は」


そんな相槌にお師匠様はボクをじぃっと見つめる。

それはほそーい目でなんだか、ボクの体の中のすべてを見られているようで。

気付くと鳥肌が立っていた。


「……それにしても、そのコーヒー屋さん、すっごく良い職場みたいね、私も一度、保護者として、菓子折りをもって挨拶に――」


「――だめ!駄目だよ、お師匠様、絶対来ないでね!」


ボクはお師匠様の金縛りから解けて声を張り上げる。


「どうしてよ、メリアちゃん?」


「だって、恥ずかしいし……」


お師匠様がマスターに菓子折りを渡して、ボクのことを一方的に話しているそんな姿を想像して――。

ぶんぶんと頭を振ってその妄想を振り切った。


「でも、私、メリアちゃんの働いているところ、見てみたいなあ」


「だめったら駄目だよ!」


ボクはぴょんとお師匠様の膝から飛び去ると階段を駆け上がる。


「あぁ……」


お師匠様はボクに向かって手を伸ばして、情けない声を漏らす。


「絶対!来ちゃだめだよ!」


「わかったわよ、メリアちゃん」


それは少し不満気なお師匠様の声、それを聞いてボクは。


「わかったのなら、良し!」


そう言って再び、お師匠様の膝の上に戻る。


「そう言えばさ、お師匠様、お仕事どんな感じだったの?」


次はお師匠様の番だよ?とボクは聞く。


「うーん、それが、まだよくわからないのよね」


「わからない?」


「そうなの、今日は英雄についていろいろ質問されてそれで終わっちゃったの」


お師匠様曰く、今日は、冒険者ギルドの職員さんと英雄関係の書類を整理することで一日が終わってしまったらしい。


「英雄かぁ、確かに、お師匠様ほど、英雄に詳しい人もいないと思うけど」


そう言うとお師匠様はそんなことないわ、と謙遜する。


「でも、今回は討伐じゃなくてよかった、もうドラゴンを相手にするのはごめんだわ……」


「ほんとにそうだね」


布団の中、ボクはまだ見ぬドラゴンを、お師匠様は過去を想像して身震いするのだった。



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