次の街へ!
「お師匠様、昨日は大変だったんだからね!」
エルネスカの街を後にした街道で、今日何度目かのそれにお師匠様は笑って返す。
「でも、そのおかげで美味しい魚料理をいっぱい食べれたじゃない」
「うっ、それはそうだけどさ」
「私は、魚幕の儀式を見れて満足、そしてメリアちゃんはお魚いっぱい食べれて満足、それでいいじゃない」
太陽のように優しく照らすお師匠様のその笑顔にボクは肩の力が抜けてしまうんだ。
「うーん、丸め込まれた気がしないでもないけど、まあいっか!それよりもさ――」
ボクはとっととお師匠様の前にでると後ろを振り返る。
「そろそろあの"惹の杖"のこと、教えてくれてもいいんじゃない?」
「あ、あれは……ずうっと昔に骨董屋さんで一目ぼれして店主に頼み込んで譲ってもらったの、だから、私も詳しくは知らないんだーなんて……」
「え?前はお土産屋さんで一目ぼれして買ったって言ってなかったっけ?」
「あ、あれ、そうだったかしら、おほほほ」
「お師匠様、聞いたことないよ、そんな笑い声」
やっぱりだめか。
なんでかわからないけどお師匠様はあの杖のことを話さない。気にはなるんだけど、でもお師匠様のごまかし方があまりにもへたくそで、なんだかかわいそうだから詳しく聞けないんだよね。
ほら、今もおほほほが止まらないし。
「……ねえ、次はどんな街にいくのかな?」
ボクは話題を普段の調子に戻す。
「そうね、エルネスカは海の街だったから、今度は山の恵みが食べたいかなー」
「そんなこといって、エルネスカでもお師匠様、魚じゃなくてお肉食べてたよね」
「ば、ばれましたか」
「バレバレだよ!」
てへっと舌を出すお師匠様。
お師匠様のおどけた顔、それが心地よすぎるから。
お師匠様がいなかったらボクはどうなってただろう。
ふとそんなことを考えてしまってポロリと漏れる。
「……エルネスカにはいなかったね、イルカ族」
「いつかは見つかるわ、世界は広いんだから」
「もしかしたら、ボクがイルカ族最後の――」
「そんなことないわ、メリアちゃん」
いつの間にか下がっていた顔を上げると視界がお師匠様でいっぱいになる。
「きっと、他のイルカ族も旅をしているの、だから、今度の街で会えるかもしれない」
「そっか、そうだよね」
ぱんぱんと自分のほっぺを叩いて弱い自分を追い出す。
「次の街ではいっぱい美味しいもの食べるぞ!」
「その息よ、メリアちゃん!」
海の風が二人を撫でる。でもこの爽やかさとはしばらくお別れ。
次の街はどんな街だろう。どんな家があって、どんな歴史があって、どんな人が住んでいるんだろう。
とっても楽しみだ。
「ねえ、メリアちゃん、なんか暑くない?」
「そりゃ、これだけお日様がぎらぎらしてたら暑いよ」
「そうよね!だからさ、メリアちゃん、ミスト!やって!」
「しょうがないなぁ」
ふたりの旅はまだまだ続く。




