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第1.7章 - 火のエレメンタル

すべてが止まっているように見えた。

白と黒。

まるで現実が壊れた瞬間に、時間が凍ったかのようだった。

ジェイは地面に横たわり、体を震わせ、息は荒く、目を見開いていた。

体中の筋肉が動きたがり、逃げたがり、生き延びようと叫んでいる。

彼は後ろへ数センチずつ這い、角のあるライオンとの間にわずかな距離を作った。

拳はほこりだらけの地面をこすり、細い跡を残す。


「これ…悪い夢のはずだよな…?」

ジェイはつぶやき、冷や汗が背中を伝い、心臓が狂ったように鼓動した。


その時、目の前に淡い光が現れた。

蝶だった。

砕けたような、まるで壊れたガラスの翼を持つ蝶で、奇妙な、ほとんど金属的な音を立てていた。

ジェイは信じられないように何度も瞬きをした。


「お前…これの責任者か?」

声を震わせながら尋ねると、蝶はそっと彼の頭に止まった。


返事はなかった。

ただ空気の中でかすかな歪みと結晶化の音がした。

ジェイは唾をのみ、ゆっくりと頭をライオンに向けた。

その光景に息をのんだ。


ライオンが燃え始めた。

最初は背中から、次に全身。

黄色とオレンジの激しい炎が毛皮と肉を包み込み、瞬く間に消し去る。

モンスターの唸り声と炎のパチパチという音が混ざり合い、数秒で体は風に舞う灰となった。


そして、それだけではなかった。

村のすべての生き物、恐怖を振りまいたすべてのモンスターも、炎に包まれ消え去った。

残ったのは、煙の中に漂う灰だけだった。

炎の熱は遠く離れていても感じられ、焼けた木と肉の匂いでジェイは顔を背け、吐きそうになった。


「な…何が起きてるんだ…!?」

ジェイは叫んだ。

声は驚きと恐怖でかすれていた。

「冗談か? 誰か俺を罰してるのか?」


歪んだ、若々しい声が周囲に響いた。

どこからともなく、すべての方向から、そしてどこからでもないかのように。

十七歳くらいの少年の声だった。


「がっかりだな…お前も、俺たちと同じ物語を持つ魂か?」


ジェイは振り返り、村の影や角を隈なく見回した。


「誰だ!?」

腕をあげ防御の構えを取りながら叫ぶ。

誰も答えないことはわかっていたが、頭は千の速度で動き、これは呪いか、幻か、それとも自分の狂気なのかと必死に理解しようとした。


煙と炎の中、一軒の家の前に猫のような姿が現れた。

目だけが赤いルビーのように光り、現実を貫くかのようだった。

ゆっくりと、残りの体は制御された炎に包まれた。

ライオンの炎とは違い、これは野生の火ではなく、毛皮の一部のように優雅に動く。

一つ一つの動きが計算され、優雅で致命的だった。


ジェイは唾を飲み、思った。


「ジャガー…でも炎とその目…」


その猫は筋肉質で俊敏だった。

黒い斑点は炎の色と対比し、体を彩る。

尾の先は小さな炎で、動くたびに火花を散らす。

赤いルビーの目が彼を追い、知性と危険を示していた。

生まれながらの狩人、炎に包まれた捕食者。

その存在だけで、ジェイの体中が叫ぶ――逃げろ、逃げろ、逃げろ…


声が再び、すべての方向から繰り返された。


「がっかりだな…」


そして世界が変わった。

周囲のすべて、建物、通り、空までが燃え上がった。

終わりのない火災のようで、まるで地球全体が永遠の炎に包まれたかのようだった。

ジェイは恐怖で動けず、熱と光に打たれ続けた。

息は短く、胸は戦鼓のように打つ。


「これ…現実…のはず…ない…」

ジェイはつぶやき、安全な場所を探そうと視線を集中した。

だが、避難場所はなかった。

あるのは炎と影、危険だけ。


ジェイは目を閉じ、心を落ち着けようとした。

深く息を吸い、蝶のことを思い出す。

もし蝶がこれを起こしたなら、もしかすると制御もできるかもしれない。

もしかしたら…生き延びる方法があるかも…


体がまだ震える中、ジェイは覚悟を決めた。

動かねば、考えねば、行動せねば。

世界が炎に包まれていても、あきらめるわけにはいかない。

今は、だれもあきらめてはいけない。


炎のオーラに包まれたジャガーは跳躍し、通りに降り立った。

その一歩一歩は猫のように音を立て、ゆっくり、計算された動きで獲物を追うかのようだった。

赤いルビーの目は鋭く光り、尾の炎は精密に動き、歩行のバランスを取る。

地面に伏せたジェイは後ずさりし、腕をあげた。


「近づくな! 食うな!」

かすかな声で叫び、心臓は全力で鼓動していた。


ジャガーは歪んだ笑いをもらし、地面に響くかのようだった。


「食うだと? 他の子孫を食うと思うか? 自分を食うのはカニバリズムじゃないか?」

声は奇妙なエコーを伴い、まるで複数の声が同時に話しているようだった。


ジェイは瞬きをし、混乱した。

「この猫は一体何を…?」と小さくつぶやき、言葉の意味を理解しようとした。


ジャガーは精密な猫の歩みで近づき、声を続けた。


「がっかりだな…その魂を持っているのに、人間の頭脳が上にある、か…がっかりだ…」

そして声を高めて繰り返す。

「がっかりだな…」


ジェイは攻撃されると思い、腕をあげ身を守った。

息は荒く、額には汗が光る。

しかし、何も起こらなかった。

ジャガーは数メートル手前で止まり、座り込み、全身を観察するようにじっと見つめた。


「どうした? 殺すと思ったか? 食うと思ったか? ははは、地球人は無謀で愚かだな」

ジャガーは足をなめながら言った。


ジェイは眉をひそめる。

「なぜ? 俺に何を求める?」

恐怖を隠そうと皮肉を交えて問いかけた。


ジャガーはわずかに眉を上げ、答えた。


「楽しむためと、ある意味助けるためだ。 だが、全部渡すと思うな」

声には皮肉が込められ、目には遊び心が光った。


「何が欲しいんだ?」

ジェイは少し震えた声でしつこく聞いた。


ジャガーは眉をひそめ、明らかに苛立ち、鼻を鳴らした。


「黙れ! 騒がしい猿だな。その魂を持つくせに恥ずかしくないのか?」

ルビーの目が貫くように光ったが、声には遊び心もあった。


ジェイは混乱し、理解しようと見つめる。

ジャガーは軽く息を吐き、静かに言った。


「ただ、母の頼みで来ただけだ」


「母?」

ジェイは理解できずに聞き返す。


「そう…ほら、そこにいる」

ジャガーはジェイの視線で何かを指した。


「これが…お前の母か?」

ジェイは信じられない様子で聞く。


「お前の母でもある」

ジャガーは落ち着いて答えた。


ジェイが何か言う前に、地響きのような咆哮が響き、地球全体が揺れるようだった。


「よし、眠くなった。寝るぞ」

ジャガーはジェイに向かって胸めがけて駆け、食べるかのように迫った。


だが、かみつく代わりに、ジャガーは体に溶け込み、霊のように通り抜けた。

周囲は炎に包まれ、世界は灼熱の炎で覆われた。

熱が全身を包み、煙と焦げた肉の匂いが漂う。

ジェイは目を閉じ、最悪の事態を覚悟した。


「待て…待て…」

心臓は狂ったように鼓動していた。


しかし、何も起こらなかった。

目を開けると、すべては元に戻っていた。

モンスターは焼け死に、血があちこちにあったが、炎は完全に消えていた。

家の灰も、炎の跡もない。

残るのはモンスターの惨状だけ。


ジェイは地面に倒れ込み、腕を広げ、息をついた。

モンスターの死体の一つが顔の上にかかり、皮肉な声でつぶやいた。


「これ…冗談だろ…」


震える足で立ち上がり、焼けた肉の匂いと土のほこりをまだ感じた。

目が戦術ベストに落ち、横に投げ出されていた。

片手で拾い上げ、かがむと腕に違和感を覚えた。


傷跡…深い裂け目、爪の跡。

しかし、怖いのはそれだけではない。


傷口から…火が出ていた。

淡く、ほとんど見えない火。

まるで皮膚の下に潜む炭火のように。


「完璧…これもジャガーのせいか…」

ジェイはつぶやいた。


半壊したベストを抱え、残る家のほうへ走った。

ネコティナを探さねば。


「ネコティナ! どこだ! 大丈夫だ!」

叫びながら入ると、倒れたドアの向こうに彼女がいた。

地面に座り、泣き震えていた。


ジェイはひざまずいた。


「大丈夫…もう大丈夫…」

低い声で言う。


「でも…兄たちが…」

彼女はすすり泣く。


ジェイは歯を食いしばる。

あの光景…あの痛み…

炎よりも心を焼いた。


「ここを離れよう。もう安全じゃない。」


背中に彼女を担ぎ、村を出た。

食べ物なし。

水なし。

武器も足りず。

ただ暗く冷たい道だけ。


少女は涙の乾いた頬で眠り、兄たちの名前をつぶやいた。


ジェイはため息をつき、道を見つめる。


「このままじゃ…何もしなければ、モンスターより先に飢え死にする…」


その時、聞こえた。

声。

少年の声。

頭の中に直接響く、遠くのこだまのような声。


「おい? 誰かいるか? よう、よう。俺だ、火のエレメンタルだ。聞こえるか、地球人?」


ジェイは驚き飛び上がりそうになった。


「な…何だ…!? 巨大炎猫の声か? どうやって頭の中で話すんだ?」


ジャガーの咆哮が頭の中に響く。


「巨大猫? ご機嫌だから許してやる。困っているな?」


ジェイは鼻で笑った。


「たくさんある。行く場所も、食べ物も、水もない。ベストは壊れ、弾は少なく、トラウマの女の子を背負ってる… まだ知りたいか?」


ジャガーは皮肉たっぷりに笑った。


「悲劇だな、ドラマだ。泣きそうだ。」


ジェイは鼻を押さえる。


「お前は何者だ? 炎猫以外に?」


「俺はエレメンタルだ。わかるか? 母が直接作った存在だ。銀河も、宇宙も、生命も…なんでも作る。俺たちは五つだ:地、火、水、風、エネルギー。以上だ。もう質問には答えない。」


ジェイは疲れた笑いを出した。


「完璧だ…頭の中に宇宙ジャガーが住んでいて、手伝わない…素晴らしい…」


ジャガーはジェイの苛立ちに楽しそうに笑った。


ネコティナを背負い歩くジェイの後ろ、夜は深くなり、道は不確かになった。


旅は、今始まったばかりだった。

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