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第2.2章 - 2人目の地球人

夜の空気はとても重かった。


森の空き地で、月の光が木の間をぬけて、地面を銀色に照らしている。葉っぱの間を通る光は、まるで小さな道を作るかのようで、影を長く伸ばした。風がそっと吹き、枝や葉を揺らすたびに、ささやくような音が森に響く。その音は、闘いの前の静けさのようで、全てが息を止めて待っているようだった。


空き地の中央に、二つの黒いオーラが広がっていた。月光の下、二人の存在が互いに緊張を高めるように立っている。


「俺の名前はダル・アイカー、別名プラグだ。お前を討つために来た、動揺の霊よ」


ダルが一振りの刀を抜く。黒いオーラが刀から広がり、彼の体から漂う暗い気と同じ色を帯びる。

ジェイはその光景を信じられないように見つめた。


――これは夢か? いや、違う。


弟と、彼が持つ二本の刀、そしてそのオーラ。まるでゲームの中のキャラクターのようだ。かつて、最後のエンパナーダをめぐって争った、あの弟と同じだろうか? 家で一緒に昼食を食べたあの弟か?


疑問が頭の中をぐるぐる回る。混乱と驚きが胸を締め付ける。


戦いが始まった。


ダルは刀を振るう。力強く、無駄のない動き。魔法や能力は使わない。ただ純粋な技術と体力だけで勝負する。

一方、霊は黒い影を操る。長く伸びた手から、闇の槍を放つ。空気を裂くような音を立てながら、鋭く突き出される。


「カッ」


刀と闇の槍がぶつかる音。衝撃が空気を震わせ、地面の葉や小石を飛ばす。ダルは素早く身をかわし、次の斬撃を準備する。

ジェイの目には、弟の目が赤く光り、全身から力がほとばしる様子が映る。動きは速く、正確で、美しい。息を飲む間もなく、もう一度斬りかかる。


霊は形を変える。瞬間、分身のように薄く広がった影が、空中で槍を再構築する。ダルはそれを読み、刀で受け止める。刃と影が擦れる音は、まるで氷を削るようで、冷たく、鋭い。


繰り返される攻防。

ダルが前に出ると、霊は後退し、空気を振動させる。再び槍が飛び、刀で切り返す。影の一部は霧のように消え、また戻る。攻撃と防御の連鎖が続く。


ジェイは息を詰めて見つめる。弟の動きは洗練されており、力強く、冷静だ。霊の魔法は恐ろしく、しかしダルは決して怯まない。刀だけで、影を受け流し、切り裂き、攻撃を避ける。


木々の間に飛ぶ影、刀が空気を切る音、月光に反射する光。すべてが一瞬のうちに繰り広げられる戦の詩だった。


互いに傷はない。しかしその場の緊張は頂点に達し、森全体が呼吸を止めたかのように静かになる。


一瞬、ダルはわざと刀を下げる。霊はその隙を狙う。槍が一直線に飛んでくる。しかしダルは瞬間的に体をひねり、床に刀を突き刺して反動を利用して回転し、反撃を叩き込む。霊は空気中で裂け、煙のように消えるが、また戻ってくる。


戦いは互角。力と魔法、実力と技術。互いに負けず、互いに傷つかない。

空気は振動し、月光は戦士と影を照らす。闇と力、赤い目と白い光、すべてが混ざり合い、幻想のような場面を作り出す。


ジェイは地面に座ったまま、ただ見つめるしかなかった。息が詰まり、体が震える。弟はもはや、かつて一緒に笑った少年ではない。戦士であり、戦場で鍛えられた大人だ。


戦いは今、決着はつかない。

しかし、森の静寂の中で、互いの力と存在が確かめ合われた瞬間だった。


ジェイは木に背をもたれ、そしてゆっくり地面に座り込んだ。しかし目は決して離さなかった。ダーゥの姿を、目の前にある現実を、彼は必死に見つめていた。心の中では疑問が渦巻いていた。いったい何が起きているのか?

あの影も、ダーゥも、この世界に送られたのは、あの「蝶の裂け目」と関係しているのか? なぜダーゥは「やっと見つけた」と言ったのか?


ジェイの表情は疲労と混乱で歪んでいった。眉間には深いしわ、瞳は半分呆然とし、口元には無意識の緊張が走る。体はまだ少し震えている。心の奥底では、帰らねばならない、ネコティナの元に戻らねばならない、そして何とか兄を助けねばという思いが交錯していた。


その瞬間、ジェイは一つの決意を固めた。

「今のダーゥが、どんな存在なのか、見届けよう。」

心の中でそうつぶやき、ゆっくりと立ち上がった。月明かりが森の枝を透かし、柔らかい光で森全体を包み込むように広がった。その光はまるで、森全体がジェイとダーゥを祝福し、見守るかのようだった。


開けた森の空間には、二つの存在があった。影のような不気味な存在と、ジェイの兄、ダーゥ・アイカー。風が吹き抜け、まるで戦いのゴングを鳴らす鐘のように、森の空気を揺らす。


影は両手を広げ、歪んだ声で笑った。その声は壊れた映像のように耳に届き、骨の奥まで寒気を走らせる。空気は重く、暗く、苦く、まるで恐怖の霧が森全体を覆ったかのようだった。


しかし、ダーゥも黙ってはいなかった。彼からも黒い霧が立ち上り、足元から体全体を包む。その霧は影のような悪意を持たず、ただ彼自身の力と意思を映し出していた。風に翻る長い黒いコートの裾、腰に二本の黒い刀が光を反射する。ダーゥはわずかに腰を落とし、戦闘態勢を取る。表情は真剣そのもの、目は赤く、血のように燃え、影を狩る決意に満ちていた。


影は無表情で、目もなく、ただ二つの白い光が魂を見透かすかのように輝いている。歪んだ笑い声が森に響き、まるでダーゥを挑発しているかのように、不吉で、冷たい空気を撒き散らした。


ジェイはその二人の間で息を飲む。目の前で繰り広げられる光と影の対峙、黒と赤、静と動、悪と正義の微妙な境界線に、心臓は早鐘を打つ。森の木々の間を吹き抜ける風が、二人の存在をさらに引き立て、戦いの始まりを告げていた。


ジェイは背中を木に押し当てながらも、目を離さなかった。混乱と恐怖、そして兄への信頼が入り混じり、心の中で無数の問いが巡る。だが、彼は知っていた。答えはこの目で、ダーゥの戦いの中で見つけるしかないのだと。


月光の下、森の静寂が一瞬止まった。風の音も、葉のざわめきも、全てが止まったかのようだった。そして、ジェイは静かに息を整えながら、心の中でつぶやいた。

「さあ、ダーゥ・アイカー、君が今どんな力を持っているのか、見せてもらおう…」


ジェイは地面にうつぶせになっていた。

血が背中から広がり、湿った土と根の間を流れる暗い川のようだった。

鉄の匂いと夜の冷たい香りが混ざり、地面は頬を包むように沈んでいく。


呼吸は弱く、かろうじて生きていることを示すかすかな音だけだった。


彼の頭の中に考えが渦巻く。


「これで終わりなのか?」

「俺の話はここで終わるのか?」

「兄を見つけた後に…あの子を守ると約束した後に…?」

「これが俺の最後か?みじめで、くだらない終わり?」

「そんなはずは…ない…」


感情がぶつかり合う。

痛み、怒り、恐怖、恥、混乱。

すべてが混ざり合い、まるで水に墨を垂らしたように渦巻いていた。


闇が視界の端から忍び寄る。

世界がゆっくりと消えていく。

まるで火が酸素を失い、静かに消えていくかのようだった。


その時、何かを感じた。

手。

強く、熱い、緊急の手。


ダルがジェイを裏返しにして、慎重に抱き上げる。

まるで壊れやすいものを触るかのように。


「ジェイ!」

ダルの声は緊張していた、ジェイが覚えているよりも鋭く、震えるほどに。

「返事しろ!生きろ!起きて!」


ジェイは答えたくても声が出なかった。

喉から出るのは、かすれた息だけだった。


「ジェイ…聞け」

ダルは顔を近づける。

冷たい空気の中、荒い呼吸が届く。

「俺が助ける、村まで連れて行く…回復魔法も使える…でも、ここにいろ!ジェイ!ジェイ、聞け!」


言葉は森に響き、木々の間で反響する。

風がそれを遠くへ運び、影に溶かしてしまうかのようだ。


ジェイの耳に届くのは、言葉の断片だけ。

夢の奥底からかすかに聞こえるような、歪んだ声。


「ジェイ…戦え…」

「ジェイ…起きろ…」

「ジェイ…俺が守る…」


それでも、痛みと寒さの中で、彼の胸に小さく、だが確かな思いが浮かぶ。


「まだ…」

「まだ終わらせない…」

「いつか…必ず、兄を追い越す…いや、超える…」

「この人生で…あるいは、別の人生でも…ここで…いや…」


その思いは小さいが、ジェイの内で最も強い光だった。


闇がゆっくりと包む。

重く、夜が四方から閉じてくるかのように。


音が消え、痛みも消え、森さえ消えていく。

月は遠くの点になり、黒に沈んでいった。


ジェイは最後の息を吐いた。


そして、深い静寂の中に沈んでいった。

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