小悪魔の誘惑
【放課後シグナル】
◇第3話◇ 小悪魔とのデート
翌日の昼休み、清風学園の中庭は学生たちの笑い声で溢れていた。
「直人、こっちこっち!」
軽音部の練習帰りらしい中村陽奈が、手を振って近づいてくる。ギターケースを背負い、爽やかな笑顔を浮かべていた。
「ひな、どうしたの?」
「別に? 直人とお昼一緒に食べたいなって思って。」
ひなは可愛らしく首を傾げ、にっこりと笑う。その無邪気な仕草に、周りの男子たちも思わず目を奪われている。
「…まぁ、いいけど。」
直人は特に断る理由もなく、ひなと一緒に中庭のベンチに腰を下ろす。
「ねえ、直人ってさ、今日の放課後、空いてる?」
「ん? まぁ、特に予定はないけど。」
「じゃあ、ちょっと付き合ってよ。面白い場所、見つけたんだ。」
ひなはニコッと笑い、期待に満ちた瞳で直人を見つめる。
放課後、二人は街のゲームセンターに向かった。
「ここ、直人が好きそうな感じでしょ?」
「確かに…!すごいな、ひな。」
普段は冷静な直人の目が、ゲーミングマシンの光に輝く。
「ほら、やってみなよ!私も一緒にやるから。」
ひなはダンスゲームの機械の前に立つ。リズムに合わせて軽快にステップを踏む彼女に、直人も思わず見入ってしまう。
「意外と上手いんだな。」
「ふふん、こう見えて運動神経いいんだよ?」
二人はゲームやプリクラを楽しみ、まるでデートのようなひとときを過ごす。
帰り道、夕焼けに染まる空の下で、ひなは小さくつぶやいた。
「今日はありがとう、直人。楽しかった。」
「こっちこそ。ひなのおかげで、なんか新鮮だったよ。」
「…ねえ、また一緒に遊んでくれる?」
ひなは、少しだけ頬を赤らめて直人を見上げる。
「もちろん。いつでも誘ってよ。」
その言葉に、ひなは嬉しそうに笑った。
一方、そんな二人の姿を、別の影が見つめていた。
「直人とひな…か。」
神谷優馬は、遠くから二人のやりとりを観察していた。
「ふむ…これは面白くなってきたな。」
静かに笑みを浮かべ、彼もまた新たな一手を考え始める。
──夕暮れの街に、また一つ新たなシグナルが灯る。