第一章 17
五日間に渡る学校閉鎖が開け、月曜日の朝。
天気予報の通り、空模様は曇りのまま。鉛色のうねぐもが空を覆いつくしており、見渡す限りに青の一色も在りはしない、重厚な曇天の下。
始業時間にはまだ早い、長野県久留米市立高等学校正門前にて。
ニシと英菰と世津の三人は、そろって学校へと集団登校と洒落込んでいた。
「はぁ…………結局来ちゃった」
英菰の気乗りしないため息には理由がある。
実は最初、英菰は日常に戻るのを警戒し、登校するのは否定的だった。世津の家で立てこもっている方が迎撃が易いと判断したためだ。
しかも最悪の場合、土御門のハンターがまた、学校の中で暴れる危険性と、学校内の人物を人質にする卑劣さを警戒してでもあった。
だが、それに対し、世津とニシは英菰をこう説き伏せた。
世津と英菰達がいれば、ハンターの悪逆に対しても反抗する事が出来る。世津の家で立てこもっている間に一人質にとられる可能性だってある。ならば、登校し、そばにいたほうが彼らを助ける事が出来る。と。
その時の英菰はひどく悩んだが、結局、英菰自身も二年三組の面々が脳裏をよぎり、大きくため息を吐きながらも、世津とニシの懇願へ従い、今に至るのである。
もちろん根負けしたからと言って警戒は怠らない。世津の身元は既に割れている可能性が高い。そのため、世津も英菰もつかず離れず、一般人であるニシを間に挟んで移動していた。
ただ、もちろん、そんな事をすれば、衆目にさらされるのは確定している。
普段の奇行はどうあれ、ニシは顔が良い。英菰も人気があり、世津にいたっては登校初日から教室の外にまでお近づきになろうという男女問わずの群れが出来上がる程である。
したがって、今、三人は正門前に居るのだが、「うわ、見てあの男、女の子二人も侍らせてる」「これが顔面格差」「あ、私のパンツ見た人」「ほんとだ。私のパンツも見てたよ。でもあんなカッコよかったんだ…………」「でも、侍らすのはちょっとね」「ねぇ、クソヤローよ」「うそだろ、英菰ちゃん」「そんな、世津たん…………」「ニシの野郎…………あとで辞世の句書かせてやる」「いや、俺が代筆しとくわ」「破廉恥ですわね」「バルサンまかなきゃ」「外じゃ無理よ」等の好奇の視線、困惑の言葉が三人へ送られた。
「代筆ヤメロ。字くらいかけるわっ!」
「…………ニシあんた、私の預かり知らぬところで、相当やってるわね。こんな注目されたの初めてなんだけど」
英菰の苦言も仕方のないところ。
本来であれば、美男美女のトリオのはずが、どうしてこんなにも胸を締め付ける。罵詈荘厳を浴びなければいけないのか。と、ニシは視界が涙で霞んだ。
そして、涙を零すまいと見上げ曇天の空模様へと、ニシは、悠馬の『ざまぁ顔』を幻視する。
おそらくは、トイレの壁の染みが人の顔に見える現象――――シュミラクラ現象だろう。
いや、そうでなければニシの精神が持たない。ここにきて、親友にまで馬鹿にされたとあれば、ニシはもう泣き崩れる。
だって、これでも学校の皆を思って登校へとこぎ着けたのである。それにもかかわらず、こんな仕打ちでは流石にあんまりだ。
「ああ。俺も今涙で胸がいっぱいだ。帰っていい?」
「あはは、ダメだよ。ニシ君。あと、今後はもうちょっと、律して生きていこうか。ほら、前なんてアタシの着替えや、英菰ちゃんのトイレ覗いちゃったりもしたし」
「「「「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」」」
その辺りに居た、罵詈荘厳の主たちが、殺気を放った。
「おいおいおい。死んだわ、俺」
衆目が割れ、その中から、代表者が一人歩み寄ってきた。少しふくよか。平均的な身長をした少年は、ニシと同じクラスの小託太郎であった。
「ニシ…………いや、『G』よ。」
「タク、てめぇまで…………いや、それよりおい、待て、そのアルファベットが何の頭文字か言ってみろ、ゴッドだよな、神のGだよなぁ?」
「言い訳をしないということは、事実と捉えてよろしいでござるな?」
アランカヌイに遭遇した時の悪寒が、ニシを駆け抜けた。
「逆に聞くけどよぉ、俺は無実だって言って、おめーら信じてくれる?」
「無論にござる。『G』よ。我らは友ですぞ。訳があれば、聞き、肩を寄せる。一人ぼっちの孤独になどさせませぬ」
太郎の周囲――――その場にいるニシのクラスメンバー四人――――だけは力強く頷いた。
「さぁ、仰って御覧なさい私達は味方です」とのお嬢様言葉を発したのは同じくニシのクラスメイト。
勇気つけられたニシは、明るい顔へと戻る。そして、意を決して言うのだ。
「そうだよな、俺ら友達だもんな。実はな、誤って、そう、悪気無くだぜ?そういう事もあったというか――――」
「――――ほー、なるほど、それが辞世の句か。裁きの時である。皆の者!!曲者じゃあ!!!!!!」
瞬間、数多の地面をける音。地響きが、ニシへと迫りくる。
「ああ、なんかこういう玩具あるよなぁ。会話出来ますってうたい文句で、ほとんど独り言になるやつ…………」
あの玩具なんて言ったっけなぁ…………と、呆けた顔で死を受け入れかけた時、
「馬鹿なこと言ってないで、これはまじでやばい。せっちゃんはもっと発言気を付けて、ほら、抜けるよ!」
三人は足早やに、衆目の視線を潜り抜け、安全圏たる校庭へと躍り出た。
なぜ安全圏なのかと問われれば、それはついに閉鎖が開けた久留米市立高校の校庭は、生徒達でごった返していたからだ。
警察や、救急車両が学校へ来たなどとは、不謹慎ながら、この久留米市にとって一大イベントだ。
ゆえに、右を見れば生徒の人だかりが、どのように警察が現場検証を行っていたかを、見聞ききした範疇ですり合わせを行い。いったいこの高校の放課後で何があったのかを推理中。
左を見れば、当事者であっただろう、女生徒が質問攻めにあっている。
ニシと世津も含め、英菰はその女生徒を見て、
「あの子…………良かった。無事だったのね」
と、ほっと胸をなでおろした。宅村に投げ飛ばされた女生徒を見つけ、目じりを下げたのだ。
彼女は、多くの生徒に囲まれながら、それらを相手に、大きく身振り手振りを用いて、説明している。
言い寄ってくる度が過ぎた相手へは、強く言い返している当たり、少なく見積もっても、日常生活における、後遺症というものは見受けられなかった。
「ね?大丈夫だったでしょう。調節はしたもん。あれは、内部じゃなくて、外部を氷の外郭で囲っただけ。言うなれば、関節のついてない鎧に入れただけじゃんね。」
とは言われてていたものの、英菰とニシは世津の言葉だけでは、正直不安だったのだ。
なにせ、体が動かせなくなる程の凍結だ。最悪死んでいてもおかしくないとまで思っていた。
そう、伝えると、世津は珍しくふくれっ面を作り、「むぅ…………」とそっぽを向く。
稀に見る世津の拗ね方に可愛いとこもあるものだ。と、ニシは左肩から、英菰は右肩の方に回りこんで、苦笑しながら宥める。
でも、実は、ニシの苦笑には、世津由来ではない理由も含まれていた。
それは学校閉鎖とは無関係。最近立て続けに起きている、できたてホヤホやの悩み。
「なぁ、英菰。俺最近夢ばっか見るようになってんだけど…………これ何?」
「はぁ?知らないけど、って痛ぁ!? おい、誰だっ今、私の足を踏んだのは!?ニシ?」
「お、俺じゃねーよ。あいつじゃねーか?」
英菰がそちらを見やると、ほど近いところで、人だかりに揉まれながらも、フラフラと玄関へ歩いていく生徒が見える。
「くっそぉ…………馬鹿みたいに力強かったんだけどぉ!」
と、英菰は己の足を膝まで持ち挙げて、片足飛びでその場をくるくると回転しだした。
おそらく英菰は、痛みが引くか、目が回るまでは、この場に足止めを喰らいそう。と、思ったニシは今しがた天啓を得た。
つまり、三人は今登校中な訳なので、制服である。そして、女生徒はスカートである。
英菰は黒のレギンスを履いてはいるが、それでもスカートの状態で足を挙げれば、その裾も大きくまくしあげられる。当然の現象である。
ニシはそうして、英菰の今日の色は水縞だと把握したのだが、眼福なのでその事は伏せておく。
「…………ニシ君。それいつ頃から?どんな夢?」
「ひ、ひゃい!」
ニシは密かに鼻の下を伸ばしていたのだが、急に現実に引き戻され、猿のような顔をもみくちゃに手で拭い誤魔化した。
それというのも、思いのほか、真剣な口調で世津から追及されたからで…………。
こんな往来で話をしてもいいものか。一抹の不安がよぎったが、世津は「人が多すぎて誰も聞いてないよ」と、ニシに返答を求めた。
ニシはそのまま目を瞑り、記憶をさかのぼった。返答を持ち帰るために。
「えぇと…………逆神神社で襲われてから、昔の逆神神社とか、知らない家の夢とか、満月の見える夢。他にもあるんだけど、大多数は起きたら憶えてねーんだなこれが…………」
「ニシ、あんた、頭も見てもらった方がいいんじゃ…………」
ハンターゆえの体幹か、器用にも英菰は新体操選手さながらのバランス感覚を持って、片足立ちのままニシへ悲哀を送った。
「おいおい、頭が痛い訳でも無し、夢を見やすくなっただけだっつの」
「じゃあ、疲れてるんじゃない、最近色々起こったからさ…………」
そう言った英菰はようやく痛みが引いて来たのか、踏まれた足を大地へおそるおそる着け、つま先でとんとんと、調子を確かめ始めた。
その間、世津はずっと眉をひそめ、あごに手を当てていたのだが、何か思い至ったように、「前に病院で言った事覚えてる?」そう切り出した。
「どれ?」
「あの、先祖帰りの話」
世津の言葉を聞いた瞬間、英菰がニシを背後へ押しやり、まるで庇うように世津を真っ直ぐと見据えた。人によっては睨みつけているとさえ思いかねない程に。
「ちょっと待ってよ。せっちゃん。こいつにアランカヌイなんて混ざってないっ」
「ううん。そんなの分からない。現に、ニシ君は自身が血筋である事も知ってはいなかった。それに、アタシのような半妖も、広義の上ではアランカヌイに属している。そう、目くじら立てられると…………ちょっと凹んじゃうな」
「ぁ、いや、そう言うつもりじゃなくて、ごめん。ほんとに」
世津と英菰の話に、ニシはついていけていない。
「お、おい二人とも」
ニシは己を置いて勝手に進むのは勘弁してくれ。と二人の間に割って入った。
そして、世津に対し謝罪を示している英菰を軽くなぐさめた後、世津へと向き直り、簡単な説明を乞うた。
「分かった。じゃあ、歩きながら話そう。英菰ちゃんも復活した事だし」
「ああ頼む、英菰行くぞ」
軽く手を上げ、理解を示した英菰を先導するような形で、世津とニシは並んで教室まで歩きはじめる。
ガヤガヤと喧しい校庭を抜けていく。先ほど英菰が足を痛めてから約十分が経過していた。
ホームルーム開始まであと十分ほど。普通に歩いて行けば、問題なく教室にたどり着ける時間だ。
ただ、一応念のために、アランカヌイ関連を聞く前に、ニシは周囲に知り合いの顔はないかと伺った。正門前で出会った事を思い出したからだ。ただ、杞憂だろうとも思っていた。
だって、こちらの存在に気付いていたなら、ニシは既に尋問の上ひん剥かれて晒し刑くらいにはなっていてもおかしくはないからだ。しかし、そうはならなかった。
ならばもう、おそらくは、正門前でひと悶着あった面々は学校へと入っている。
ニシが周囲の確認を終えた頃、世津が口を開いた。
「あのね、先祖帰りってアランカヌイの血が色濃く表れる事なの。アタシだったら、雪女として、あの白い髪この青い瞳とか。人によっては角とか、鱗とか。」
なるほど。と相槌を打ったニシ。しかし、夢とどんな関係が有るのかが分からず、すぐに首を傾げたが、
「じゃあ、ニシ君へ逆に質問。なんで普通の人間にアランカヌイなんて化け物の特徴が受け継がれると思う?そもそも、人は遺伝情報の違う相手とは交配は出来ない筈なのに」
「わかりません。」
「あはは、素直でよろしい」
その時、階段に差し掛かった。
ここまでの廊下や、通路と同じく、コンクリートの上に薄く白い薄皮を張りつけただけのよくある階段。階と階の中間まで登ると踊り場があり、折り返す形でまた上へと昇っていく。
もちろん、踊り場から落ちないように、階段の一階から最上階まではきちんと、手すりもつけられている。コストとクオリティを突き詰めた普通の階段だ。
その上で、女子二人はスカートである。世津と英菰は立ち止まるとニシを先に行くよう促し、ニシも素直にそれに従った。
その際、ニシが世津の横を通りすがる瞬間、世津はニシへと耳打ちしたのだ。
「セリオン粒子がそれを実現させている」
小さく小さく、耳に息がかかる距離で世津は言った。
その突然の急接近にニシは、思わずのけ反った。
何やら甘い匂いもしたが、こちらは世津が使っている化粧水の匂いだろうと、共同生活をして察した。
ニシの様子に対し、クスクスと口元に手を当て笑う世津といやらしく笑う英菰。
驚きと、思春期の心をもてあそばれた無情感に肩を落とし、勘弁してくれよ。と、半笑いでニシは階段を上り始めた。
また、同じようなことが有って転んでも困るので、一応念のために手すりに手をかけながらニシは上がっていく。
世津その一歩後に続き、英菰も並んでついてきていることが二人の足音でわかる。そして、踊り場の辺りまでくると、世津からは答えの続きが発せられた。
「魔力はその人の体に流れている。もうね、血液や細胞と同じなの。そして、魔力に込められた念や、記憶、精神性と言った概念すらも血として受け継がれていく。たまに聞く、臓器移植で性格が変わった。や、提供者の記憶を見る事があるっていうのも、これが原因」
「え、じゃあ何か、俺の見てる夢も、ご先祖様のもんだっての?」
ニシは、もうすぐそこまで迫った教室をチラ見してから、背後を振り返ってそうたずねた。
たずねた時には、階段を上り上げ、長い廊下へと出ている。
廊下を挟み左手側に教室。右手側には窓ガラスが張られているのだが、、曇天のせいで採光能力が低いためほの暗い。
とはいえ、流石に歩けない程暗い訳ではない。一行は後、十メートルも無い二年三組の教室へと歩幅を合わせて移動する。
そして、世津の話にはまだ続きがあった。
「あくまでも可能性の一つだよ。でも、ニシ君は直感が優れているみたいだし、魔力に触れ合うようになってからって言うのが気になったから。でも、言っておくとアタシも英菰ちゃん同様、ただの疲れだと思うもの」
世津の言葉に英菰も「だろうね」と肯定した。
「お、英菰気が合うな。俺もそう思ってたとこだよ。ただ、子供の頃、神社でにいちゃんに主役だなんだって言われたのは、確かに本当の記憶だったから…………ちょっと気になった………それだけだ」
話を切り上げ、ニシが二年三組のクラスの引き戸を開けようとした時だ。
「ね、ちょっと、そのにいちゃんて垂れ眼だったりした?」
開け放つより前に、世津に制服の背中を引っ張られた。「え、何事?」とニシが首だけ回し、引き戸はそれでも開け放つ。
「…………ねぇどうだった?」
教室からの照明を受けた世津の顔は、ニヤついていた。まぎれもなくからかう仕草。こりゃ面白いとの気持ちが伝わってきて、初めて見るその世津の一面に、ニシも英菰も顔を見合わせた。
「お、おう。そこ食いつく?大した話じゃないんだけど、確かに垂れ眼だった気はするけど、顔はあんま憶えてなくて」
「…………もしかして、八、九年前の話?夏の日の夕暮れ時か、夜頃の話じゃない?もしそうなら。その頃に子供に話しかける不審者なんて…………十中八九そうだと思うよ」
矢次はやに、浴びせる言葉。良く回る舌。でも、何より驚いたのは、その出会った時間を言い当てた事。出会った時期もドンピシャで、ニシは、「へ、へぇ??」と、情けない声が出た。
そして、次に放った世津の言葉はニシをさらに驚かせる。
「主役だ何だって言われたんでしょ?なら、たぶんそれ、うちの人だよ」
「…………へぇ?」
もう一回、情けなくも声が出た。
「えらく気に入ったみたいで、当時はよく聞いてたから憶えてる。そっかそっか、あの時の坊やはニシ君だったかぁ」
世津は、教室内へ足を踏み入れると、くるりと振り返る。今度は教室の照明が逆光となり、世津の顔を少し影らせた。
でも、その顔は、影が無ければ目も当てられない程、輝いていた。嬉しそうに、楽しそうに。笑っていたのだ。予想外の奇跡に
「あの人のいう事だから、どうせ、真逆の印象の子に成長していると思っていたから気づかなかったな…………いやぁ世間は狭いじゃんね。」
そう言って、世津は足取り軽く、席へと向かって行く。
「ちょ!」
ちょっと待ってくれ。というニシの言葉は、ホームルーム始業のチャイムにかき消された。
気付けば、小山ゆかりが壇上に立っており、ニシに対して早く席へ着けと厳しく言い放つ。
「今日悠馬は欠席だ。…………よし、他は皆来てているな」
ニシが席に寄り、椅子を引いて腰を掛けた時だ。悠馬の存在を否定するかのように、ゆかりは言い放った。
英菰へ、さりげなく視線を送ると。彼女は、少し険しい顔つきでゆかりをじっと見ていた。
「あん?せんせ、悠馬今日風邪?」
聞いたのは、クラスの素行不良生徒、古川良哉。
半身で椅子に座り、背もたれに右ひじをのっけて、大股を開いていた。
「…………あぁ。今日のホームルームは以上だ。一限は数学だろう。はやく教科書を出せ」
ぶっきらぼう。早くその話題を切り上げたい。そんな態度を隠すことも無く、ゆかりは言い終えると、そそくさと教室を後にした。
「は?おい、せんせ待てよっ…………」
良哉の引き留め空しく、ゆかりが閉じる引き戸の音が響いた。
ニシはまた、英菰に視線を送った。その後、世津にもだ。三人は言葉にも、顔にも出さなかったが、事情をなにか掴んでいる。と察した。
「ちっ、行っちまった。んだあの態度…………腹でもいてぇのか…………おい、ニシお前なんか知んねーんか?」
良哉のデリカシーの無い一言の直後、ニシへと視線が集まった。
「そうですわね、メーッセージ送ってもまったく既読がつきませんわ。ニシどうなの?」
でも、つとめて冷静に、普段通りにニシは言う。
「え?ああ風邪だってよ。五日間の休みではしゃぎすぎたんだと。今死ぬほど臥せってる」
「はっ…………馬、鹿、だ、ねぇ~アイツも…………」
良哉の軽口を聞いて、クラスの皆が、まぁそうだろう。またかよあアイツよく休むよな。等の雑談で賑やかになった。
もちろん、その中には、悠馬を心配する声も上がっている。
「ああ俺もそう思うわ」




