??????・????のオープニング
――――神の視点で物事を考えことはある?
『アレ』の話の前に、唐突だけれど、聞いてほしいの。
わたしが思う、物語における最悪な結末とはなにかって。
…………ええ、そうね。その結末もまた、最悪かもね。
…………でも、あなたにとっては違うのね。
人によって趣味趣向。好き嫌い。認められる。認められない。
千差万別なのだから、意見が食い違う事だってあると思うわ。
例えば、大団円のハッピーエンド。これは大好きなの。最高よ。
だって、みんなが笑って幸せに結末を迎える事なのよ。
だから、嫌いなわけがないわよね。わたしは大好き。
そして、爆発落ち。これは鉄板よね、わたしは好きよ。良好ね。
だって、これが起こるときって、言ってしまえば笑い話のことだもの。
だから、みんなを笑顔にする話の結末。素敵。わたしは好き。
趣向を変えて、離別の末のビターエンド。これは、嫌いじゃない。普通ね。
だって、葛藤を経た上で、配られた最悪な手札の上で、最善を切ったはず。
各々が、納得のいく物語を作り上げたはずだもの。
だから、それは、見た者へ、前を向かせてくれる結末。わたしは嫌いじゃない。
もちろん、他にもいろいろあると思うわ。人の数だけ、星の数よりも多く。
でもこれは、わたしの思う、物語の最悪な結末。
もったいぶってごめんなさい。結論を言うわ。
最悪な結末とは、緩急無きままの終わり。報われぬ努力の果ての最期。
だってそうでしょう。これじゃあ物語にもなりはしない。
だからね、わたしはアレを創った。だからね、わたしはアレに願った。
アレは、人間に悪徳を授けるモノ。アレは、人間の聖徳を証明するモノ。
前置きはここまで、今度は、私が一番愛して止まない物語の結末を教えるわ。
それはね、あー楽しかったと思える泡沫。ゆめ落ち…………。
ああ、待って、席を立たないで。まだ何も定まっていないのに。
だって、ゆめを見ている時は誰しもが主役なの。何でもできる。何でもなれる。
これってつまり、理想の現実。誰もが乞い憧れた本当の世界じゃない?
でもね、わたしは何もアレを使って、人間に夢を見せようって訳じゃないのよ。
むしろその『逆』。このつまらない現実に夢物語を魅せるのよ。
天国のような最高の夢。ドラゴンと駆る魔法使いなんて、素敵じゃない。
地獄のような最悪な夢。悪魔と契約するなんて、魅惑的で妖しいじゃない。
可能性は無限大。広がるのよ、自由意思の赴くままに。
もちろんアレは、作中劇ではないわ。ましてや、バーチャリアリティでもね。
アレは、誰もがなんにでもなれる人生のお話。その一助となるモノ。
アレは、一生を綴る八百万の本。その文章を彩る極彩色のインクに等しい。
恵まれた天稟も、持って生まれた体格も、叡智の頭脳も必要ない。
必要なのはたったひとつ。その人の強い意志だけ。
その道を突き進むという、何物にも代えがたい優しい覚悟だけ。
強い気持ちがあれば誰でも主役。脇役なんていらないの。いいえ。居ないのよ。
…………あ、少し興味がわいてきた?
それなら、さっそく見てもらおうかしら。
アレが――――『セリオン粒子』が魅せる、人間の燦然たる輝きを。
悪徳と聖徳。どちらにも主役がいるのだと証明する二律背反を。
中庸と円環。どこにでも主役がいるのだと証明する螺旋構造を。
信じる心が勇気に変わる。大人になって、忘れてしまった人間賛歌を。
誰でもない。あなたにどうか見てほしい。
ふふ…………さて、それでは、賽を投げましょうか――――