表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
厨二病なのは認めるけど、本当に冒険したいわけじゃない!  作者: 水希
第1章 厨二病、異世界に行く!
9/64

第7話「仲間が出来ちゃいました…。2」

「シャーロット、ゴブリン退治でお金が貰えるなら、お前がパーティーに入った理由は?」


 少し疑問があったのだ。

 荷物持ちはクエストは受けれない。だが、アレほど弱いゴブリンならば毎日の生活費くらいは稼げそだと。

 シャーロットは初クエストで弱いと知っておきながらゴブリン退治を選んだのだから、高報酬クエストをやりたいわけではなさそうだし。


「あぁ…ゴブリン退治や薬草を取るにしても、荷物持ちは絶対に2人以上でないとクエストを受けられないんですよ…。そうですね、荷物持ちは需要が低いので助かりました!」


 助かったじゃねぇよ!

 シャーロットは笑いながらにそう話した。が、僕にとっては笑えないのだから少し怒りも湧いてくる。


「これ、ゴブリン退治の報酬の山分け分です。」


 本当にシャーロットは需要の低い自分をパーティーに入れてくれた事を感謝をしているのだろうか?それとも、魔法使いパーティーに荷物持ちとして入ってしまった事の気負いなのだろうか?

 山分けと言う割には、さらに今回ゴブリンを倒したのはシャーロットだったが、お金の割合的には僕6シャーロット4くらいだ。


「あ、ありがとう…。」


 シャーロットは出会った初めに無一文で本当にお金に困っていた様な事。報酬量もなんか考えての分配だった事。

 そんな事から僕も怒るに怒れなかった。

 

 だが極論、そうとは言っても需要の低い荷物持ちをパーティーに入れてしまった事実は変わらない。


「これからこのパーティーにはこれ以上人が集まってくれるのだろうか…?」


 シャーロットがクエストボードへ向った事を確認した僕は不安を口走っていた。

 ちょうどそんな時だった。


「こんにちは。…え~と、誰だっけ?」


 僕はそう呼びかけられたのだ。

 誰だっけ?話しかけてきたのはお前だろ!

 心の中でツッコミながらも僕は、若い男性の声にパーティー加入希望者かと心を躍らせ声のした後を振り返る。


 そこには1言で言うなら、眠たそうな好青年が立って…ダラけた感じに立っていた。

 目を惹いたのはザ・異世界と言う様な、見事なシルバーな、だが白と言われれば白に見える頭髪。

 そして輪郭的には鋭くキリッとした印象を普段は与えるであろうが、今はトロンと眠たそうな印象を与えてくる双眸。その下にはまぁまぁな黒いクマ。

 おそらく、本来は凛々しいだろう顔は…目と同様、眠そうで残念な感じである。

 少しダボっと過ごしやすさ重視の様で白と黒が上手く共存した様な服、腰には立派な装飾の剣をさしていた。


「…。」


「…いや、お前が誰だよ!?」


 青年が謎に黙り、初見2人でこの静かな空間が気まずかった。シャーロット加入で疲れていた事。

 それらが関係して僕は普通に、心の中の言葉でツッコんでしまった。


「っえ?あ〜…そうそう、君が約剣(エクスカリバー)君?悪いけど、口にするとやっぱり凄い名前だね。」


 寝てた?少ししフラっとしてそんな反応の青年。


 いや、そんな事より…


「グフっ。名前の事には…。」


 悪気なさそうな言葉に僕はすっごいダメージを受けた。

 なんだかんだで言って、中二病行動全般よりも名前に触れられる事が一番痛いのである。


「ん?悪い悪い。そんな事より、俺はアルゴン。剣を持っているし一様剣士だね?」 


 自分の事だが謎に疑問形のアルゴン。

 眠たそうな陰キャ顔で陽キャバリのキラキラ爽やか笑顔を僕に向け、手を差し出してきた。

 この笑顔…陰キャの僕は浄化されてしまいそうだ。


「そうですか、よし!パーティーの申請書はこの私がやっておきましょう。今日はもう遅いのでクエストを受けてみるのは明日にしましょうか。明日の朝8時頃ここに集合でお願いします。」 


 浄化されかけ手を握るまでいけない僕を見かねたのか、いつから見ていたのかも分からないシャーロットが横から入って来た。

 入って来たと思うとアルゴンと握手をし、電光石火の早業と言わんばかりのテンポでアルゴンのパーティー登録をしに行ってしまった。


「あれ、俺の意見は?…まぁ、別にいっか。じゃあそれで。」


 僕と同じくアルゴンも呆気にとられていたが、少しするとまたさっきの笑顔と共に手を振ってどっかに消えて行ってしまった。

 そして流れで今日は解散。

 アルゴンがそこそこ強くて、高ランククエストを受けれてお金を沢山貰えたりしないかなぁ…。

 僕はそんな事を胸に抱きつつ、帰路についた。




―翌日―


「…あの〜シャーロット、アルゴンは?」


 今のタイムはちょうど8時。集合時間だ。

 初のパーティーでのクエスト、アルゴンにとっては初の集合にあたる。大抵、いや普通、そんな時に遅刻はありえないと…。

 昨日のアルゴンは相当眠そうだった事もあり、未だ全くその姿が見えず僕は色々と違和感を覚えていた。


「まだ来ていないだけですよ!きっと…。」


 口調は強気と言うか気にしていないと言う様なシャーロット。

 だが直ぐに時計を見て周りを見渡してをしており行動はかなりソワソワしていた。


「そう言えば…昨日、アルゴンさんは眠たそうな顔をしてましたね…。」


「あぁ、だが解散が」


「はい、早かったですから…。」


 顔を見合わせて、悩んで…。

 僕に影響されたのかシャーロットも、もうけっこう心配が出てきてしまっている。


 う〜ん、パーティー加入初日での遅刻…。

 まさか、シャーロットに引き続きヤバイ奴を入れてしまったりは…。


グゥ〜


 僕がアルゴンについて思考を巡らしまくっていた時、隣に居た人からそんな音がなった。


「……すみませんね。あの〜…ひとまず朝ご飯を食べません?」


 シャーロットは少し葛藤してから自分である事を認め、下を向き恥ずかしがりながらも開き直ったのか、僕をご飯に誘った。


「あぁ、そうだな。」


 昨日は解散が早かった。つまり、ギルドを出たのも早かった。

 ギルドで提供されるご飯は他と比べて安く高カロリー、ここで食べるしかない。

 必然的に僕の昨日の夕御飯は早かったので僕もお腹が減っており、何より女子から食事の誘いである。

 断る理由などなく、一旦はアルゴンを忘れ、朝食となった。




―30分間後―


「ご飯美味しかった。…で、アルゴンは?」


 時間帯的に人は少なく注文、料理の到着はスムーズで30分で満足に食べれてしまった。

 そしてやる事も特になくなり…が、アルゴンの姿はまだないのだ。


「私に言われましても…。そうですね、アルゴンさんが泊まって居る宿は近くだと思いますので、探しに行きます?」 


 シャーロットは心配を通り越してしまった感じのだ。暇ですし…。そんな、感じである。


「…まぁ、そうだな。」




―そして1時間が経過―


 僕らはアルゴンを探しギルドを中心に20件程も近場の宿屋を探したのだが、成果はゼロだった。

 それどころか、青年って感じで銀髪で黒と白っぽい服を着て剣を持っていて…あ、見ていない。あ〜…。

 アルゴン目撃情報すらもゼロ。


「モンスターに襲われたとか?」


 シャーロットが冗談なのか本気なのか、アルゴンについての憶測を飛ばして…僕らはギルドへ戻っていた。

 と言うか、モンスターに襲われて来られないとしたら、荷物持ちのシャーロット自身である。


「お金がなさ過ぎての路地裏とか…?」


 細道を大通りからチラッと見えただけでのこの発想。またあり得るとしたらシャーロット自身だ。

 いやもしや、シャーロットは既に経験済みだからそんな事が思い浮かぶのでは?


「思いつきませんね。ギルドに居てくれれば良いのですが…それはそれで問題ですね。大遅刻ですし。」


 流石にこの時間になって居るってことはないない!

 僕らは互いに笑いながらギルドのドアを開けた。


ガチャ


「…。」


 ギルドに入ると僕は驚いて固まってしまった。

 アルゴンは食堂でかなりのお皿が重なっている机に1人座っていたのだ。

 あれ…アルゴンだよね?双子の片割れとかじゃなくて。

 シャーロット、説明をプリーズ。

 

「え〜と…。」


 何でもいい。とりあえず無理にでもこの状況を理解しようと適当な説明欲しさにシャーロットの方を見ると、シャーロットは僕以上に驚いている様だ。

 ギルド内にある時計を見てアルゴンを見ての行動だけを繰り返していた。


「…あ、やっと来たな。おい、お前ら遅すぎるだろ!」


 アルゴンはこちらを見つけると、ギルドの職員さんにご飯代のお金を渡すとこちらに来て、睨みつけてきた。


「いや…あの〜…アルゴンさん、今日何時集合だったか知っています?」


 シャーロットは固まってしまった口を無理無理に動かし、本当に脳を共有せずに作った言葉を言っている感を出している。


「え、朝の9時半だろ!」


 アルゴンは完璧だろ!と。流石だろ!と。

 褒めてほしそうな子供のように自信満々に高々と言った。


「…っは!?」


 そんな謎に輝いていたアルゴンの目に、状況が分かっていないながらも僕は頑張って声を出した。


「…あなたは…何を言ってんですか?今日は8時集合って言いましたよね…?」


 未だこの状況にシャーロットも口が上手く回っていない。

 驚いた顔にもならない困惑顔で僕を見ながら、恐る恐る同意を求めてきた。


「…あぁ。…言っていた。」


「え!?、マジ?」


 僕が一生懸命に首をコクコクと縦に振り、シャーロットと共にアルゴンを見つめると、アルゴンは素直に一瞬にして堂々雰囲気を止めた。

 さらにアルゴンの質問に2人して頷いた。


「マジか…。ごめん。」


 今日も眠たそうなタレた目を今は大きく開くと、普通にやってしまったと、驚く顔を見せた。

 目をパッチリ開いた顔は普通に美形のイケメン野郎と言う感じだ。


「あの〜…何をどうすると、8時を9時半と聞き間違えるんでしょうか?」


 アルゴンがあっさり間違えを認めたため、シャーロットのそれは理由を求める感じではなく僕と感情を共有したいと言う様な質問だった。


 だが残念ながら僕とシャーロットの感情が一致する事は今はなさそうである。

 シャーロットの一言を聞いて僕は思ってしまったのだ。

 アルゴンって、()()()()()()()()()色々と駄目なタイプなのか?と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ