第15話「厨二病、侵入者になる。」
「馬車はこの森に隠しましょう。」
コメスさんが言った。
「じゃあ〜4人、副隊長の貴方と、貴女と、貴方と私達が3番隊では侵入メンバーです。 貴方は馬車に居て下さいね〜。」
馬車を森に入れ終わった時にマヒナさんが騎士団の人達にそういう指示を出した。
「ちゃんと隊長だ…。」
マヒナさんの行動を見てアルゴンがそう言った。
僕も流石に隊長さんだな〜と思った。
「当たり前な事ですよ〜。」
アルゴンのそれを聞いてマヒナさんはニヤッと笑いながらそうアルゴンに言った。
…ホントにアルゴンとマヒナさんは性格が似てるな。
アルゴンも良くシャーロットにソレをやってるし。
「隊長、行きますよ。」
そう副隊長さんがマヒナさんに言う。
「…アルゴンも行くぞ。」
僕もそうアルゴンに言った。
マヒナさん、隊長だと思えたけど…ホントに隊長なのか分からななってきたな…。
大丈夫か?
そんな事を言いつつも屋敷の方に向かって行く。
「今は…8時45分。 ではこの辺で軽く作戦を立てましょうか。」
コメスさんはそう言って僕がオリビアから貰った地図を取り出した。
ちなみに僕は、そんな大事な物を持っていたくなかったのでコメスさんに預けていた。
「監視は40人ということですが…。」
地図に監視、40人とオリビアがメモを書いていてくれた。
ソレを副隊長さんが読んだ。
「かなり大変そうですね〜どうしましょうか〜?」
マヒナさんがそう言う。
40人、どれくらいの大きさの屋敷にシャーロットが居るのか分からなかったが、この屋敷の大きさはサッカーのコートくらいで、2階建て。
そう考えるとかなりの密度で監視が居ることになる。
アリナさんだよりになるのか…。
「コメスさん、アリナさんにお願いします?」
僕はコメスさんにきく。
まず、騎士団の人達にアリナさんを見せてよいのかの判断が難しかった。
ベルガさんの時は宗教も関係しているとはいえ、かなりヤバイ魔法をベルガさんがぶちかましたし…。
「ソレについてです。 アリナさん。」
コメスさんはそう言ってアリナさんを呼んだ。
「は〜い。」
そして出てくるアリナさん。
「え!?」
と、副隊長さん。
「は!? 誰!?」
と他の騎士達。
「わぁ〜マジですか〜?」
と、驚きながらも呑気なのはマヒナさんだ。
何で今も呑気でいられるんだよ…。
「彼女に協力してもらいます。」
そう言うコメスさん。
絶対騎士団の人達…理解してないだろ。
「理解し無くてよいで〜す。 作戦だけ聞きましょうか!」
そう騎士団の人達に言ってくれたのは隊長のマヒナさんだった。
マヒナさん、流石だけど…流石の隊長魂だけど…今はどんな事を考えてるんだ?
「彼女に監視の場所を教えてもらいます。」
そうコメスさんが言った。
「了解です。」
そう副隊長さんが言った。
アリナさんについての理解は…してなさそうだな。
ひとまず、考えるのを止めた感じだな。
「アリナさん、軽く見てきてもらっても良いですか?」
「はい。」
コメスさんに言われてアリナさんは透明になって屋敷の方に行ったようだ。
少ししてから。
「監視の数は見た感じ20人でしょうか。ちょうど交代の時間のようです。」
アリナさんが戻って来てそう言った。
「おそらく…裏門から入ればバレなそうです。」
アリナさんからの情報で僕らは裏門に回る事になった。
ちなみに、アリナさんが偵察に行っている時は不思議とアリナさんに対する質問が無かった。
おそらくコレは皆完全にアリナさんに対する考えを止めたということなのだろう。
シャーロットが戻ったらこの隊と一緒に魔王城まで行くんだけどな…。
「ここですね。」
コメスさんがそう言って門を開いた。
「何で誰も門に居ないの?」
アルゴンがアリナさんにきいた。
いや、アリナさんにきいても分からないだろ、僕も気になる事だけど…。
「ですから、ここを担当していた人はさっき交代で別の所に行ってしまったんですよ。」
アリナさんが普通に答えてくれた。
…それで良いのか公爵家。
だから前にシャーロットに逃げられたんだろ。
「では行きましょ〜かー。」
マヒナさんがそう言った。
何かの映画みたいだな。
あー、アニメとか映画とかスマホとか…映像が恋しい。
「では少し見てきます。」
アリナさんはそう言って飛んでいった。
「このまま、真っすぐに行けば本館に入れます。監視はちょうど大丈夫ですよ。」
アリナさんは直ぐに帰って来て僕らにそう伝えてくれた。
おそらくこの感じでシャーロットが居る部屋まで行くようだ。
「と言うかアリナさん。」
そんなに大きくない声で副隊長さんがアリナさんに話しかけた。
「何でしょうか?」
そう答えるアリナさん。
「私達はこうやって頑張って公爵家に侵入してますけど、アリナさんがシャーロットさんと合流して2人で脱出するほうが早くないですか?」
副隊長さんからはそう皆がハッとするような、僕らが今やっていることがバカバカしく思えるような質問が出て来た。
「…それはちょっとね…。」
アリナさんは何かを隠しているようにそう言った。
「理由でもあんの?」
そうアルゴンが言う。
「はい…少し…。」
アリナさんはそう答えたが、副隊長さんの案でも問題はないみたいな感じだな。
「まぁ色々とあるんですよ〜、乙女には〜。」
そうマヒナさんが言う。
この人は何か勘がいいのかな、理解したような感じだけど。
「ふーん。 まぁいいや。」
そうアルゴンは言った。
「もう少しなんですけどね…。」
アリナさんが言う。
そう、もう少しでシャーロット居る部屋に着くらしいのだがそのもう少しが長い。
「監視の人が多すぎですね。」
そう、交代の時間だか何だかでここまでスムーズに来れていたが、シャーロットの部屋付近は流石に監視がちゃんと着いている。
「じゃあ…私達が注意を引くんですよ〜。」
そうマヒナさんがまさかの言葉を言った。
「隊長!?」
副隊長さんが焦っている。
「勇者様以外は〜それで行けば勇者様はシャーロットさんの所まで〜行けます! アリナさんは案内でお願いしますね〜。」
そう言い張るマヒナさん。
「え!? いや、マヒナさん!? 俺も勇者パーティーだし…。」
アルゴンも焦ってマヒナさんにそう言い出した。
「行きますよ〜!」
が、マヒナさんは止まらない。
天然の人って…こういうのがあるから怖いよな。
「侵入者で〜す。」
そう言ってシャーロットの部屋の前の廊下を駆け抜けて行く。
「…勇者様、頼みましたよ!」
コメスさんが僕にそう言って、アルゴンの服を摘んでマヒナさんとは逆方向に走る。
少し行ったところでコメスさんはアルゴンを離した。
マヒナさん以外の騎士団の人達も注意を引くように走り出した。
「あ!?… アルゴンさんが捕まりましたね…。」
アルゴンはコメスさんに離してもらって一瞬で監視の人に捕まった…。
「…シャーロットさんの居る部屋まで行きますか…。」
アリナさんはアルゴンが捕まったのを見なかったことにして僕にそう言った。
うん、僕も見なかったことにしよう!
「あそこです。」
マヒナさんが走って行った方向に進んで行くと、豪華なドアが見えて来た。
ガチャ。
そうして僕はそのドアを開けた。




