第11話「厨二病、先生をやる!?2」
朝が来た。
今日は先生最終日だ。
夜逃げは流石にしなかったけども…どうしよう?
今日中にオリビアお嬢さんに魔法を使えるようにしてあげないとどうなるか分からないから。
何故なら相手はこの国で国王に次ぐ権力者の公爵家だからだ。
「憂鬱だ。 何かの間違えで魔法が使えるようになっててくれ〜。」
ガチャ。
ひとまずはご飯を食べることにした。
今日は10時頃に来てくれと言われていたので、ご飯を食べてどうするかをかなりマジで考えたらちょうど良い時間だ。
「約剣おはよう。」
今日は食堂に降りるとコメスさんではなくてアルゴンが居た。
「ここのご飯美味しいね〜。」
そう言うアルゴン。
何か昨日のコメスさんと同じくらい食ったのじゃないか?
テーブルの上にはかなりの量のお皿があった。
「どんだけ食べたの?」
気になってそうきいた。
「まぁ、そんなには食べて無いけど…。」
そう言うアルゴンだが、絶対に嘘だな。
「まぁいいや、約剣は今日なんか用事でもあるの?」
昨日本当に外で何かしていたか分からないアルゴンが僕にきく。
「もちろん、公爵家で用事があるんだよ〜。」
僕はそう答えた。
「へ〜、頑張ってね〜。」
そうしてアルゴンは部屋の方に戻って行った。
僕も何か食べようか。
そんなに僕は朝から沢山食べる派では無いのでサラッと少しだけ頼んだ。
「ありがとうございました〜。」
僕が朝ご飯の注文はラストだった事もあり、宿の店員さんはそう言ってくれた。
僕はラストレイ公爵家に向かいますか。
この宿からラストレイ公爵家までって、結構時間がかかるんだよな…。
着くまでにオリビアお嬢さんが魔法を今日中に使えなかった時のために何か言い訳でも考えないと。
ただ本当にどうにかなっててとしか考えられない。
「あ、勇者様! 進捗の方はどうですか?」
ギルドの前を通った時に受け付けのお姉さんに声をかけられてしまった。
「あ! 時間は大丈夫でしたか?」
一応時間を心配してくれる。
「まぁ…。 進捗は至って順調さ。」
そう強がって答える。
マジでごめんなさい、ラファルク王国の4番隊隊長のベルガさんを何とかして呼んで下さい。
「安心しました。 プレッシャーがかかると思い昨日は言いませんでしたけど、コレを失敗してしまうとアルソフィナ王国支部は潰れるかもでしたので…大丈夫なようでとても安心です。」
!?
今その情報を言うの!?
マジ…今からホントに逃げるか?
ラファルク王国まで行ければ殺されは…あ、駄目だ。
ラファルク王国の国王様に仲間を助けるために一旦勇者を辞める的な事を言って来ちゃったんだ。
何か許されたぽいけど、仲間を連れ戻せないわ何か帰って来るわでラファルク王国に今行ったらあっちでもぶっ殺されるな…。
「…絶望ですね。ハハ。」
小さな、誰にも聞こえない声でそう言った。
「どうかしました? まぁそれよりも頑張って下さいね〜。」
そう言ってお姉さんは僕を見送ってくれた。
トコトコトコ。
色々と考えながらラストレイ公爵家に歩いて行くが、やっぱり何も思い付かない。
ついに着いてしまった。
「昨日の家庭教師様ですね。 どうぞ、お入り下さい。 オリビアお嬢様がお待ちです。」
そう言って門番さんは僕を今日はすんなりと入れてくれた。
いや〜、ここで時間を潰せたら最高だったのに…。
マジで終わったかもしれん。
コンコン。
公爵家の敷地内に入ってしまった以上ウロウロするわけにもいかず、ドアをノックした。
「は〜い。」
また今日も執事さんの声のようだ。
「家庭教師の約剣だ!」
ガチャ。
ドアが開く、もうどうにでもなってしまえ!
「!?」
僕はドアが開いて中の景色を見た瞬間に固まってしまった。
「よう先生、昨日しぶりだな!」
そこには左目に眼帯を付けて変なポーズを取っているオリビアお嬢さんらしい人が立っていた。
「へぇ??」
それしか出て来ない。
「オリビアお嬢様、人前では…」
そうタジタジしながら言う執事さん。
「何を言いますか? 先生の前ですよ!」
オリビアお嬢さんはそう堂々と答えた。
…うぉ〜厨二病期入りました!!
僕のせいで!
オリビアお嬢さんのお母様、お父様…申し訳ありません。
僕はオリビアお嬢さんに案内されて昨日とは違う部屋に入った。
「昨日の部屋は?」
その言葉遣いとか、格好とか色々と突っ込みたい事はあったが、まずはそこをきいた。
「昨日先生に言われた事を考え、理解し魔法を放ったら私の炎の前に燃え去ったのだよ。」
そう答えるオリビアお嬢さん。
来ました、確定演出。
完全に厨二病入っちゃいました。
「先生のおかげだ!」
まぁ…魔法を使えるようになったのはとても良かった。
死なないですむし。
「そう…そう言えば何で魔法を使えるようになりたかったんだ?」
安心したらそこが気になり出してしまった。
貴族の人に平民から質問するのは失礼だったような気もするが、何か僕を先生と慕ってくれてる今なら大丈夫なような気もした。
「あぁ、それか…。 実はお姉さちゃんが私には居まして…そのお姉ちゃんが魔法は凄いとかを言っていたので私も使えるようになりたいなと思ったまでです! …までだぜ!」
完全に長文は厨二病言葉で言うのはまだ難しいのか、オリビアお嬢さんはそう僕に答えた。
そのお姉さんは魔法を見たことがあるのか?
…まぁ考えれば公爵家の長女って事に当たるのかその人は、じゃあ魔法を見る機会もあるわけだ。
「色々とあってお姉ちゃんはもうすぐ居なくなっちゃうので…その前に沢山褒めてもらいたくて。」
ションボリした感じになってしまった…。
「そうか…。」
普通にごめんなさい。
多分、病気か何かなんだろうな…。
「お姉ちゃん、もうすぐ結婚するらしくて〜。」
ズコー。
そういう事かよ。
そう言えばライアンは元公爵家勤めで結婚が何だで辞めさせられたって言ってたな。
ここに勤めてたのか…。
「今日はお礼が言えれば良かっただけだから、まぁこれで帰って良いぜ! お金はギルドに振り込んでおこう!」
もう帰ってよいの?
「執事! 先生を門まで送って差し上げなさい。」
「はい。 了解しました、お嬢様。」
ガチャ。
そうしてドアを開ける。
「そうそう、アルソフィナ王国内で何かあったらこの私が力になってやろう!」
そう部屋を出る時にオリビアお嬢さんに言われた。
まぁ…アルソフィナ王国内で何も無いことを祈るよ。
「thank youカッコを付けてそれだけ言った。」
ガチャ。
「お嬢様のあの言葉遣いには困ったものですよ。」
そう言って執事さんは僕を見る。
やっぱり僕かよ…申し訳ないとは思うけど…。
「…本当に申し訳ありま」
そう僕が言いかけた時に、
「いえいえ、元々2日間で魔法を覚えさせてくれというムチャな依頼。 お疲れ様でした。」
以外にも執事さんはそう僕に言ってくれた。
「では、ここで。 ありがとうございました。」
執事さんにそう言われながら僕は公爵家の敷地を出た。
何とかなった!
かなりの気分は上がり、ルンルンで宿に戻っていた。
「勇者様!」
ギルドを通った時に、待っていましたよと言わんばかりにギルドの受け付けのお姉さんが声をかけてきた。
「依頼達成の報告が来ていました! 本当にありがとうございました。」
とまずは言われ、そこから
「ひとまずは中に来て下さい。」
で、ギルドの中に入りでかなりの時間、ギルドの中で話を聞いていた。
お礼やら、愚痴やらホントに色々だ。
「勇者様! 本当にありがとうございました。」
最後までそうお姉さんは言ってくれていた。
コメスさんに言われた集合時間までまだかなりの時間があったので良い時間潰しになった。
ガチャ。
「お帰りなさいませ〜。」
そう宿に入ると店員さんが出迎えてくれた。
「今は…4時45分。」
ちょうど良い時間だ。
どんな情報が集まったのか、少し緊張をしながらコメスさんの部屋に入る。
そこにはコメスさんにアリナさん、アルゴンも既に揃っていた。
「では、この3日間で集まった情報を伝えましょう。」




