第9話「厨二病、クエストを受けてみる。」
朝、ご飯の時間になったので食堂に降りていく。
昨日の夜は特に何も食べなかった。
というか、夜に食べなかったが、ライアンと一緒に市場に行った時に結構何かしらを買ったりして食べていたので、ご飯の時間にはお腹が空いていなかったからだ。
「あ、勇者様。 おはようございます。」
と、食堂に入るとコメスさんが声をかけてくれた。
「あぁ。」
そう答えてコメスさんの隣の席に座った。
てか…コメスさん、潜入する的なことを言っていたけど、今ここに居ても良いの?
やっぱり夜とかが1番忍びやすいと思うんだけど…。
夜勤的な事をしていたのかな?
「注文をお聴きしますね。」
そう言って宿の店員さんが朝ご飯のメニュー表を持ってきてくれた。
「何になさいますか?」
そう言ってきいてくる。
今メニュー表を見たんだけど…そんな直ぐに決められるわけが無いじゃん…。
「A定食が私的には1番美味しかったですよ。」
どうしようか悩んでいるとコメスさんがそう僕に教えてくれた。
「じゃあ…A定食で。」
「了解です。 以上ですか?」
結局A定食のみを頼んだ。
コメスさん、「1番美味しかった」とか言ったけど…もしかして全部食べた?
「朝から何個か食べたんですか?」
気になったのでコメスさんにそうきいた。
流石に朝から何個かは食べないと思うけど…。
「えぇ、商人として結構その地方で出る料理に興味がありますので。」
そうコメスさんは答えた。
「流石に1日では全て食べませんよ。 まぁ、半分くらいはいただきましたけど。」
このメニュー表には8つメイン料理が載ってるけど、朝から4つも食べたの?
「美味しければカール商会の方で商品に出来ますからね。 もちろん、許可は取ります。」
そっか、そうやってコメスさんはお金持ちになったんだ!
…いや、流石に朝から4つは食べねーよ。
「そう言えば、アルゴンさんが俺は出掛けるから1人で出かけてくれと伝えてと言ってました。 では、私はまた出てきます。」
と言ってコメスさんはまた出かけてしまった。
アルゴンが出かけてるだと…。
そんな馬鹿な。
てか、僕が昨日トイレで起きた時はまだ帰って来て居なかった(1時頃)から夜勤的な仕事でもしてたと思ったけど…。
もう出かけるの?
ちゃんと休んで下さいよ…ブラック企業的なパーティーを目指してるわけじゃ無いし…。
「ごちそうさまでした〜。」
ご飯はそのままテーブルの上に置いてていいらしい。
今日はアルゴンとどっかに行こうかと思っていたが、アルゴンは出かけているらしい。
どう考えても部屋の外に出たくないだけだと思うが、別にまぁそんなに外に出たくないヤツを引っ張り出すとかはしたくないので…何をしよう?
ギルドって在るんだっけ?
「この国って、ギルドはありますか?」
そう宿の店員さんに質問をした。
「はい、ありますよ。 確か…市場を少し行った所だったかと…。」
そう店員さんはギルドの場所を教えてくれた。
ギルドをひとまずは探すことにした。
ギルドは…あった!
市場を過ぎてから15分くらい探してやっと見つけることが出来た。
ラファルク王国やクメシアルにあったギルドと比べると…何故かかなりちっちゃい。
日本の大都市にあるちっちゃなコンビニくらいの大きさくらいしか無い。
ガチャ。
「こんにちは〜。 冒険者さんですか?」
ギルドに入るとキラキラした顔で受付のお姉さんがそうきいてきた。
「あぁ。」
「本当に冒険者様? 何のクエストを受けますか?」
冒険者だと答えた僕に受け付けのお姉さんはすっごい食い付いてきた。
てか、クエストは自分でボードから取るんじゃなかったけ?
最近ギルドの中には入らなかったからそんなには覚えてないけど。
「おっと、その前に名前とランクの確認でしたね。」
忘れていたと言わんばかりにお姉さんはそう言い直した。
こんなに何故か期待してるよみたいな顔をされてるけど…ランクはEなんだよな…。
言いづらいな。
「えっと…ランクはEです…。」
「そうですか…。」
Eランクだと答えたらやっぱりがっかりされたみたいな答えが帰って来た。
「え〜と…お名前は?」
お姉さんはがっかりしたが、そう言ってきいてくれた。
「僕の名前は約剣です…。 職業は一応、魔法使いです。」
がっかりされてる上にカッコをつけるのは良くないと思い、そう普通に答えた。
「約剣さん…もしかして、勇者様ですか!?」
僕の名前を聞いたお姉さんはそう大きな声で言った。
勇者ということを知っているなら厨二病言葉で答えた方が良かったか?
「…あぁ、その通りだ!」
気を取り直して厨二病言葉を使った。
「始めまして! 何のクエストを受けられます? 可能でしたらコレをお願いします。」
そう言ってお姉さんは1枚のクエスト用紙を僕に渡した。
「ギルドへ急遽ですが、魔法の先生を今日と明日限定でお願いします。 ラストレイ公爵家!?」
「はい…公爵家からのご依頼なんです。」
なんとそのクエストは公爵家からの依頼だった。
そんな偉い貴族からの依頼なんて嫌なんだけど…。
「絶対?」
そう嫌だと軽く伝えた。
お姉さんは目をキラキラさせていて、そんな強くは断れない雰囲気だし…察して下さい!
「実は…」
そうお姉さんは何かくらい雰囲気を出して話し始めてしまった。
「実はアルソフィナ王国ではギルドは肩身が狭く、この依頼を拒否してしまうと…と言う所に約剣様が来てくれたのです。 お願いできませんか?」
その頼み文句はズルいじゃん。
僕には断れないって、
「無論、受けてやる!」
「ありがとうございます!!」
お姉さんお顔がパァーと明るくなる
言っちゃった…。
「それでは早速ですが、ラストレイ公爵家に向かって下さい。 行き方は…分かります?」
もちろん、分からない!
そもそもそのラストレイ公爵家がどんな貴族なのかも分からない。
首を横に振った。
「そうですか…どうせ誰も来ないでしょうし私がご案内しますよ。」
どうせ誰も来ないって…まぁ、という事で公爵家までは受け付けのお姉さんが案内をしてくれる事になった。
「公爵家まではここから30分程ですね。 歩きで良いですか? 予算の問題で…恥ずかしながらアルソフィナ王国支部には馬車は無いんですよ…。」
まぁ30分くらいなら歩きでも別に問題はない。
てか、そんなに予算がないの?
このお姉さん以外にギルドで人を見てないし…。
「聞いて下さいよ〜。 愚痴を。」
とかを歩いている内にお姉さんは言い出してしまった。
「このアルソフィナ王国にはどんなにお金を持っていても、どんなに有名な冒険者様でも、Aランクの方だとしても全く地位は高くなくてですね。」
そうなんだ…聞いてはいたけど思っていた以上の貴族国家なのかもしれない。
「そのせいで結局は強くて有名になってチヤホヤされたい冒険者の人達は来ないんですよ。 勇者様が来てくれて本当に良かった。 流石、勇者様ですね!」
まぁ、チヤホヤされたい人達が冒険者をやるのはイメージ出来るけど…流石にね、そこまで言わなくても…。
「まぁ…アハハ〜。」
男ってそんなもんじゃん、男性を無意識に否定されたきがしてそれしか言えなかった。
「着きました! ここが、ラストレイ公爵家です。」
そう姉さんは言った。
確かにデカくて豪華な豪邸だ。
「何か用か!!」
公爵家の門の前でスゲーとかをやっていたら、門番がそう言って剣を突き立てて来た。
「あの〜ギルドの依頼で来たのですけど…。」
そうお姉さんは前に出て説明をしてくれた。
「その少年が? 君、魔法は本当に使えるんだろうね?」
そう門番は言ってくる。
「炎よ、俺に力を、ファイヤーボール!!」
ボワッ。
説明が面倒くさいので魔法を見せることにした。
タウンで伝説の剣を抜いていたら人目で勇者だと分かってもらえてたのかな?
まぁ、結局見せかけの伝説の剣じゃなくてミスリルの剣をゲットしたから後悔はそんな無いんだけどさ…。
「おぉ。 コレは失礼しました。どうぞ、お入り下さい!」
そう言って門番の人は僕を中に入れてくれた。
ここの警備…これで良いのかよ。
魔法が使えたら犯罪者でも入り放題なんじゃ…。
…僕には関係無いな。
「勇者様〜頼みましたよ〜! 無事終わったらギルドに来て下さいね〜。」
そう言って受け付けのお姉さんとはそこで別れた。




