第7話「厨二病、作戦を立てる。」
「ここの宿で良いですかね。」
コメスさんはそう言ってある宿の前で止まった。
馬車はこの街の馬車置き場みたいな所に置いてきた。
お金を払ったし、警備員みたいな人が居たので何か物を取られるとかの心配は無いと思う。
「そうですね。」
カラン。
そうドアを開けると音が鳴った。
「いらっしゃいませ〜。」
そう店員さんは言ってくれた。
「宿泊ですか?」
「はい、そうです。」
店員さんとコメスさんが会話をする。
「失礼ですが…御貴族のお方々でございますでしょうか?」
急に店員さんはそう僕らに質問をしてきた。
「いいえ、違いますがお金は十分にありますよ。」
「いえ、お金の問題では無いのです。 改めましていらっしゃいませ。話が逸れてしまいましたね。 さて、何日のご予定でしょうか?」
そう店員さんは言った。
貴族か、平民かで何か値段とか変わるのか?
僕らが貴族ではないと分かっても対応の仕方が変わらなかったから…何だろうな。
「まず3日で、それから延長は出来ますか?」
「はい、出来ますよ。ただ…」
僕らはひとまず3日はここに泊まるらしい。
てか何で店員さんは「ただ…」と言ったんだ?
何かあるのか?
「大変申しにくいのですが、貴族の方がいらっしゃった時には別の宿に移動して下さい。」
何か良くわからないことを言ってきた。
貴族がどんなに偉くても、流石にそんな事をする必要があるのか?
それともあれか、貴族は「平民と同じ空気を吸いたくない。」とか言う奴らなのか?
「はい、構わないですよ。」
コメスさんはそう答えた。
貴族が来るかわからない、いつ追い出されるかわからない宿に泊まるの?
「ありがとうございます。他に何かご要望等はありますか?」
そうすみませんみたいな顔で店員さんは言った。
「防音がしっかりした部屋はありますか? 最低限、1部屋でも良いですが。」
コメスさんはそう店員さんに言った。
作戦とかを立てたりするからそこはやっぱり必須だ。
「ございますよ。 と言うか、アルソフィナ王国内の宿では防音のしっかりした部屋、それが常識になっております。」
そうなんだ、こっちとしては嬉しいけど…何でだ?
タウンとかスモールシティとかでは壁は薄くはなかったけど完全な防音では無かったから、アルソフィナ王国だけでの常識だろう。
「部屋の中くらい、貴族に大して言いたいことを言う人が多いので。」
僕らが何でだろうという顔をしていると店員さんは口を耳に寄せて小さな声でそう言った。
そういう事か…。
「では、料金は3日なので4万ピソになります。」
4人で3日間4万円…4万ピソ、防音がしっかりしてるのならかなり安くない?
ちなみにアリナさんの分もちゃんと取った。
「4人分ですか? 3人ですよね…後から誰か来るとしても値段は変わりませんよ。」
と、店員さんは困惑していた。
「階段を登ってすぐの部屋、201から204までをお使い下さい。 ご飯は朝が7時から8時、夜は6時から7時です。」
そう言って店員さんは鍵を渡してくれた。
「この3日間の予定を伝えますので勇者様、とアルゴンさんは荷物を置きましたら直ぐに私の部屋に来て下さい。 アリナさんもお願いします。」
そうコメスさんは言って204号室に入って行った。
僕は言われた通り荷物を置いていた直ぐにコメスさんの居る204に行った。
「コメスさん、何をしてるのですか?」
部屋のドアを開けるとコメスさんは所々部屋を見回していた。
ソレのせいでアリナさんが困惑していた。
「いちよう、防音の確認ですよ。」
コメスさんはそう答えた。
「では早速ですが、アリナさんには色々な貴族の屋敷を回りまくって下さい。 もちろん透明で。」
そうコメスさんはアリナさんに言った。
どうやら、やることをここで指示するらしい。
「私も色々な所に忍び込んでみます。」
コメスさんも忍び込むの?
アリナさん1人で十分だと思うけど…。
「勇者様とアルゴンさんは適当にこの国の中を歩いて、国の様子などを確認したして下さい。」
僕らにはそう言った。
アルゴンはガッツポーズをしてるよ…。
ずっとダラダラする予定だな。
「そうですね…騎士団の方々が到着する1日前、2日後の5時にまた私の部屋に集合して下さい。 それまでは各自で調査をしていて下さい。」
コメスさんがそう言ってその場を解散した。
そのままコメスさんとアリナさんはもう外に行くと言う事だったので、僕も外に行ってみる事にした。
ちなみに、もちろんアルゴンは部屋に速攻で戻った。




