第15話「勇者、幽霊を見る!?」
「ひと先ずは朝ご飯を市場にでも食べに行きませんか?」
そうベルガさんがお店を出て、この後どうするんだよという空気が漂っていた時にシャーロットがそう話を出してくれた。
「そうだね。 かなりお腹も空いたし。」
そう言うアルゴン。
僕もこれに同意をしたということで市場みたいな場所に3人でご飯を食べに行くことにした。
「確か、アルさんがクメシアルは少し危ない事もあるので気を付けて下さいと言っていたので…気を付けましょう!」
そう市場に向かう途中にシャーロットが言った。
確かに…アルさんはこの世界の国々を説明してくれた時にそんな事も言っていたような気がする。
確か、奴隷か何かだった気がするけど…。
まぁ、多分大丈夫じゃ無い?
奴隷って言っちゃうと悪いけど、孤児とかの人がなるイメージだし、3人居るなら多分。
アルゴンがフラフラっとどっかに行かないように見張っていないとな…。
「シャーロット、アルゴンを見張ってて。」
僕はシャーロットにそう言った。
アルゴンは結構、どっかに適当に行って寝てたりするから少し不安だし。
「何でですか?」
そうシャーロットは僕の言葉を聞いてすぐは疑問を口にしていたが、少し経ったら理解出来たようで、指をグットの形に親指を立てた。
「分かってますよ。」
と笑顔でシャーロットは言った。
そうしている内に僕ら3人は市場に着いた。
「何が食べたいですか?」
そう聞くシャーロット。
結構、出店的な物が多くて食べる者にかなり悩みそうだ。
「焼串かな。」
そう言うアルゴン。
「串焼で良いのですか? もっと量のある物を食べると思っていました…。」
そう言うシャーロット。
確かに僕もアルゴンはもっとお腹がいっぱいになりそうな物を食べると思っていた。
「いや、コレを食べながらもっと食べるの!」
そう答えたアルゴン。
シャーロットのは結構小さな独り言のような物だったが、しっかり聞いていたようだ。
「コレを2つ下さい。」
そう言って串焼の出店に買いに行くアルゴン。
「はい、2つで400ピソですね。 まいど!」
そう言って店主さんはアルゴンに串焼を2つ渡した。
大体この世界のお金の物価は日本とほとんど同じくらいと思っていたが、串焼2つで400ピソなら安いな。
「美味しそうですね。」
そう言ってアルゴンに話し掛けたシャーロット。
確かに香ばしい匂いがして良い焼目も付いていてかなり美味しそうだ。
「…あげないよ。」
シャーロットの言葉にアルゴンが反応した。
別にお前のを取りはしないって。
アルゴンがさっきは食べ歩き的な事を言っていたが、やっぱり座って食べたいと言い出したのでベンチのある人通りの少し少ない所に来た。
「美味しそう。」
そう言って串焼にかぶり付こうとしたアルゴンだったが、
その瞬間に串焼は空を飛んだ。
「へぇ!?」
そう言うアルゴン。
「幽霊ですか!?」
そう少しビビリ始めるシャーロット。
前にも同じ様な事があったぞ。
だが、その串焼は中に浮いたままだった。
「動物じゃ無い…。」
そう僕は言った。
「じゃあ、幽霊ですか…!?」
結構シャーロットがビビリ始めた。
「いや…幽霊だとしても俺の串焼返せよ。 約剣、魔法でドカーンだ!」
そう言うアルゴン。
いや、ドカーンじゃ無いよ。
そしてホントに幽霊だとしたらベルガさんの使った魔法、つまり僕の使う攻撃魔法とは少し違う種類の魔法を使わないといけない。
が、僕には出来ない。
「僕はベルガさんの使った幽霊を倒す魔法はつかえないけど。」
そう答えた。
「…死ね〜幽霊!」
そう言って剣を抜くアルゴン。
食べ物の恨みは怖いな。
なんて言ったって、普段は剣を抜いて戦おうとしないアルゴンが剣を抜いた訳だし。
「幽霊だとしたらどうしましょう…。 動物だとしてもアルゴンさん、あなたじゃ倒せそうにありませんけどね。」
ビビリつつもアルゴンにお前じゃ何も倒せないと軽く煽るシャーロット。
いや…お前も何も倒せないだろ、荷物持ちだし。
「マジで倒すからな。」
そう話を聞かずにアルゴンは串焼に剣を向けた。
何か軽く剣が光ってる気がするんだけど…。
「何かアルゴンの剣、光ってない?」
そう結構マジで光っている気がしたのでシャーロットに聞いてみた
「いや、そんな事は無いですよ。」
そうシャーロットはバッサリと僕の言葉を否定した。
「ちょっ、ちょっと待って、謝りますから!」
だが、アルゴンが剣を突き立てた瞬間、串焼の所に透けている女の子が見えた。
それは、一回見たことのあるような人だった。
服装は砂漠に住んでいる人の格好で、身長は…浮いているから良く分からない。
そして買おから考えるに16から18歳くらいの人だ。
「え…幽霊、マジモンの?」
そう固まるシャーロット。
「え!? えぇ…。」
かなり怒っていたはずのアルゴンもそう言って何か固まってしまった。
「え!? 何なの?」
そう言って出て来た幽霊らしい女の子も2人が固まってしまった状況を見て固まった。
「固まるな! まず、君は誰?」
そうシャーロットにアルゴン、ついでに幽霊の女の子も固まってしまって、話が進まなそうなので僕が人見知りを頑張って声をかけた。
「私? 私はね多分幽霊のアリナだよ。」
そう答える幽霊の女の子。
「君は何でこんな所に居るの?」
多分幽霊とかにも突っ込みたいが、話が進まないので何でここに居るのかを聞いてみる。
コミニケーションは取れそうな感じだし。
僕は始めて会った人とそこまで取りたくは無いんだけど…。
「そうだね、まず少し前の事から話すね。」
長くなるのか…。
「3日くらい前に貴方達、森の中を通って美味しそうなパンを食べていたじゃん。 それを見つけて貰おうとしたのね、パンを。」
…あの時の幽霊騒ぎの正体か!
ベルガさんが何かヤバい魔法を使った時にチラッと見えたのは幻とかじゃ無かったんだ。
「そしたらあのヤバいお爺さん、ヤバい魔法を撃ってきたじゃん。」
やっぱり撃たれたこの子が言うならベルガさんの使った魔法はヤバいやつだったんだな。
「で、何故か君たちに付いて来れたから付いて来て今って訳だよ。」
かなり短縮しやがったな。
何でここに森にいた幽霊が居るのかとか全く分からなかった。
「それで、君は何で幽霊になったの?」
今は別に必要の無い事ではあるが、それがかなり気になってしまったので聞いてしまった。
「えっとね、私は元々今は国の無い場所、そこに住んでたんだけど、革命で死んじゃって…。」
暗い話になってしまった。
聞かない方が良かったかもしれない。
「で、気づいたら幽霊であの森に居たかな。」
やっぱり短縮しやがった。
「あ、あの〜もう少し、しっかり…。」
「ごめん、ごめん。 多分幽霊になったのは殺された恨みからで、何であの森に居たのかは本当に良く分からない。」
そう補足をしてくれた。
「ついでに言うとね、あの森からずっと出られなかったんだけど、あのヤバいお爺さんがヤバい魔法を撃ってからは移動が出来るようになって、何で出来るようになったのかがかなり疑問になって、貴方達に付いて来たの。」
そうアリナさんは言った。
「あのお爺さんさんの前に出たら本当に消されそうだったからあの爺さんが居なくなるまで透明になって隠れてたんだよね。幽霊の身体で攻撃の方法とか分からなくて人に危害を与えた事とか全く無くて、悪霊じゃ無いんだよね。」
じゃあ…ひと先ず悪さをする幽霊では無いのかな?
「…ひと先ず、君が人目に映るとまずいから、もっと人の居なそうなの場所に移動しない?」
そう急に今まで黙りを決めていたアルゴンが話を掛けてきた。
確かにそうではあると、思いシャーロットも連れて別の場所に移動することにした。




