第14話「勇者、普通に不安になる。」
「起きましたね。では、昨日ベルガさんに言われた通りにこの街のギルドの前に集合しましょう!」
そう、僕が起きた瞬間に言ったシャーロット。
ちょっと待ってよ。
ひと先ず、君は何でそうナチュラルに男子の部屋に入って来てんの?
僕もいちよう、年頃の男の子なんだけど…。
「ここのお宿では今日の朝ご飯は無いらしいので、ベルガさんからの説明が終わったらご飯を何処かで食べに行きましょう!」
そう言うシャーロット。
「さぁ、行きましょう!ちなみにアルゴンさんはもう準備をさせていますよ。」
そうアルゴンにも、もう出発する準備を終わらされていると言うシャーロット。
マジかよ、もうこの宿出るの?
僕もアルゴンも文句を言ったが、「クメシアルに置き去りにされますよ。」というシャーロットの言葉を聞いてからは僕も流石にヤバいと思ったのかアルゴンも行動が早かった。
良くも知らない国に置き去りにされるのはちょっとね…。
「お、こんなに早い時間からありがとうございます。」
そう指定されたこの街のギルドの前に行くと既にベルガさんは居てくれた。
ちなみに他の4番隊人達は居なかった。
「ギルドの前でというのもなんですから、場所を移しますか。」
そう行って僕らを別の所に案内してくれるベルガさん。
何で移動をするのにギルドの前集合になったのかは簡単で、どこの街でもギルドの建物の外観は基本的に変わらず、尚且つ見つけやすいからである。
ギルドの前で待ち合わせをしている時、たまにギルドの職員さんが「不審者か?」と聞いてくることもあるが、僕も冒険者カード的な物はスモールシティで作っているので問題は無く待ち合わせを出来ている。
「では、ここで良いですか?」
そう少し歩いた後、ベルガさんと僕らは日本で言うカフェ的なお店に入った。
朝と言うこともあってお店の中にお客さんはかなり少ない。
「まず、昨日お話した事の続きです。」
そう言うベルガさん。
結構、僕らはお置き去りにされるのですか?
「私達は明日だけピンポイントにラファルク王国のお城で用事が入っていてですね。尚且つ、3番隊の皆さんがこのクメシアルに到着するのには早くても後1週間程掛かるらしくてですね。」
そう説明を始めた。
いや、3番隊の人達は何で1週間もここに来るのにかかるの?
多分、タウンくらいの場所の距離なら直線距離で来れば少なくとも3日あれば付きそうだけど。
「何でその3番隊の人達は、1週間も、かかるの?」
そうベルガさんに聞いたのはアルゴンだ。
「アルさんからこの世界の国の事については説明を、したと聞いていますが?」
そう僕らに一旦それについての確認を取ってくれた。
結構、遠い場所にでも居るのか?
「色々とありまして、3番隊の皆さんは今現在ズティア国の南の場所。今は国の無い場所に派遣されていましてですね。」
何か理由は察してくれと言う感じでそう説明をしてくれたベルガさん。
「それは…1週間でここまで来られれば良い方ですね。」
そうシャーロットはベルガさんに答えた。
「ですので勇者様方には1週間、ここで休憩を取ってもらいます。宿は今日の所でよろしいですか?」
1週間の休憩!?
結構うれしいけども…。
やっぱりパーティーの誰も詳しくは知らない国に1週間と言うのは…。
「アルさんからあの大商会カール商会の執事様と仲良くなられたと言うことを聞いています。」
「はい、適度に仲良くはなりました。」
そう言うベルガにシャーロットが答えた。
ちょっと待って、カール商会ってあのが付くほどの大商会なの?
「その執事様からも是非とも何かあったら頼ってとも言われたとアルさんに教えてもらいましたけど?」
本当かどうかの同意を求めてくる。
「あぁ、その通りだ。」
そう僕が答えた。
「ですので、この約1週間で何かありましたら是非ともカール商会の執事様をお頼りになって下さい。」
えぇ…確かにコメスさんは紳士でとても良い人とは感じたけど、普通にただの執事だぞ…。
そんな僕の不安を横目にベルガさんは説明を続けた。
「この商人の国、クメシアルでは私達騎士団よりもこの国の商人産の方が頼りになります。執事様と言っても、カール商会の執事様ならば、普通の商人以上に頼りになるはずです。」
そうしっかりとした理由を説明してくれた。
そして説明を終えた後にベルガさんは
「では、本当に申し訳ありません。そろそろ4番隊の方々と合流しなければ…。 ここまで、ありがとうございました。そしてこれからもどうぞ、頑張って下さい。」
そう言っては店を後にした。
もちろん、僕らも店を出てベルガさんを見送った。
だが…メチャクチャ不安だ。
トラブルメイカーのアルゴンとシャーロットが居て何も起きないのか?
1日中だけ一緒だった人をそんなに頼ってよいのか?
さらにはカール商会の本店というか、場所も知らないし…。
マジで何とかなるの?という不安でいっぱいだった。




