第2話「厨二病キャラって、ここでも続ける感じですか?2」
「勇者様、出発に必要な道具等は既に集めてあります。人員も用意いたしましたので今直ぐに旅に出発できる状態になります。さぁ!」
お爺さんが用意してくれた朝食を食べ終えるなり、僕はお爺さんの勢いに負け立ち上がった。
『何が「さぁ!」なのだろうか?流石にこんなに早く出発させられる様な事はないだろうが…。』
「さぁさぁ!」
「!?!? へ??マジ?」
お爺さんも立ちあがると僕の腕をガッシリロックオンして、出入り口の方へ引っ張ってくる。
本当に急にこんな状況に陥った事。追加でお爺さんのちからが普通では無いこと。
それらの予想外にあってしまったことで僕の脳みそ、体、全てがフリーズして固まった。
「勇者様、さぁ外へ。さっそく、出発ですね!」
「は…い…?」
僕の事はお構いなしに。外へ出されたかと思うと次にお爺さんは僕の事を押し、さらにどこかへ進ませた。
「それでは勇者様、こちらにご用意が。」
理由もわからず少し歩いて行くと古びた荷台に多少荷物が乗っかっている馬車が見えた。
そして馬が2頭繋がれており、本当に今直ぐ出発できる感じである。
『本当にどうにかしなければ…。』
「…随分用意が素晴らしいな。」
とりあえず朝起きてからここまでお爺さんには適切な説明を貰えていなかった。そもそも、会話すらまともな物は出来ていない。
落ち着いてもらうのと、格好いい勇者にまだ村に居てください!そんな事を誰が言い出してくれることを望み、カッコをつけた。
「えぇ、なんせ初めに女神様からお告げが来たのが1週間ほど前でございましたので。」
「そうか…。 ははは…」
村人達が盛り上がる間もないくらいに、お爺さんは馬の様子を確認しながら1言。
カッコ付けが不発に終わってしまった事。
少女はこの人には前もって色々伝えていたくせに僕にはほとんど説明をしなかった事を聞き、僕はただただ静かにはにかむのみだった。
「ここでは仲間も集まりませんので、ここから少し離れた街、スモールシティでお仲間を集めてください。」
「ここは小さな村なのでね…。」お爺さんはお爺さんでそうはにかみ、僕に謝った。
「ははは…。」
『いやいやいや、スモールなんて名前のある街だってそんな変わんないだろ…。』
僕もさらにはにかみ、営業スマイルを見せた。
もうなんかどうでもいいし、今更どうしようもなさそうな雰囲気に諦めていたのだ。
「ご理解ありがとうございます。タング!!」
馬の(体調か何かの)チェックを終えたお爺さんは僕の前に立ち、そう人を呼んだ。
「は、はい!わ、私はタングと言いますです。え〜と…よ、よろしくお願いします。」
お爺さんに呼ばれお爺さんの隣に立った人。タングはお爺さんとの身長差から180センチ程ありそうで大柄だが目からは優しそうだと言う感じの男性だ。
緊張してでもいるのか少しオドオドしながら短めでツンツンした髪をしきりに触り挨拶をすると、ワンテンポ遅れお爺さんに促されてから深く僕に頭を下げてきた。
「あ、あぁ…よろしく頼むぞ。」
僕はガタイの良い人が現れたかと思うと僕に頭を下げてきたため、少し驚きながらも返事を返しスカした感じになりながらも荷台に座った。
「は、はい!お願いし、します!」
タングは僕に返事を返してもらえた事が嬉しかったのか、まだ少しオドオドしながらも笑顔を見せ必要以上そうな大声を出した。
「お、出発ですか。それでは勇者様、世界をよろしくお願いします。」
「勇者様〜。」
「お願いしま〜す。」
「頑張ってください!」
タングの声でスイッチでも入ったのか、僕の出発を見守る感じだった人達も声を出して手を振りだした。
のだが、もう出発の時間(どちらかと言うとタイミング)もう馬車を出発させる時間!なのだが…タングは御者台に座ったのにまだ何故か馬を走らせない。
『何だ?何かまずった?いや正しい行動しかしてないはず…。村人達は何を待っている?僕の何かを…』
村人達はずっと声援を送ってくれる。その状況に気まずさをメチャクチャに感じた僕はなんで出ないのか頭を悩ませた。
「(ボソボソと)もしかして…!」
普段は自分から大人数の前に出ることはないのだが、この時はしょうがなく向けられる視線に恥ずかしさを感じながらも、僕は一時馬車の荷台から下りて村人達の前に立ち
「あぁ…この俺に任せれば何も問題ない。 必ずやこの俺、約剣が魔王から世界を救おう!」
中二病で出発の挨拶をかました。
「うぉ〜!」
「流石勇者様だ〜!」
「世界をお願いします。」
「では、出発〜!!」
村人達は本当にその挨拶を待っていた様さらにテンションが上がり叫んだ。
出発するためのピースが揃いましたね。そんな感じなのだろうか?
タングも叫び、手綱を上下させると馬たちは獣道に向かって歩き出した。
「さぁ、さて、一息つきましたら、道具の確認をいたしましょう。」
村からの歓声も聴こえなくなり少し経った後、タングは荷台の方へ顔を向け、さっきから僕が気になっていた荷台に有る黒い大きな袋を指さした。
『とりあえず、運転手のお前はずっと前を向いててくれ。』
そう思い僕は1人で袋から物を取り出し、全て確認していった。
「…これで全てか?」
「はい!」
入っていたのは、果物にパンらの食料。なんか分厚い小説っぽい本。
黒を基調とした甲冑などついていない防御力低そうな服。役に立ちそうに見えない白色のマント。
剣や弓、盾などの武器がなかったのでまだ有るよね?とタングにきいたが、それは「No」。
どういうことなのだろうか?
「いやいや、ここで怒ってもしょうがない…。」
武器関連、戦闘できる防具。そこはおいておいて、昨日から着ている制服を脱いで丁寧に畳み、僕は黒色の服に着替えた。
「動きづらそうだし…このマントは要らないな。」
着替えると、この服を準備した人は中二病を分かっているのか中二病に全フリしてしまった様な格好になった。
マントを着れば魔法使いに多少見えるだろうが…動きづらそうで一番に中二病が限界突破、コスプレ野郎に見えそうだったので着ていない。
「格好良いです!!凄く凄く!」
僕が着替え終わりると、タングはこっちを振り返りそう褒めちぎってくれた。
『タング君、この服装には触れて欲しくないし、まず前をずっと向いててくれ!』
叫びそうで叫べない感情とともに僕は荷台に座り込みタングの視界から消えた。
「おっと…前を見ていなければ。そうそう、スモールシティまではここから大体2日程です。」
「そうか…。」
スモールシティまでが2日程。お爺さんの所に女神(少女)からお告げが来たのが1週間前…。
「…女神からお告げが来たのが1週間前、強き忠実な俺の軍は?」
あれ…?僕のために援軍が来ていてくれてもおかしくはないよね?
そんな物見えてはいなかったが、期待と有るよね〜?と言う意地悪も含めた質問だ。
「村長にだけに伝えるとかなんだか。女神様に言われたって村長嬉しがってましたよ。」
僕の意地悪には気づくことも触れる事もしない程にタングはその事を誇らしげに語った。
『マジか…。そんな誇り要らないんだよ!一番大切なのは僕が死なない事でしょ!?女神も女神で…あぁ〜!!』
本当に護衛も何も無いことに泣きそうになりながらも、ここには居ないお爺さんと女神に怒りを僕はぶつけたのだった。
―そこから何もなく、1日が経過―
「平和だ。異世界だというのに本当に平和だ〜。」
ガタガタ進んでいく馬車の上、頭の2割で思考を巡らせ残りの8割はそんな感じに現実逃避をしていた。
実際、村から出て1日経ったが本当に特に何も起きていない。
それどころか車などの騒音もなく日本よりも静かで穏やかな世界。
本当に魔王なんか居るのかという話にまで頭の2割は行き着いていた。
「タング。世界にはどのような場所があるのだ?」
騒音なんかはなく静かで良いが、逆に何もなく景色も木、木、木、空、たまに花。
と暇すぎたので僕はタングに話しかけた。
「まずはこれから向かうスモールシティですね。 スモールシティは魔王の住む場所からかなり遠いですので危険は少なく、新人の冒険者などが多いです!」
僕に話しかけられたのが嬉しかったのか、緊張などもうなさそうにペラペラトークを始めるタング。
「へぇ〜…。」
僕はとりあえず、なんで新人冒険者の多い街で魔王討伐の仲間集めをするのかを考えた。
「次に、人類最大の街、ビッグシティ。この街は…」
物事を考えたが、頭の8割現実逃避中の僕にはタングのマシンガントークに追いついていけず、キャパオーバー。
まぁ今は聞かなくても良いか。と、ノンビリノンビリ外を眺め始めた。
―さらに1日が経過―
村を出発してから今日で2日目。
転移してからは3日目。
馬車はノホホンとした昨日と状況が一転。騒がしくなっていた。
「うぉ〜!」
タングは叫びながら斧を振り上げ狼の群れに突っ込んで行く。
そんなこの状況、とりあえず僕は思う。
『どうしてこうなった?』