第9話「勇者、体を清める!?」
例のお化け事件からそんなに時間も経たない内に
「もお夕方なのでこの辺で休憩をしますか?」
ベルガさんがそう聞いてきた。
…正直、嫌だな〜。
あそこの近くで寝るのは。
「嫌です!」
シャーロットが大きな声で言った。
てか、僕に至っては変な霊…?
幻覚的な物まであそこで見てしまってもう少し離れた所で寝たい。
「そうですか…。」
そう言ってベルガさんは少し悩み始めた。
「怖いの?」
そうニヤニヤした顔でシャーロットに話しかけたのはもちろんアルゴンだ。
「たったちょっとですけど〜。」
そう堂々とアルゴンに対して上から目線でシャーロットは返した。
幽霊関連のものに対してはもっと弱腰で話すと思っていたが、以外にも何故か強気だ。
アルゴンも僕と同じで弱腰で答えると思っていたのだろう。
「え!?ビビって無い…。」
と言っている。
「当たり前じゃないですか!」
そう堂々と話し出すシャーロット。
「まぁ、幽霊が怖いのはほおって置くとして…ここに無いものにどうやってビビるんですか?」
幽霊は確かに怖いらしいが、どうやらシャーロットは目の前の物が結局は1番怖いらしい。
「…。」
余りにも幽霊が怖いことを隠しもせずに堂々とシャーロットが話したのでアルゴンは固まってしまった。
「では、まだ歩いてしまうことにはなってしまうのですが…。 この先に温泉があるのでそこの近くで休みますか?」
ベルガさんはさっきからずっと考えていてくれたらしい。
シャーロットなら最低限、どこでも寝ろと言われたら寝そうだけどね…。
「ぜ、是非ともそこでお願いします!」
シャーロットが、かなり食い付いた。
「ラリーちゃんの村から出てからシャワーも満足に出来ていませんし…。」
そう続けるシャーロット。
4番隊の騎士の女性陣の方たちも同じ様な事を主張しているようだ。
「いや、ここで良いよ! 疲れたし!!」
シャーロットの話には目もくれずアルゴンはそう答えた。
僕も疲れたと言えば疲れたのだが…。
やっぱり地球では毎日お風呂に入っていた僕からすると温泉に行きたい!
「では…勇者様はどうしますか?」
「俺は…」
「温泉! 温泉! ルンルンルーン」
そうシャーロットが鼻歌のような物を歌いながら歩いて行く。
「俺は、さっさと休みたいんだけどな〜。 まぁ、いっか。」
と、アルゴン。
「流石、勇者様! 勇者様なら理解してくれると分かっておりました!!」
ベルガさんが僕の隣で何かを言ってくる。
「女性の方々はともかく、男性の方々には何故か理解されづらくてですね…。 女神様の御加護を賜っている私からすると毎日でもお風呂なんかで体を清めたいのですがね。」
そう言うベルガさん。
体をキレイにしたいというのはメチャクチャ理解できるし、共感出来る。
が、やっぱりこの人何いってんだ…。
何か多分だけど、この人は女神様が絡むとアホにでもなるのだろう。
「女神様のために体をキレイにするとかは良く分かりませんが、やっぱり毎日でもお風呂に入りたいものですよね!」
そういつの間にか僕らの話を聞いていたシャーロットがそう言って話に入って来た。
「女神様のために体を清めるのはとても良い事ですよ。毎日でもお風呂に入りたいというのは、もちろんです。」
「俺も…戦いには休息が必要不可欠だ。」
僕はそう答えた。
「…。」
ジト目でアルゴンが見てくる。
「この香水も素晴らしいのですが…やはり体をキレイにしたいですからね。」
その嫌な目線をカットしてくれるかのようにシャーロットが話を続けてくれた。
シャーロットは小さな瓶の香水を手に持って話をしている。
何か…多分香水の素晴らしさについてかな?
シャーロットの説明にはそんなに興味はない。
「確か、約剣さんも持っていましたよね?」
そう、僕も香水を持っている。
アルさん達5番隊とタウンに向かう途中でもお風呂に入れない状況があったのでもしかして…と思ったのでタウンで買っていたのだ。
いつ買ったのかだが、時計を買った後で市場に食べ歩きに行ったときに食べ歩きではないが、一応買っておこうと思って買った。
まぁその結果は大正解だった。
「私はコレを3瓶も持っていてですね…。」
そう、僕は1瓶だけだが…シャーロットは確か3瓶くらいは買っていたのだ。
お金は沢山シャーロットも貰っていたから別に文句は無かったが、何でそんなに…とタウンのときはかなり気になっていた。
旅をする内に直ぐ理由は分かった。
シャーロットはメチャクチャに臭いを気にして1回にメチャクチャ香水を付けるからだった。
「そんなに必要無いだろ…。」
そうアルゴンがシャーロットに聞いた。
事実だなとも思い、僕も話に耳を傾けた。
「良いですかアルゴンさん。 美少女からは良い匂いがするのですよ!!」
そう言うシャーロット。
…確かにシャーロットって、顔は完全に美少女ではあるんだよな。
性格とか、立ち振舞とかは程遠いけど…。
「アレ!? アルゴンさん、対して臭くはありませんね…。」
そう急にアルゴンの臭いを言い出したシャーロット。
「それは俺が美少年だからだ!」
そうシャーロットの話を聞いた後で堂々と言ったアルゴン。
「いや…それは、性格的にも…ちょっとね…。」
そう答えたシャーロット。
じゃあお前はどうなんだよ。
そう僕は心の中でかなり突っ込んでいた。
かなりそこから歩いたが、やっと前の方から湯気だと思われる白いものが見えて来た。
「見えましたよ!」
テンション高く興奮気味な声でシャーロットが言った。
シャーロットだけじゃなくて実際、僕も興奮している。
この世界に来て初、そもそも天然露天温泉なんて日本でも山奥の山奥の秘湯にでも行かなければ入れなそうな場所だしで、お風呂好きな人は誰でも興奮するだろう。
「着きましたね。 まず温泉に行きたいところですけど、ここから1分程の所にテントを張ってしまいましょう。 温泉に近すぎてモンスターや何かトラブルがあると困りますので。」
そうベルガさんに言われて僕達は温泉から少し歩いた所にテントを張る。
「テントを張れましたね。では、温泉に行きましょう。 女性の皆さん、前と後、どちらが良いですか?」
そうベルガさんが聞いた。
「いや、ベルガ隊長。 前と後って何スカ?」
そう4番隊の中でも特に印象の薄かった男の隊員が珍しく、そうベルガさんに言い出した。
そういう事は温泉とかの鉄則だとは思っていたけど…。
良いのか、騎士団、そんなんで…。
「キモい! 前だよ前。」
そう女性の隊員が大きな声で言った。
ちなみに、変な事を言った男の隊員は女性の隊員に殴られて大きなたんこぶが出来ていた。
自業自得だな。
「了解です。 長くても1時間したら男性組も温泉に行きますからね。」
そう言うベルガさん。
流石に1時間は温泉に入ってはられないと思うけどな。
結構湯気が出ていたって事は温度も結構高いわけで…。
「では時間のある騎士団の方々はご飯の準備をしましょうか。」
そう言うベルガさん。
たがベルガさんの方へ行く人がかなり少ない。
てか、2人しか行っていない。
何でだろうと思っているとベルガさんの方へ行かなかった人達が集まり始めた。
何だと思い僕は話の聞こえそうな場所まで近づいた。
アルゴンは…テントの中に入ってしまった。
「温泉でエチチなハプニングが0ってこと、信じられますか?」
そう、まぁ変な会話が聞こえて来た。
中心になって話しているのはさっきも変な事を言って女性隊員に殴られていた男性隊員だ。
いや…修学旅行の男子かよ。
「多少ならね。 行きましょうよ〜!」
「「お〜!!」」
皆がベルガさんにバレないように小さな声たが気迫たっぷりでそう答えた。
いや…流石に本当に覗きは良くないよ!
いや、だって、見られた側はメッチャ不快だと思うし…。
―約剣はこんな性格ゆえに恋愛にメチャクチャ初心であった。
「問題は…4番隊は皆基本的には回復とかが得意な人の集まりだ、だが…」
僕がワタワタして覗きに対して戸惑っている内にまた話始めた。
「…だが、勇者様パーティーのシャーロットさん。 あの人の戦闘力が未知であるという事。 勇者様パーティーに居るという事はかなり戦えるはずだ。 さて皆、どうする?」
勝手に何かシャーロットを恐れ始めた。
まぁ多少パワーがあったりはするが…戦闘力という観点で言うなら0だぞ。
「どうする? シャーロットさんは怖いが…チャンスは今だぞ。 …行くぞ〜!!」
「「うぉ~!!」」
そう言って集まって会議をしていた人達は温泉の方に走り出してしまった。
止めるべきなのか、便乗するべきかは分からないが、大抵は(アニメ漫画とかだと)1人は女性で監視をしている人が居るから…。
まぁ、知らなかったフリでもしてテントに入っていよう。
―5分ぐらいして―
「ベルガさ〜ん! コイツ等お願いします。」
そう怒ったシャーロットの声が聞こえた。
やっぱりバレたのかコイツ等。
「…何やってるんですか?」
そう聞くベルガさん。
「コイツ等は女性のお風呂を覗こうとしたんですよ!」
怒った声でまた言った。
「メシ…抜きにしますか! 他に何かあれば、見られた方々で好きにして貰って良いですよ。」
「あ…見られてはいないんですけど…。」
と、シャーロット。
やっぱり見る前にバレたらしい。
「こ、コイツ等、ぶっ殺してやる!」
シャーロットがコッチに来てから少し経ってシャーロットと共にお風呂に行っていた女性の騎士団の人達も戻ってきた。
シャーロット以上にブチギレている。
「ま、まぁでは…この人達は今日のご飯と温泉無しで…どうですか? 見た感じ既にボコボコですし…。」
ボコボコなんだ…。
どんな状況なのかみたいな。
そう思って僕はテントの外に出た。
…。
まぁボコボコとまではいかないけども、普通にたんこぶは出来ている。
「…そうですよ。 もう制裁は受けましたよ。」
そう男性の騎士達(お風呂に覗きに行った組)は言っている。
「…では、それについてはまた今度にしましょう。 女性の方々も直接見られたわけではありませんよね?」
そう言ってベルガさんがこの場を収めた。
「では、約剣さん、どうぞ。」
そうベルガさんに言われた。
女性陣も戻って来たので、僕の番だ。
てか、たったの1分と言っても結構テントから温泉までは距離があるな…。
これ、帰って来るの地獄だろ。
温泉に着いたのでお風呂の中に入る。
チャポン。
は〜、気持ちいい。
やっぱり露天温泉は最高だ。
でも少しぬるい…もう少し温かい場所に移動をする。
バザーん!
その時だった。
「約剣さん!?」
そうシャーロットっぽい声がした。
「へぇ!?」
「何で居るんですか!? まぁでも良いですよ。 少し恥ずかしいですけど、少しですから! このまま私は上がるのでそのままソッチを向いていて下さいね!」
そう言ってシャーロットはサッサと上がってしまった。
僕はもうそこからは対して覚えていなかった。
そのまま少ししたらお風呂を上がって…ご飯を食べて…寝て…。
ベルガさんにはお風呂で体を清めるとか言われたハズなのに…全く清まってない!!




