第8話「勇者、悪霊と戦う!?」
ということでお昼タイムだ。
ご飯は大体パンが出てくる。
が、地球で言う食パンみたいな物からフランスパンみたいな物まで結構色々な種類のものが出てくるので、もう食べたくないとかは基本的に無い。
実は、毎回あのご飯は嫌だし…でも毎回僕が何か地球にあるご飯を作るのは…というのをタウンに居るときにアルさんに相談していた。
今日のご飯は食パンが出て来た。
「うん…美味しいですね!」
シャーロットがパンを一口噛ってそう言った。
皆は静かにパンをひたすら食べていた。
多分だけど、この何か気まずい空間に耐えられなかった様だ。
僕も静かにパンを食べていた。
もちろん、パンだけではなく牛乳1杯とか、スープ1杯くらいなら食べられる。
4番隊の人達の話を聞いているには5番隊と同じ様で毎回そんなに良い食べ物を旅や、都市から離れている時には食べられないらしい。
メチャクチャに何も考えず僕を冒険に出した国王様だけど…少しは考えていてくれたみたいだ。
「私、少しアッチの方に行ってきますね。 直ぐに戻ります。」
そうベルガさんが言った。
ベルガさんが少し向こうに移動して皆が平和にパンを食べていた時だった。
「え!?」
僕からそう声が出た。
何故そんな声が出たかと言うと、食べていた食パンが急に空を飛んで木の上に乗ったからだ。
風では…無かった。
うん、断言出来る。
風にしては軌道がどう考えても可怪しかった。
「どうしましたか?」
僕の声を聞きつけたシャーロットがそう言って寄って来た。
結構大きな声でシャーロットは話したため、騎士団の人達も寄って来てしまった。
「俺、見てたぞ!!」
今度はそうアルゴンが言った。
騎士団の人達は何があったんだと興味津々にアルゴンの方を見た。
「急にだな、約剣の食べていた食パンが空を飛んでそこの木に乗ったんだよ。 アレはね〜、きっとお化けとか幽霊とかのたぐいだよ。」
そうアルゴンは幽霊とか言い出してしまった。
どう考えても違うって…。
常識的に考えても今は昼間だし、仮に幽霊とかが居たとしても出るわけがない。
「おぉ〜。」
そう言って木の上にあるパンを騎士団の人達とシャーロットが見つめた。
―パク―
そんな効果音がしたような感じがして食パンも小さく一口分消えた。
「本当に…幽霊ですかね…?」
そうシャーロットが少しビビリながら言った。
「…ベルガさん呼んで来ますね。」
少しビビっているシャーロットを横目に騎士の1人が冷静にそう言った。
「約剣さん、倒して下さい!」
そう僕にシャーロットが言った。
「別にパン一切れくらい…。」そうシャーロットに伝えて、面倒くさい事を終わらせようとした時だった。
「約剣が魔法でドカーンってやれば?」
そうアルゴンが言い出した。
―それを聞いて騎士団の人達の気分が高まっていた。
「勇者様の魔法が見られる!?」
そう誰か1人が言った。
マジで!?
僕が魔法を使うの?
何か僕が正体不明の(多分、幽霊)を魔法を使って倒す様なカンジの雰囲気が出来上がってしまっている。
ホントに幽霊系ならベルガさんが来るのを待とうよ…。
「勿論、この俺が悪しき悪霊を必殺の一撃を持って倒してやる!」
この雰囲気を断れないので適当に魔法を撃って解決するなら良し、しないならベルガさんが来るまでどうにか対応している様にする事にした。
「約剣さん! やって下さい!」
そうシャーロットが急かした。
それによって騎士団の人達のボルテージも上がる。
「炎よ、俺に力を、ファイヤー」
ファイヤーボール、と詠唱を終えて魔法を放とうとしていた時だった。
「約剣さん、待って下さい。」
急いでこっちに走って来ていたベルガさんがそう言った。
「ボール!?」
が、止まらず詠唱を終えてしまった。
2、3秒経って目を開けた。
炎が出ていない…。
この状況的には良いことだ。
でも…何で出てないの?
魔法が使えなくなっちゃったとかだったらヤバくない!?
地球にはまず戻れないし…。
と、何か色々考えて居た時だった。
「集中力が切れましたか…良かった、魔法を放つ前で。」
そうベルガさんが言った。
集中力が切れた?
それだけで、出なかった?
「コチラから見て下さい。」
僕がまた何か考え始めたときにベルガさんがそう言ってコッチにおいでとジェスチャーしている。
言われた通りに僕だけでなく騎士団の人達もシャーロットもアルゴンも皆そこに行った。
「飛びリスですね…。」
そうシャーロットが言ったが、見た感じどうやらモモンガの様だ。
ソレを聞いて騎士団の人達のボルテージはガクンと下った。
そして…
「アレ、でも勇者様は悪霊って…。」
と、「勇者様が(僕が)何か間違えてたぞ」みたいな雰囲気が出始めた。
ヤバい…頑張って作ってきた勇者様像が崩れる。
ヤバい、どうしよう…。
「いや、俺はリスでは無く他の忌々しく黒い悪霊の気配を感じたのだがな…。」
そう適当に言った。
「…。」
騎士団の人達は何か良くない反応しただったが、
「なんと! そんな気配を察知したのですか!? ワタシにはまるで分かりませんでした…。 流石、女神様がお選びになられた勇者様だ!!」
そう何か適当に僕が言った言葉にベルガさんが反応した。
「え!? ベルガ隊長にも分からなかった気配⁉」
そう騎士団の人達はベルガさんの言葉に反応した。
そうして僕を「流石、勇者様だ!」とか言い始めてしまった。
いや…ベルガさんは多分僕じゃ無くて女神様を崇めたいだけだとも思うけど…。
そんなこんながあったが、ご飯の続きのためまた戻って来た。
ちなみにあのリスとパンは「まぁ別にいいや」と言う事になった。
初めっからそうなってほしかった…。
「おっと!?」
そう今度はベルガさんが言った。
またパンが空を飛んだのだった。
どうせまたリスか何かだろうと思ったが、
「この気配は…先程勇者様が感じられた物!?」
そう何か急にベルガさんは言い出してしまった。
ボケたか…?
ただ、飛んだパンの軌道は可怪しく、パンを色んな方向から見たが、何も無かった。
「ホントに幽霊ですよ! ベルガさん、やって下さい!!」
そうシャーロットがまたビビリながら言った。
「もちろんですよ。女神様教において悪霊は禁忌ですから!」
そうベルガさんが言って何か詠唱を始めた。
「敬愛する女神様…私に力をお貸し下さい。 キルゴースト!!」
そうベルガさんが詠唱を終えた後に空に浮いているパンの周りを眩しい光が覆った。
「え!? ちょっと待って! 謝るから〜」
そう一瞬可愛い女の子がそんな感じの表情をしている様な物が見えたのだが…。
何か声も聞こえた様な気もしたが…。
眩し過ぎたし、多分幻覚だったのだろう。
―ポス―
そう音を立ててパンが地面に落ちた。
「退治出来ましたね。」
そうベルガさんが言った。
誰も何か女の子を見たとか、声が聞こえたとかを話していないので、幻覚か何かで正しかったのだろう。
「やっぱりベルガ隊長は凄いな〜。」
とか騎士団の人達は話しているし。
ベルガさんに至っては何も言わずにただ、スッキリした顔をしている。
「まだご飯は残っていますが…何か不吉なのでここを直ぐに離れましょう!」
と、シャーロットが皆を急かして直ぐにそこを出発した。
ここで勘違いだったとはいえ怪奇現象みたいな物があったわけだし、怖いものが苦手なシャーロットからしたらさっさと離れたいということが僕を含めてここに居る皆に伝わったのかは分からないが…なので直ぐにここを離れたのだった。
怪奇現象モドキ2つか…。
僕もお化け系は苦手な方なんだよな…。




