第7話「勇者、マラソンする!?」
僕たちは今、ここから歩いて行くと2日程の時間がかかる村に向けて森の中を駆け足で進んでいる。
何で駆け足で進んでいるのか?
2日くらいなら頑張って歩けば良いじゃん、と思う。
まぁもちろん…もちろんでは無いか…どちらにせよ走っているのはアルゴンのせいなのだ。
詳しく説明をするとしたら少し時間を戻さないといけない。
―1時間前―
「何でこんなに直ぐに出発何だなんだよ。」
そう文句をブウブウ言っているのはアルゴンだ。
「朝にアルゴンさんにも説明をしたはずですよ。」
そうシャーロットがアルゴンをなだめた。
「ハァ、もう一回説明をしてあげますよ。」
そうシャーロットが面倒くさそうに言う。
「何で上から目線何だよ。」
そう文句を言うアルゴン。
そりゃあシャーロットはしょうが無く教える側だし…。
教えられるアルゴンは何目線何だよ…。
と、まぁ呆れる僕を横目に優しいシャーロットはもう一回説明をしてあげている。
「私達の最終目的は魔王討伐であって、村の問題解決ではないんですよ。」
そう言うシャーロット。
「うん、流石に知ってる。」
うん、やっぱり何かアルゴンは偉そうだ。
「知ってますね。 できるだけ早く魔王を倒さなければいけません。 つまり、1つの村に何日も滞在するわけには行けないんですよ。」
シャーロットは朝僕に伝えた事を省略もせず、ほぼ同じ事を丁寧にアルゴンにもう一回説明をした。
「へぇ〜。 何か聞いた話だね。」
アルゴンがそう言った。
「だから朝にもそう言ったじゃ無いですか!」
うん、シャーロットも流石にかなりイライラしてきているな。
「あ!! そうだった。 何か…ゴメンな。」
朝にも言われていた事を思い出したのかアルゴンは素直にそう謝った。
「何かじゃ無いですよ。ハァ、この時間は何だったのでしょうか…。」
シャーロットも呆れた様にそう言った。
…うん、ここは普通に関係無かった…。
―アルゴンとシャーロットの無駄な会話があってから少し―
「…後何分で次の村に着くんだっけ?」
そうベルガさんにアルゴンが聞いた。
「分ですか…。この歳にそんなに大変な計算は少し難しいですね…。」
そうベルガさんはアルゴンの分に少し強く反応して答えた。
ベルガさんは「この計算は難しい」と言った。
日本の東京にあるどっかの天才たちが集まる大学に通っている人達なら喜んで自分から計算しそうな問題だが…僕だとかなり難しいし、面倒くさい。
「日にちで良いのでしたらお答えしますが…。」
そうベルガさんは言った。
その言葉にアルゴンはかなり反応して
「日!? 分でも時間でも無くて日!?」
そうかなり驚いた口調で言った。
いや、どんな時間で次の村に着くと思っていたんだよ…。
「そうです! 日ですよ、頑張って歩きましょう!」
そうシャーロットが元気に言った。
「いや…マジかよ、早く着こうぜ!」
そう調子の良いようにアルゴンが言った。
「はぁ!? 何を言ってるんですか?」
シャーロットがとても驚いた感じで言った。
僕もメチャクチャ驚きだよ。
「じゃあ…走りますか!」
そう何故かワクワクした感じでベルガさんがそう提案してきた。
ちなみに、メッチャベルガさんの目がキラキラしてる…。
「うん! それで早く着くならそうしよう!」
調子良くアルゴンはそう言った。
アルゴン…マジでふざけんなよ。
いつもそれで失敗するだろ!
学べよ!!
そう、そうして今僕らは駆け足で進んでいるんだ。
「私…走るの好きなんですよ。」
そう言うベルガさん。
「ハァ、ハァ、そうですか…。」
と、シャーロット。
「うぇ!? いや、コイツ…やばい…。」
と、変な声を出して反応したのは走るの事の提案を承諾したアルゴンだ。
「もう…無理だって…。」
僕はそう小さな声だった。
騎士団の人達は流石の体力でまだかなり走るだけの力は残っている様だ。
何か騎士団の人達はちょくちょく話していたりするし。
ずっと走ってる中で話せるのは本当に体力お化けなんだ。
だが騎士団の人達が話していることよりも驚きなのは、ベルガさんが1番ノリノリで走っていることだ。
何も知らない人が見たら(特に日本に住んでいる人とかが)軽い恐怖だよこれ…。
だって…70過ぎた人がニッコニコで走ってるんだもん。
コレで持って戦士でも、冒険者でも、騎士のでも無くて職業は僧侶何だから何なのこの人?
「僧侶って…こんなに、走れるもの…何ですか〜?」
息が切れて止まり止まりそう僕に聞いてくるシャーロット。
シャーロットもベルガさんのそのダッシュにかなりビビっている様子だ。
そう聞かれても分かるわけがない。
「し、知るかよ〜!」
そう叫んだ僕。
ちなみに、僕とシャーロットにアルゴンはこの集団の1番後ろを走っていたため、多分だが他の人には僕やシャーロットの会話は聞こえていない。
僧侶って化け物職業だったんだな。
日本でも坊さんって1時間くらいお教をずっと唱えているし…皆化け物なんだ!
と、変な事に頭が回っていた。
が、ここでひらめいた。
僧侶…というか、ベルガさんの回復魔法のおかけなのでは!?と。
実践してみたいけど、ひとまずは休憩を…。
「きゅ、休憩して〜。」
僕が休憩を願っていると、タイミング良くアルゴンが騎士団の人達にそう叫んだ。
「そうしますか…。 では、少し休憩をしましょう!」
少ししょんぼりしてそうベルガさんが言い、騎士団の人達の事も止めてくれた。
…少し!?
「ハァ、ハァ、ハァ…ど、どこまで来ましたか?」
そうシャーロットがベルガさんに聞いた。
これだけ頑張って走ったんだ、かなり来ていてくれ!
「半日以上短縮出来ましたね!」
そう明るい顔で僕らを励ます様に言ったベルガさん。
だがベルガさんの考えとは別に僕はかなり絶望した。
こんだけ頑張って走って半日かよ…。
半日早く着けたるとしても、体力的に歩く時よりも休むはずだが…最悪歩くよりも着くのは遅いかも…。
アルゴン、許さね〜ぞ!
「少し休憩したら出発しようと考えていたのですが、…時間的にお昼にします?」
そう長期で休めるととても嬉しい話が聞こえた。
「そうして〜。」
泣きかけているアルゴンを見て、ベルガさんはお昼休憩をかなり長めに取ってくれる事になった。




