第6話「勇者、感謝される。」
コンコンコンコン。
「勇者様〜!!」
ドアの音と僕のことを呼んでいる声が聞こえて目が覚めた。
眠たい…。
昨日結局寝たのは12時を普通に過ぎていた。
「はい?」
割と小さな声でそう返事をした。
こんなに早い時間に起こしに来たのは誰だ?
シャーロットは流石にこんなに早い時間には起こしに来ない。
アルゴンなら時間関係無しに起こしに来そうでもあるが、アルゴンがこんなに早い時間に起きれるわけが無い。
「僕で〜す。 ラリーですよ!」
ラリーくん…ちゃんかよ…。
この子はこのくらいの歳の子供と比べるとかなり大人っぽと思うが、やっぱり、しっかり子供なんだなと実感した。
でも流石に…こんな時間には起こしに来るなよ!!
親もこの子と一緒に住んでいるんだから止めてくれよ…。
「おや…ラリーさん、勇者様に何かご用事ですか?」
そうベルガさんが、ラリーちゃんに話し掛けた。
どうやらこの家の近くを通りかかった時にラリーちゃんに気が付いて、僕は眠いだろうと気を使ってくれたのだろう。
多分だけど、ベルガさんならそうしてくれそうだなと思った。
てか…ベルガさんも昨日寝たのは大体同じくらいの時間だったよね…。
あぁ、僕は井戸に水を入れていたから1時間くらいのは寝たのが遅いのか…。
だとしても、悪いけど御老体の方には結構な夜ふかしなんじゃないの?
声からは寝起きという感じはしない。
何で起きれているの?
「あの〜井戸が! 元に戻っていてですね。 勇者様にお礼をしたくて来ました!」
そうラリーちゃんは元気にそうベルガさんに報告した。
「それはですねラリーさんの想像通りに勇者様が昨日、解決して下さいましたよ。」
そうベルガさんはラリーちゃんに言ってくれた。
ラリーちゃんは
「やっぱり勇者様でしたか! どうやったんですか?」
喜んでいると分かるくらいテンションが高かった。
その声でベルガさんに質問している。
「えぇ、本当ですよ。」
そうラリーちゃんを安心させるようにベルガさんは優しい声でそう伝えた。
「ちなみにですが、例の幽霊事件も解決をしてくれましたよ。」
続けてベルガさんは言った。
まぁベルガさんは「ちなみに」と言っているけど、本来なら幽霊退治が目的で井戸がオマケみたいな物だったんだけどね。
「え!? お礼をしに行きますね!」
そうラリーちゃんが言った声が聞こえてくる。
いや…マジで今眠いし来んな!!
来るの?とか不安に思っていたときに
「勇者様はまだ寝ているはずです。 昨日はとても頑張ってくれたので今は休ませてあげませんか?」
そうベルガさんが言ってくれた声が聞こえた。
「勇者様が起きたときにその感謝を伝えてあげて下さいね。」
そうベルガさんはラリーちゃんのやる事を完全に否定するのではなく、優しくとても良い別の案をラリーちゃんに出した。
聞いていた僕は素直に流石はベルガさん、と思った。
シャーロットやアルゴンならそもそも僕が寝たいとかは全く気付かないくてラリーちゃんを部屋に入れてしまっただろうし、もし僕に対して気遣いが出来てもラリーちゃんにまでは出来ずに下手したら泣かせてしまっていただろう。
この後僕は自分でも気付かない内にまた寝てしまった。
コンコン。
またこの音で目が覚めた。
今は流石にさっき程眠たく無いのでベッドから降りて起きた。
…ラリーちゃんかな?
「約剣さん、流石に起きてくださいよ。」
シャーロットだった。
そうシャーロットに言われたため時計を見てみた。
今は…10時。
「流石に起きて」と言われる時間でも無いと思うけど…。
ただ、確かにこれ以上寝る必要も無いと思ったので着替えてドアを開けた。
「おはようございます。 そして、直ぐに出発ですよ。」
そうシャーロットに衝撃的な事を言われた。
もう直ぐに出発…?
流石に早くない?
「早くない?」
そうシャーロットに聞いた。
「この村は目的地の途中と言いますか、スタートのような場所です。なのでそんなに長く滞在しても…。」
確かにという回答が返ってきた。
「さぁ、行きますよ。」そうシャーロットに言われてこの村の入口の様な場所まで速攻で連れて行かれた。
直ぐにって、マジで直ぐにだった。
僕たちの出発には村の多くの人達が集まってくれた。
「それじゃあ、行くぞ!」
何故かいつの間にか僕がこの隊を仕切る事になってしまっていたので、皆にそう言った。
「勇者様〜、待ってくだちゃい。」
そうラリーちゃんが走りながらそう言ってこちらに来た。
朝にベルガさんに言われたお礼かな?
手に花束を持っているし。
「あの…今回はこの村の問題を解決してくれてありがとうございました。」
ペコっとお辞儀をしてそうラリーちゃんが言った。
結構嬉しいが、その頑張ってお礼をしてくれていることに対して可愛いが勝っている。
「コレは…お礼です。」
そう言って僕にしゃがんでポーズをしているラリーちゃん。
そして僕がしゃがんだ後、何か照れながら手に持っていた花を僕の頭にかけてくれた。
手に持っていた物は花束では無くて花の冠だったらしい。
この冠には白色の小さめの花が沢山あんであった。
「ありがとう。」
そうここでは厨二病ポーズとか、厨二病セリフとかを一切言わずに優しい声を意識してラリーちゃんにありがとうと一言だけ言った。
しっかり聞こえたようで、ラリーちゃんは嬉しそうな顔をした。
ベルガさんや4番隊の人達、シャーロットにアルゴンも空気を読んで静かにしていた。
かなり感動的な場面だった。
と思っていたし、実際、かなり僕自身感動していた。
が、昨日の夜に村長さんを発見した家から村長さんの顔がチラチラ見える…。
僕の中での感動的な場面をぶち壊しやがった。
もちろん、他の人には見えていなそうだったが…。
なら、僕も見えないで欲しかった。
と、出発前に何だかんだあったが、また旅は続いていく。
「次の村はですね…多分2日程歩けば着くでしょう。」
そうベルガさんに言われた。
うん、もう少しあの村で休めば良かった!
そう後悔したのであった…。




