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厨二病なのは認めるけど、本当に冒険したいわけじゃない!  作者: 水希
第1章 厨二病、異世界に行く!
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第2話「厨二病キャラって、ここでも続ける感じですか?1」

「そうだねぇ…。うん。アニメだと異世界転移で行く場所はギルドだと決まっている。から、まずはギルドを目指すのが良さそう?」


 異世界転移させられてからもう15分程が経過。

 僕は流石に泣く泣く切り替えた。

 切り替えたので、泣く泣く次のやるべき行動を取ることにする。


「あれ…ちょっと待てよ。そもそも、こんな所にギルドなんか在るのか?」


 やるべき行動をイメージして、前を見て歩いていこうとポジティブに顔を上げた。そんな時だった。

 僕は初めて目の前の村をちゃんと見た事でそんな事に気づいてしまったのである。

 ザワザワザワ…。僕の中でどっかから絶望が聞こえてくる気がする…。


「いやいや、こういう時にマイナス思考は駄目だ。 プラスに考えよう!よく分からない森とかに送られたのではなく、少なくとも人が居る場所には送られたわけだ。」


 僕は絶望をひとまず追い出し、とりあえずプラス思考を考えた。

 そして、もう一度ちゃんと、顔を上げ目の前の村に周りを見渡した。


「あれ?何故か知らない場所なのに知ってる感があると思っていたけど、ここからは日本で言う村以外何もない場所感が出てるからだぁ…。」


 そして僕にはちょっとした疑問が解けたことによる達成感。メチャクチャに大きな絶望感。

 絶対に釣り合わない2つの感情が生まれてしまった。


「…うん、この話は一旦やめよう。 そうだな…ひとまずは、スーハー。 スーハー。」


 絶望を追い出す場所がなくなってしまったため、僕は人間がパニックった時にやるべき1の事。深呼吸をして物事を考える事を一度止め、絶望をなくした。

 まぁ早い所の現実逃避である。


 深呼吸をして絶望が消え去った所で、僕はそろそろ目の前の人集りに向き合わないといけないのだろう。

 「初めまして私の名前は?いや、俺の名は?」

 20人ほどの人達へのファーストコンタクトをどう取るべきなのか。普通に頑張ってノーマルなのか、勇者としてなら中二病なのか?


 コミュ症から悩み込んでいた時だった。

 人だかりが突如として2つに割れると、1人のお爺さんがその間を通り僕の目の前に立った。

 髪は少なく身長は165センチくらい(多分)だが、堂々と立つ姿からか強者感というか強者感を出しているお爺さんだ。


「あ、あ、あのぉ〜…。」


 急に大人数の人を割って現れたお爺さん。

 こっちを見てはいるが一定の距離を取られている事から、僕は話しかけるのにビクビクしていた。


「村長様、このお方は…。」


「危険ではないですよね!?」


 『あ、あれ…?』


 僕はビクビクしていた僕自身が馬鹿らしくなった。

 何が始まるも何も、彼らは普通に日本語で普通の会話を始めたからだ。


「ピカってなって、パーってなってで! で! フワっで、パタっだったんだ!」


 …まぁ、変な話を聞こえはしたのだが、僕は自分の事を捕まえるという物騒な話もなかったので安心でき、勇気を持って話しかけようと思えた。


「あ、あの〜。お爺さん?こんにちは。」


「やっぱりこのお方ですね!」


 『何を?』始めっから大人数は辛いので、(多分)リーダー的な存在のお爺さんとコミュニケーションを取ろうとしたときにだ。

 お爺さんは僕の言葉を打ち消すが如く大きな声で、何かを納得させた様子で人々の目線を集めたかと思うと僕に近づいて来て


「女神様からのお告げがございました。この世界を魔王から救ってくださる救世主様が今日、舞い降りられると。貴方様でございましょう。」


 人々がどうしてでも興味が湧くだろう事を僕に向かって話しかけてきたのである。


 『女神様…あの神々しい少女?なんとなく僕の事を知ってる人?じゃあ中二病での対応?』


 僕は1人と話そうと覚悟を決めていた所に、急に大人数の前での会話を強制させられながらも、何が正解化かと頭をフル回転させる。


 『う〜んでも、なんか話し方的には少しだけ聞いたくらいの様な…。』


「勇者様でしょう?貴方様ですよね?」


 お爺さんは「yes」と言えとばかりの勢いでグイグイっと顔を近づけてきた。

 ()()()と言う言葉が出たからか。周り人達からの視線はさらに強くなり僕1人に送られた。


「あぁ、無論この俺、約剣(エクスカリバー)のことである!」


 ドン!!


 勇者を肯定してと期待され過ぎた20人超えからの視線。

 ダラダラダラダラダラダラ・テン・バーーン!!なんて言う体育の順位発表での音がありそうな程引き伸ばされた無言の時間。

 僕はそれらに耐えることはできず、堂々と中二病を決め込んだ。

 (ちなみに、今回の厨二病ポーズは仁王立ちと右手を左目に持っていくのは変わらないが、若干人を見下ろす様な形になっている。)


「「…。」」


 ヒュー…。風の音が、スベったとき用の音が聞こえてくる気がした。

 渾身の厨二病ポーズも出したのに周りのギャラリーからの反応はない、完全に無言で固まりやがった。


 『普通にスベった!?終わった…勇者というか変人扱いかもしれない。 ………。いや、でも、間違いじゃないでしょ!!それにさ…』


 完全に冷え切った空気を感じてしまった事で、恥ずかしさが限界を超え、自分の中では心細く理屈もない言い訳合戦が始まりだしていた。

 そして、僕は今久しぶりに1つ思い出してもいた。

 僕は学校では完全に中二病キャラで通っていたし、羞恥心も学校ましては友達の前では0だった。

 だがそれは完成させられた中二病キャラと言う確固たる地位があっての事だったということを。

 初見の人に一発目の中二病で笑われてしまった時の羞恥心に諦め(理解されないかぁ〜という)感情を。さらには…


「おぉやはり、勇者様は約剣(エクスカリバー)様の事でございましたか!」


「え!? 本当に本物なの!?」


「凄い瞬間に立ち会えた〜!」


 色々な感情がフラッシュバックし切る前にお爺さんからの遅れた1言。

 それによって村人達は動き出し、話だし、ないしは泣き出し始めたやつも。


 『ふぅ〜…。』


「あぁ、そうだ!この俺の事だ!」


 嫌な感情を頭から出し切り、いつも通りの中二病キャラメイクを取り戻すつもりで僕はダメ押しの中二病肯定をした。


「はい、初めましてです。ですが勇者様、今日はもう遅いです。ですので、今晩は儂の家で寝て下さいな。」


 お爺さんは僕の肯定を受け取ってくれると、村に設置してあった時計を見ては僕の腕を握り、村人達の視線から出してくれたのだった。




 ガチャ。


「勇者様はこのお部屋をお使い下さい。…では、ごゆっくりしてください。」


 ガチャ。


 説明はシンプル・イズ・ベスト!

 お爺さんが用意してくれたのは、お爺さんの家の中の6〜7畳分くらいの部屋にその部屋の1/3を使っていそうな大きさのベッドである。

 それらの説明をたんたんと説明し終えるなり、お爺さんはさっさと部屋を出て行ってしまった。


 僕はお爺さんが部屋から出てこの部屋に誰も居ないのを確認した後、疲れがドット押し寄せていた事ベッドに直ぐインして眠りに入った。

 まずまず朝から寝不足だった事、そして女神(?)に異世界にとても疲れていた事で即刻眠ったのだ。

 寝づらい学校の制服。そんな物全く気にしないほどに。


「目が覚めたら、夢だった!なんて展開がないかなぁ…zz。」


 なんて希望を静かに超絶願い口に出して。




―翌日―


「ハッ!? 悪い夢を見ていたようだ…!」


 目が覚め、僕の記念すべき異世界生活初めての朝の第一声は、とにかくそれだった。


「ここは…僕の部屋の中のベッドの中だ!!」


 陰キャ?知らん。今はそんな感じの高いテンションで体を起こした。

 昨日は変な夢をみたからな。代わりに今日は楽しく過ごそうかと、希望の朝を迎えたいのだ。


 まぁ、本当はというと分かっているのに理解したくない。まだ夢の中で居たい。

 そんな本音を隠したいからの高テンション。

 それも目に入った部屋の景色でそろそろお開きの時間だ。

 僕は自分にブニュっとほっぺをつねり、痛みを感じ、現実を突きつけた。


「あぁ〜、まぁ知っていたけどね。そう、知っていたけど…。」


 当たり前に現実は現実なのだ。

 全部夢だった!なんて言う都合の良い事はなるはずがなく、陰キャ?そうですー。テンションも爆下がりだ。


 ガチャ。


「おはようございます、勇者様。」


 残念な、気の抜けてしまったやる気のない顔をしてドアを見つめていたとき、お爺さんがパパラッチのようなタイミングでドアを開けた。


 『…!?ヤバい!!こんな顔をお爺さんに見せたら絶対不味い。 絶対に昨日と同じ感じで過ごさないと!』

 

 僕は一瞬でそう理解し、一旦ドアとは反対側を向き顔を触りながらキメ顔を作る。

 そして、


「あぁ、この素晴らしき朝に祝福を…あげなくてはならぬな。」


 言うと同時に僕は作ったキメ顔でドアの方、お爺さんの方を振り向いた。


 まぁ、朝から厨二病なんてやった事はないから(基本的に厨二病は昼間の学校でのみだから)適当にアニメなんかから言葉を持ってきただけの適当挨拶だけど…。 言っただけで意味なんか分からなくても中二病っぽさがお爺さんに伝われば良いでしょ。

 そんな思考と共にであった。


「はい、そうですね。女神様、さらには勇者様に感謝を!それと…ご飯ができておりますので、こちらにおいでください。」


「…。」


 メチャクチャな僕の言葉にまさかのお爺さんはしっかりと回答。


 『なんでそれを返せるの?』


 関心と驚きで固まりつつも僕は連れられて寝室を出た。

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