第2話「戦闘での作戦。」
質問ラッシュでシャーロットがやらかしてから少し経って皆かなり冷静になっている頃。
もちろん僕も冷静になっているわけだが、僕らのパーティーの中で1番絶望していたのは僕だった。
何故なら単純に僕らのパーティーで戦闘が出来るのは僕だけだからである。
マジで本当にどうしよう…。
やっぱりさっきの無し!とかはできないだろうし。
まぁ、褒められてシャーロットが調子に乗ったのも少しは分かりはする。
スモールシティでも5番隊と旅をしていたときも多少は褒められたりはしたが、べた褒めされた事はなかった。
それにしてもシャーロットは調子に乗り過ぎたけど…。
ていうか、つまり今この中で、騎士団の人達も含めても戦闘が出来るのは僕だけって事?
僕の魔法でこの人達全員の命運がかかっているって事かよ。
かなりやばい事になってきてしまった…。
「ベルガさんは僧侶様なんですよね。」
少しすると、戦闘の事なんかもう切り替えたような冷静な顔をしているシャーロットがベルガさんに話しかけた。
シャーロットは戦わないから呑気だよな…いや、オトリニなるかもだから…現実逃避している感じなのかも。
まぁ、これ以上考えても意味はないだろうか。
もう切り替えるしかなさそうだし。
確かにベルガさんは僧侶と聞いていたけど、何で僧侶が騎士団の隊長なんてやっているかけっこうな謎だ。
「はい、その通りですよ。」
そうベルガさんは一言だけ。
もう少し…何かないの?
「何で僧侶が騎士団の隊長やってんの?」
ちょうどタイミングよく、シャーロットに続いてアルゴンがそう質問した。
アルゴンもすっかり切り替えた様子だ。
アルゴンがそもそも、どこまでヤバいと思っていたかは知らないが。
「気になりますか?」
アルゴンにきかれたベルガさんはそう言った。
もちろん僕ら3人は「うん」と答える。
けっこう息ピッタリに3人共首を縦に振った。
「そうですね…では、手短にお話しましょう。」
ベルガさんもそう了解してくれたので、話を聞くことになった。
きいておいて、なんだけど…長くなるやつ?
回想的な変な感覚になるのは嫌なんだけどな。
「私は昔は国王様の住んで居た街で教会の僧侶をやっておりました。」
やっぱり長くなるっぽい。
昔話、回想から話しが入ってしまった。
手短にって、僕は長くなるって言う意味だと解釈してしまっている。
アニメでも長い話の前には手短にって言うし。
きいたのは僕らだから僕とシャーロットはもちろんしっかり聞くけど、アルゴンは何途中で飽きたとか普通に言い出しそうだなぁ…。
失礼な行動だけど、なんだかんだシャーロットにしか指摘されないアルゴンって、自由でいいよね。
「ある日、私の居た教会に国王様が女神様にご礼拝にお越しくださったのです。」
中世の街にあるような立派な感じで、掃除もちゃんと行き通っていて綺麗な教会が頭の中に浮かんできた。
うん、うん。
ベルガさんは僧侶だから、元は教会に居ただろうという予想はあっていた。
あれ…国王様が直接来る教会の僧侶って、元々かなり凄い役職にいたんじゃないの?
ベルガさんって。
まぁ、今はそんな事はどうでもいいか。
「国王様はその日、教会に来る前に人に襲われたらしく…国王様はご無事だったのですが、護衛の騎士団の何人かはかなりの怪我をされていてですね。」
ベルガさんは少し笑顔で、思い出を思い出しながら話す。
…多分だけど、話の流れ的に助けたらスカウトされたみたいな感じだろうか。
いや〜、長話になるかとビビったけど、普通に手短だった。
流石にアルゴンもちゃんと話を聞いているくらいだ。
「私は女神様のおかけで回復魔法を高レベルで使う事が出来ましたので、助けたのです!」
ベルガさんの口調が少し強くなる。
やっぱりベルガさんもそう盛り上がったし、国王様を助けれた思い出話からのスカウト話だろう。
…魔法を使うのが女神のおかげって、どういう事?
あの少女のおかげって何なの?
そう魔法についての疑問も出たが、ベルガさんはそこには触れずに話を続けた事で、僕もそんな事は深く考えずに話に戻った。
「その時にですね。 まぁ若気の至りと言うやつですけども、命を助けたお礼に教会に、とても今では考えない程のお金の寄付をお願いしてしまいまして…」
少し口調が強くなってクライマックスかと思ったが、ベルガさんはそう言うと軽く笑いながら話しだした。
助けた流れでスカウトされた流れだと思ったけど…急に方向転換だ。
というか、お金?
僧侶さんがお金って…煩悩まみれな僧侶だな。
煩悩まみれは置いておいて、あの国王様なら普通に払ってくれそうだけども何が若気の至りなんだろう。
金額が3億とかくらいでもの凄かったとか?
「まぁ国王様は問題はないと言ってくれたのですが…なにしろとても馬鹿なことに国が傾く程のお金を要求してしまいましてね。 国王様のお付の人に死刑だ〜!ととても騒がれまして。 いや〜あの時は本当に焦りまくりでしたね。 ハハハ。」
ベルガさんは苦笑いとかではなく、マジの本心で笑いながらそう言っていた。
そして周りの騎士の人達の反応から、ベルガさんが言っていることはジョークではないと分かる。
ベルガさん、ハハハじゃないよ…。
シャーロットは急な話の展開について行けずに唖然としていた。
アルゴンはというと、普通に笑っちゃってる。
「国王様が死刑は良くないから、魔法の能力を国の為に役立てて。と申されまして…で、騎士団の隊長になっちゃいましたね。」
国王様が出て来た所まで真面目っぽい顔だったベルガさんは、最終的には笑顔。
過去の事だからか、とても愉快な話になっているが…全体を通して4番隊の人達は何とも言えない顔をしていた。
多分部下としては反応しづらいよな、この話。
部下じゃない僕とシャーロットもちゃんと反応を取れてないもん。
「褒美を貰うはずが、労働する羽目になっちゃったんですよ。 で、辞める事も出来ずに未だに4番隊の隊長です。」
4番隊の隊長は嫌なのか、そこは少しテンションの低いベルガさんだった。
そうだな…この話を聞いての感想は、思ってたんと違う!
やっぱり、何かもっと腕を見込まれてとか単純に国王様に気に入られてとか想像してたんだけど…。
異世界の騎士団と言ったら、出世かスカウトかの2択って決まってるじゃん。
(もちろん、アニメ知識だけど…。)
この長そうで短い話を聞いた成果と言うか得たものは、ベルガさんは結構オチャメと言うかバカと言うか、ただの真面目な僧侶じゃないことが良く分かったって事だろう。
「ちなみにですけど…ベルガさんってどんな魔法が使えるんですか?」
ベルガさんが話終えて少しすると、シャーロットがそう質門をしてくれた。
僕にとってはかなり重要な事。
だが、シャーロットはベルガさんの話に対してリアクションが取れなかったからさっさと話を変えたいという様だった。
「回復魔法だけですね。 勇者様の様な攻撃魔法は使えませんね。」
そう言ったベルガさんにシャーロットや騎士の人達は「それでも凄い」的な事を話していた。
だが…僕にとっては、ベルガさんには(初めての僕以外の魔法使いには)強っよい攻撃魔法を見せて欲しかった…。
てかさぁ…さっきまで僕には僕しか戦えないと思ってはいたけど、どっかでベルガさんが戦ってくれるだろうという希望があった。
が、回復魔法しか使えないって事はベルガさんは歳とか関係なく戦えないって事。
つまり、マジのマジでここには僕しか戦える人が居ないって事になるのか…。
「そんなに戦闘は出来なそうだし…隊長やれてんの?」
僕が絶望していると、軽い感じにアルゴンがきいた。
アルゴン、さらに僕が絶望しそうな話はもう止めて。
僕の、僕のライフはゼロだ…。
「…正直、出来ませんな。 ハッハッハッ。」
ベルガさんは堂々と、自分が出来ていないと言う事を笑い飛ばすかのようにそう言った。
グハッ。
ベルガさん…本気と書いて本気で出来ないのでしょうか…ねぇ…。
「…。」
僕は本当にそんな感じに固まって居た。
そんな時、僕が固まって居たのに気がついたのか、ベルガさんは
「女神様に頂いた回復1つ使えればそれだけで十分ですよ!」
と、言った。
ベルガさん、何が十分なんだよ…普通に十分じゃないから。
この状況を考えてよ!
僕も基本は後方支援だし、ここにはサポート型の奴しか居ないから!
「ちなみにですけど、どれ程の回復魔法を使えるんですか?」
シャーロットがきいた。
重要か?
いや…普通に重要だなそれ。
ベルガさんの回復能力が凄かったら、アルゴンをゲームのいわゆるゾンビ戦法みたいに突撃させればいいし。
「若い頃は死にかけている人でも助けられたのですが…」
マジの事ならメチャクチャ凄いし、出来るじゃんゾンビ戦法!
…「ですが…」と言われたのは怖いけど…。
ですがの後が今は擦り傷程度しか…とか言われたら、戦闘は本当に全員で走って逃げるとかになっちゃうぞ。
僕が色々と考えている事は全く知らないはずのベルガさんは何故か少しタメを作った後に、また口を開いて、
「今は衰えてしまって、腕を生やすくらいしか出来ませんな。」
笑いながら、衰えたとか言いながらそう言った。
いや、回復魔法で腕を生やすくらい出来たら全く衰えてないからソレ。
アニメだと僧侶の中でも数万人に1人とかだったし。
ミノタウロスを倒したアルさんと比べて弱そうとか頼りなさそうとか考えてしまっていたけど、ベルガさんも十分化け物だったわ!
「では、アルゴンさんに戦闘になったら突っ込んで貰う事も出来るわけですね!」
ベルガさんの話を聞いたシャーロットは笑顔でそう言った。
笑顔で言っているのは…ジョークだと思いたいけど、(じゃないとサイコパスって事になっちゃっうし)やっぱりそうなるのか。
剣を持ってるアルゴンゾンビ戦法になるわけか。
これにはアルゴンはもちろん、ベルガさん達4番隊の人は皆少し引いていた。
「シャ、シャーロットさん。 何を申しているのでしょうか?」
アルゴンはとても焦った顔で何故か敬語も使ってそう言っている。
「アルゴンさん、前に私をオトリにしたことありましたよねぇ?」
アルゴンがメチャクチャ焦って居た時に、シャーロットは圧をかけながらそう言った。
「え!? いや〜その、あれじゃん…。 あの…。」
アルゴンはなんとか何か言おうとしているが、シャーロットの事をオトリにしたことがあるのは事実。
何も言い返せていない。
てか言うか、未だにオトリにされた事を恨んでたんだな…。
それを考えると、シャーロットの口から出たアルゴン突撃戦法はジョークでもなんでもなく、マジの作戦なのかも。
「シャーロットさん、落ち着いて下さい。」
ベルガさんは流石にヤバいと思ったのか、そう落ち着かせようとしている。
が、シャーロットは笑顔でベルガさんを含める4番隊の人達にも圧をかけていた。
昔、女性は怖いと聞いたことがあったが、それの理由が今理解できた。
うん、確かに怖い。
4番隊にも女性の人達は居たが、シャーロットの圧に男性同様何も言えない様子。
結局シャーロットの圧に誰も勝てず、シャーロットが話した作戦はジョークでもなんでもなくマジ作戦で…戦闘時にはアルゴンが敵に突っ込むという事が決まってしまった。
アルゴン、ごめん。
でも、前にシャーロットオトリニ作戦を考案したのはお前だから…何とか頑張ってくれ!
そう僕はいつも通り考えるのをやめた。




