第11話「次の冒険への不安。」
展開がすっごい速いなぁ…。
こんな展開の早い流れ、知ってる。
この人についての詳しい説明がまずは欲しい!
本当、こういう重要な事は展開が毎回は速いんだよなぁ…。
そういう魔法でも…あるのでは?
いや、この世界のトップの(だと思われる)あの少女もそんな感じで人の事待たなから…そうなるのか。
そんな事を考えていた時だった、急に
「約剣様? さん? 勇者様? 何てお呼びすればいいですかね?」
そうベルガさんが僕に話しかけて来たのだ。
優しい感じで、温厚な性格っぽそうなゆっくりとした声で。
だが優しい声に温厚そうな性格なんて関係なく、僕の初めてあった人フィルターが発動してしまったため
「約剣でも勇者でも何でも呼ぶがよい。 何故なら俺には勇者の約剣という揺るぎない事実があるのだから!」
ドン!
効果音と共に厨二病ポーズを取り、そうベルガさんの前で話してしまった。
「ほ〜、そうですかそうですか。 まぁ、詳しい自己紹介はまた明日やりましょう。 約剣さんは今日はもう、5番隊の人達とご飯でも食べに行っても良いですよ。」
僕の挨拶に、そうベルガさんは言った。
挨拶はスベった感じではないけど…どう思われたのかはかなりの疑問だな。
「ほ〜、そうですかそうですか。」って本当にどんな反応なの?
何か感心してるようにも取れてしまう声のトーンだし…。
「ベルガさんもう今日は良いんですか?」
特に詳しく紹介があった訳でもなく、もう今日は解散と言う事にシャーロットが驚きながらきく。
「はい、どうぞ。」
シャーロットに質問されたベルガさんはそう優しい声で一言だけ。
さっきはもう直ぐにでも出発という展開かと思ったが、しっかりお別れと準備時間的な物を取ってくるようだ。
「あ、そう…。 じゃあご飯行こ〜ぜ!」
ベルガさんの簡単な紹介も聞いていなかったであろうアルゴンが、ヒョイッと現れてそう言った事で本当に行くことになった。
そうして5番隊の人達とご飯を食べる事になったのだが…夜ご飯には時間がまだかなり早い。
遺跡に行ったりなんだかんだしたりしていたが、まだ2時になった頃だったのだ。
「ベルガから時間を貰えるとは思っていませんでしたね。 約剣さん方は明日からまた旅に出るという事なので…早い時間から食べ始めましょうか。」
すっかり嘘っぱち剣から気分が戻り、人の事をとても考えてくれるアルさんはそう提案してくれた。
でも別に…明日朝がそんなに早いわけではないとは思う、多分だけど。
「それに…遅い時間になると5番隊の方々はお酒を飲み始めてご飯も長引いてしまうので…4時頃からでもいいでしょうか?」
少し呆れながら、なおかつ少し恥ずかしそうにアルさんはそう続けて、僕らもそれで良いと返事をしたため
「では、3時半頃にお迎えに行きますね。」
アルさんは最終的にそう言ってくれた。
僕ら3人はこの街ではどこに何があるか全く分かっていない状態なのでとても助かる言葉だ。
そしてその後、僕らはさっさと各自宿の部屋に戻った。
「アルゴンさん、寝ないで下さいね。」
宿に入って2階へ上がり、シャーロットは部屋に入る前にそうアルゴンに注意を言っていた。
まぁそんな事を言われたところで、アルゴンは普通に寝そうだけど…。
そうして1時間ちょっとが経った頃、ツンツンという感触がほっぺにあると思い僕は目を開けた。
もちろんツンツンしていたのはシャーロットだ。
「あ、起きましたか。 そろそろ3時半なので準備をしておきましょう!」
そうシャーロットは言っているが、服装は一時解散したさっきと変わらないので別にこの格好で良いとは思う。
つまり準備なんかは全くない。
そう思いながらも僕は一様鏡を見ると、少し寝癖が付いていた事に気がつく。
「まず初めにアルゴンさん起こしましょう。」
寝癖を直そうとしていたところ、シャーロットに言われてアルゴンの部屋の前まで連れて来られてしまった。
もちろん寝癖は直っていない。
「アルゴンさ〜ん。」
そう言ってドアノブに手をかけるシャーロット。
人の部屋に行くわけだが、ノックすらしていないとは。
アルゴンは確実に寝ているだろうと確信している様子だった。
だが…
ガチャ。
シャーロットが声をかけた後に、一様少し間を開けてドアを開けようとした時
「何?」
そう言ってまさかのアルゴンが出て来たのだ。
「何ってえ〜と…あぁ、そろそろご飯ですよ。」
アルゴンが起きていたという事に同様を隠せていないシャーロットはそう言った。
「あぁ、ご飯ね。 …シャーロット、何固まってんの? 行くぞ〜。」
シャーロットがドアの前で未だに固まっていると、アルゴンはシャーロットにそう言って先に1階に下りていく。
シャーロットはその後少し固まって居たので、寝癖を直すために1度部屋に戻った後に僕がシャーロットを連れて1階に下りた。
階段を降りてロビーに着くと既にアルさんは椅子に座って待っている。
時計を見て時間を確認したら、今はまだ3時20分。
…流石にアルさん、早く来すぎじゃないか?
「あ、もう行きますか?」
僕ら3人が全員ロビーに下りていることを確認したアルさんがそう言った。
「もう」って、あなたがもう居るのかよって感じなんですけど…。
まぁいいやと思い僕らはアルさんに連れられて宿を出た。
「実は、5番隊の皆さんはもう集って始めちゃって居るんですよ。」
アルさんは苦笑いしながらそう話す。
早いのはアルさんだけじゃなかったのか。
この5番隊が多分少しおかしいんだな…。
というかその5番隊の隊長がアルさんだから、多分皆行動が早くなったんだな。
…いや、アルさんが早いのはバグで、5番隊の人達が今日早いのは飲み会が楽しみだからだろう。
ご飯屋さんまではそこまで近いわけではなく、15分くらい歩いた。
アルゴンは眠そうにタラタラ歩いていたので、さっきは寝るのを我慢してたのか?
という疑問も出てきたが…せっかくの飲み会なので面倒くさそうな事は忘れる事にした。
「着きましたよ。」
そう言ってアルさんが指を指したお店は普通に高級そうな雰囲気のお店。
「結構高そうなお店ですけど…。 良いんですか?」
心配そうにシャーロットがアルさんにそうきいた。
正直僕もこんな所に入って良いのか心配。
アルゴンはというと、全く心配なんかしていなそうだ。
「えぇ、5番隊の皆さんが勇者様にと。 それと、勇者様からは貰えないと言ってましたよ。」
アルさんにそう言ってもらえた事については、シンプルに何か嬉しい。
先導的な事なんて全くやっていなかったのに尊敬されていたのかもという感情だった。
そう感激していたところに
「それに…5番隊の皆さん、凄く食べるんですよ…。 勇者様にまでお金を払っていただくのは申し訳ないですし…。」
と、アルさんの独り言が耳に入ってしまった。
感激を返して…とはいかない。
というか今までは考えなかったが、ハーフエルフのアルさんは空気を読むのが苦手だったのかもしれない。
稀に、「え…それを言う?」て発言もあったのだった。
ご飯屋さんの中に入ると、何人か既にお酒を片手に話していた。
やはり5番隊の人達の行動が早かったのは、さっさと飲み始めたかったからだろう。
アルさんが僕たちを迎えに来ている間に、注意される前に飲んじゃえっていう事だったのだろうな。
「飲んでますね…。」
騎士の人達が飲んでいるのを見たアルさんは、少し呆れながら僕たちにそう言った。
「勇者様カタ来まヒたね。」
そう言って騎士団の皆に僕たちの到着を言ってくれた騎士の人の呂律は少し変…。
もう酒飲んでんな!
騎士団は一般兵とは違って酒は飲まないし煙草は吸わない、ギャンブルはしない人達っていうイメージだったんだけどな…。
「では、改めまヒて〜かんハ〜い!!」
アルさんが注意をしようか悩んでいる隙に、既に飲んでいた人は前に出て来てそう言い飲み会は本格的に始まった。
やっぱり、もう既に呂律が回らないくらいに飲んでるっぽいけど大丈夫か?
「店員さん、そろそろ運び始めて下さい。」
アルさんが店員さんにそう呼びかけると、テーブルにもともとあったがさらに次々と美味しそうな料理が出て来た。
「とても美味しそうですね。」
そう言いって目をキラキラされながらも、周りとは対処的に行儀の良かったシャーロット。
アルゴンは既に来たものから順に次々に好きに食べていた。
2人共食べ始めたし、僕も食べるぞ!!
「美味し〜い。」
目に入った物から色々と食べてみたが、全てとても美味しかった。
僕らもご飯を食べ始めた事で席などグチャグチャに皆は好きな席に移動したりし始める。
アルゴルは結構1人でご飯を夢中に食べていて、シャーロットは5番隊の女性陣の所。
僕はご飯を食べながらアルさんの近くで冒険談や騎士団での仕事などの話を聞いていた。
―1時間ほどそんな感じで食べたりを続けた―
「アルさんはお酒は飲まないのですか?」
女性陣チームに居たシャーロットがこっちに来てアルさんに質問した事で一気に話の内容は変わる。
「えぇ、私はそんなにお酒は好きではないので。」
アルさんはそう答えた。
なんか…良かった。
ハーフエルフで成人していて僕よりも年上と言っても、なんだか童顔で僕よりも子供な見た目のアルさんにはお酒を飲んでほしくないし。
「ベルガさんってどんな方ですか?」
続けてシャーロットは質問する。
ここまでタラタラ食べていた僕もベルガさんの話になって(気になっていたので)食べるのをやめて話に耳を傾けた。
「あの方は魔法を使う事が出来ます。 ただ、職業的には僧侶ということになっています。 それとですけど、そんなに強い魔法は使えないとおっしゃっていましたね。」
アルさんは「確か…」と言いつつ、しっかりと答えてくれる。
アルさんがお酒を飲んでいなかった事でかなり信頼出来る話だった。
それにしても…この世界に来て始めて僕以外の魔法使い!?
強い魔法が使えないと言っても、魔法を使う原理は僕よりも詳しいはず…彼を頼ってみようかな?
「でもですね、ベルガさんはもう70歳を超えてるんですよ確か…。 魔法が使える人があまりにもおらず…しょうがなく隊長をしていただいている状況ですね。」
アルさんは「私は400歳超えてますけど(笑)」みたいな感じに軽い雰囲気でそう話す。
アルさんが陽気な感じに感じるのは…お酒は飲んでないけどこの場の雰囲気に当てられたみたいな物だろう。
というか魔法使いという事以上に衝撃的な事だ。
本当に70歳以上とは…。
僕らと冒険中に何かの拍子で死んじゃったりないよね…?
そんな事を考えると、そこからはもう衝撃的過ぎてそんなに話は聞けていなかった。
魔法が使える人があまりにも少ないと言っても、流石に何で70超えてる人に隊長やらせてんの?
とかをずっと考えていたのだ。
また少し時間が経つと、
「それではそろそろお開きにしますか。」
アルさんが言った。
解散の時間である。
確か…その後、アルさん達5番隊の皆は僕らを僕らの宿まで送ってくれた。
だが、さっきから僕の心の中ではかなりの不安があったのでそんなに覚えていない。
70歳の人が仕切っている騎士団…大丈夫だよね?
という不安であった。
宿に着くと、アルさん達5番隊の人達はかなり酔っぱらいながらも熱烈に僕らの事を応援して励まして送り出す声をかけてを繰り返してくれた。
アルさん達とはここでお別れ。
せっかく少しならコミニケーションが取れるようになったのに…。
そんな感情が別れの今で出てきた事で、ベルガさんショック(70歳の隊長さんについて考える事)によって思考が終わっていた僕はこの時しっかり気を取り直して、アルさん達に心から「さよなら」と「ありがとう」を言ったのだった。
気を取り直してしまった後は70歳の人の騎士団なんかは考えたくなかったので、いつも通りの現実逃避をしてそのまま寝てしまった。




