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厨二病なのは認めるけど、本当に冒険したいわけじゃない!  作者: 水希
第2章 厨二病勇者、旅に出る!
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第10話「伝説の剣を抜く!?」

「とても古い遺跡と言っても、かなり有名な場所なんですけどね。」


 僕が「古代のゴーレムとかと戦わないよね?」と、ビビっていたのが伝わってしまったかは分らないがそう付け加えてアルさんは説明した。


 言い方的に、地球でいうピラミッドとかみたいに文化遺産的な物だろうか?


「まぁ、直ぐに着きますよ。」


 そう言ったアルさんは何故か砕けたやる気がないような感じだ。


 そもそも、今日のアルさんは全体的に(言葉以外でも)砕けたようなリラックスしているような感じがする。

 昨日何かあったのだろうか?

 

 …そんな事はともかく、ギルドから門とは逆方向へ少し歩いて行くと古い感じの建物が見えた。


「あの建物ですね。」


 アルさんがそう言ったので、あの建物で確定だな。


 見た目はイタリアのローマにあるコロッセオ。

 大きさ的には、本家のコロッセオよりも1周りくらい小さいくらいだろう。


 しかも、そのコロッセオの中にはラフな格好の人が入って行くのが見えた。

 何かの調査員にも見えないので…本当に観光地的な場所なのだろう。


 こんな観光地的な場所に冒険に役立つ物があるとは思えないのですが…。


「あ! 私知ってますよこの遺跡。 こんなにも観光地なのだとは知りませんでしたけど…。」


 シャーロットはダンジョン遺跡みたいなのを想像しできたのだろうか?

 遺跡については目をキラキラさせて見ているが、観光客が居る事には少し落胆している様子だ。


 でも…考えてみると地球での遺跡は探検し尽くされていて観光客も沢山居る。

 おそらくこの遺跡もそんな存在なのだろう。


 こんなにも古そうな遺跡なら、何より観光地として街のお金にもなりそうだし。


 さっきまではゴーレムとかと戦うのかとか考えていたけど、絶対にない雰囲気。

 さらに、ここには伝説の剣とかは本当になさそうである。


「着きました。」


 アルさんがそう言った。


 今僕らが居るのは、このコロッセオが初めに見えた位置からグルっと周った反対側で、この遺跡に入るための入場門がある所だ。


 何度も言うが、完全の完全に観光地である…。


「この建物の丁度真ん中に伝説の剣が刺さっていると有名ですよね!!」


 入場門をくぐるなりシャーロットはとても興奮してきた。


 こんな観光地でもら伝説の剣がちゃんと埋まってるんだ!?

 と、僕はとてつもなくビックリである。


「中に入りましょうか。」


 と、アルさんだが…やっぱり何故かテンションが低い。


 アルさん以外の騎士の人はテンションが低かったりはしないので、本当に昨日何かショックな事でもあったのだろう。


 そして僕も門をくぐり中に入ると、コロッセオの中心部にあった岩に剣が刺さっている事が確認できた。

 剣の形は中世のロングソードのような、アニメではエクスカリバーなどと言われそうな見た目だった。


「アレはとても昔の前任の勇者様が使われたと言われる剣ですよね!」


 シャーロットの目は輝いており、とても興奮していた。


「まぁ、そうですね。」


 と、やはりアルさんからはテンションの低い反応が返ってくる。


「うん。そうだね〜。」


 そして何故かアルゴンまでもが興奮している子供に言うような感じで、テンション低くそう答えた。


 アルゴンもかよ…シャーロットと2人との温度差は何なんだ?

 アルさん以外の騎士の人はシャーロットほどではないにしろ、興奮気味に見えるんだけどなぁ…。


「さぁ約剣(エクスカリバー)さん、剣を抜いてください!!」


 と、急に僕の手を引いて僕を剣の前まで連れて行くとシャーロットはさらに興奮して言った。


 観光地のオブジェ的な物を触るのは禁止だろ!?

 シャーロットは何を言ってんだ?

 僕はシャーロットの行動に全く理解出来なかったのだが…


「勇者様、許可は国王様から頂いております。 さぁ、お願いします!」


 騎士の1人がシャーロットの後に続いてそんな事を言い出したのだった。


 本当に僕が抜く感じですか…。


 そして、観光客達は剣の前でそんな事を言っている僕らに視線を向けてくる。


「勇者様、今日ここに居る観光客達はあなた様が剣を抜くのを見に来た人達だけですので、遠慮なくどうぞ!」


 次に他の騎士の人がこの状況を僕にそう説明してきた。


 どうやら本当に僕がこの剣を抜くようだ。

 それより…僕が剣を抜くのを見になんでこんなにも(100人くらいそこには居た)人が居るんだよ!?


 なんで有所ありそうな遺跡のオブジェを壊する行為をこんなにも大勢の人の前でやらないといけないのか…。


 「これは騎士の人達が暴走しているだけではないか?」僕はそんな希望にかけて5番隊の隊長アルさんに視線を送る。


「私は特に言いませんが、勇者様に任せますよ。」


 僕から視線が来ていると気が付いたアルさんは苦笑いしながら、特に言いわないとは言っているが何か言いたそうな顔でそう言った。


 本当に抜くのか…。

 嫌だなぁ〜、こんな大勢の前で。


 僕はそう覚悟が決まらなかったので、ひとまず時間を稼ぐためにも何か言いたそうなアルさんの所へ行き


「アルさん、何か言いたい事があるのなら教えて下さい。」


 ときいた。


 アルさんは周りを見渡して、とても近くには人が居ないことを確認すると


「他の人には言いづらい事なのですけど…その剣は嘘っぱちな物なんですよ…。」


 小さな声で大きな衝撃的な事を僕に話したのだ。


 …嘘っぱちとは、どういう事だ?

 そんな疑問だけが頭の中に浮ぶ。


「この剣をここに置いた人はですね…先代の勇者様でもなんでもなく、7代ほど前のこの国の国王様なんですよ…。」


 アルさん…何を言っているのだ?


 頭がショートしている僕には構わず、アルさんは話を続ける。


「私が直接的に知っている訳ではありませんが…エルフの国では当たり前の話なので確かです。」


 アルさんの言う、長生きのエルフの国での常識というならおそらく正しいのだろうという説得力がある。


 でも、そうなのか…伝説の武器ではないという絶望感もかなりあるな。


「タウンに来ることは国王様の命令でしたので、来るしかありませんでした…。」


 じゃあタウンに来なくても良かったじゃん、と思っているとそう説明があった。

 確かに国王様の命令ならば、この国に勤めている→実質国王様に仕えているアルさんは「Yes」というしかなかったのだろう。


 ていうか、今の国王様は剣が偽物と言う事は知らないのか…。


「なので、剣を抜くかどうかは約剣(エクスカリバー)さんが決めて下さい。」


 最終的にはアルさんはそう言って僕に判断を任せた。


 僕はどうすれば良いのだろうか?

 シャーロットはキラキラして「早く抜いてくださいよ!」という感じだし…。

 周りの観光客達や騎士の人達もシャーロットと同じで盛り上がっている。


 でも…伝説の剣でも何でもなかった訳だ。

 簡単には抜けそうだから適当に抜いてこの場を収めてもいい。

 だが、そのせいで魔法使いなのに嘘っぱちの剣で敵に突撃しろなんて言われたらたまったものじゃない!


「さぁさぁ、約剣(エクスカリバー)さん、早く剣を抜いて下さい。」


 僕が考えている間も、割とさっきからシャーロットは急かしてくる。


 そう言われても悩んでるんだって。

 う〜ん…。


 ……決めた。

 僕は適当にかっこいい理由を付けて抜かない!!


 面倒くさいのは観光客にシャーロットが「勇者様が今から抜くよ!」と言って周った事で、さっきよりも周りが盛り上がってしまっている事だ。


 シャーロットだけなら抜かないって事を何とか簡単に丸め込めただろうが…。


 まぁでも、適当な理由も思いついたので剣はやっぱり抜かない。


 僕は剣が刺さっている岩から反転してシャーロットの方を向いて


「シャーロット…俺はその剣を抜かん! 何故なら、俺が真の勇者であったならその剣がなくとも魔王を倒せるからだ!」


 そう大きな声で話し始める。


 僕の大きな一言によって、周りの人が僕の方をさらに一斉に見た。


 僕がそう話したことで、シャーロットや周りの人は「はぁ!?」という感じを出している。


 ここで怯んだら1番駄目なので僕は続けた。


「そう、コレはあの女神からの試練なのだ!」


 僕が女神と言う言葉を出した事もあり、さらに周りの人には疑問が浮かんだ様子。


 だがやっぱり僕は怯まず続けて、


「あの女神は剣に頼らず、俺が自分の力で魔王を倒せる勇者なのかを試されているのだ!!」


 ドーン!!


 そんな効果音が付きそうなくらいに堂々と話した。


「「お〜!!」」


 僕の演説が終わると同時くらいに、周りに居た人達がパチパチパチと拍手や歓声を上げてくれた。


 そんなに凄い演説でもない気はするが…なんとか勇者としての面子を保てたようだ。


「抜かないんですか…?」


 周りとは対象的に、僕の演説に惑わされずにテンションがガクンと下ったシャーロットをなだめるのはとても大変だった。

 そう、かなりとてつもなく…。


「ソッチを取りましたか…。」


 シャーロットをなだめ終わった頃、アルさんが僕の方に来てそう言った。

 ソッチというのは剣を抜かない事だ。


 アルさんとは少しそうして話し合ったのだった。


 また少ししてからコロッセオに入る頃テンションが低かったアルゴンはどうしているのかと探すと、アルゴンはさっきまで僕が居た剣の前で立っていた。

 そしてアルゴンは剣に触ると、「あ!?」と言いながら剣を一回軽く抜いてしまったのだ。


 その時のアルゴンはすっごい驚いた顔をしていて、他の人は見ていないかとキョロキョロ。


 幸い誰にもバレる事なく剣をまた差し込めたようだったが、それから数分間アルゴンは人に話しかけられるたびに「伝説の剣? 俺知らない。」と言い続けていたのだった。


 後々考えると、多分なんとなく触ってみたら抜けちゃったみたいな感じだろう。


 この一件を見ていた僕には、こんな簡単に抜ける剣が伝説の剣は絶対にないという感想だけだった。


 さらに少しすると、用はなくなったので皆コロッセオの外へ出始めた。




「5番隊の皆さん、集まってい下さい。約剣(エクスカリバー)さん達もお願いします。」


 コロッセオの外へ僕らや騎士団の人達全員が出たのを確認したアルさんはそう言って騎士団の人達を集めた。


 急にどうしたのだろう?

 僕が剣を抜かなかった事を騎士団の人達に説明でもしてくれるのだろうか…でもさっきこの人達は文句を言ってなかったし…。

 なんだろう?


「これからもう、私達王国騎士団5番隊は戻ります。」


 急に、アルさんはそう言ったのだった。


 場所によって一緒に来てくれる騎士団の隊も変わるとは言われていたけど、かなり急な事で僕の頭は混乱中。


 ひとまず考えるのを辞めようか…。

 てか、アルさんの隣に人が居るな。


 年はおそらく70歳くらいの身長は高くて優しそうな顔をしたお爺さんが。


「5番隊の皆さんは知ってますね。 約剣(エクスカリバー)さんは分からないと思うので自己紹介してもらってもよろしいですか?」


 アルさんはそのお爺さんにそう言ったが、失礼だけど誰?

 誰かこの中のお祖父さんか、どっかのお偉いさんだろうか…。


 僕は「もしかしてアルさんのお祖父さ…いや、アルさんはハーフエルフだから違うわ!」などと適当に考えていた。

 そんな時、


「私は王国騎士団4番隊の隊長をしている()()()です。 よろしくお願いします。」


 そうベルガと言ったお爺さんは衝撃的な事を話したのだった。


 このお爺さんが騎士団の4番隊隊長!?

 モンスターに会ったらショックで死んじゃいそうな歳だよね、多分…。

 う〜ん…実はエルフなので、まだそこまでヨボヨボの歳ではありませんとかか…?


「アルさんはもうここでお別れなんですか?」


 僕がベルガさんの事を衝撃的に考えていると、シャーロットが寂しそうに言った。


 僕も普通に僕も寂しいが…突っ込む所は別だろ。

 ベルガさんについて突っ込んでくれよ!


「はい。 スモールシティから勇者様に着いて一緒にここまで来ましたが、各隊に担当の地域がありまして…もちろん5番隊にも担当の地域があります。ずっとそこから離れている訳にもいかないので、各隊交代交代で勇者様と一緒に旅をする感じなんです。」


 そうアルさんは寂しそうな顔をしながら教えてくれた。


 担当地域、それならしょうがない気がする。

 …いや、魔王城からも距離あるわけだし、この国かなり平和じゃん…。

 要らないだろ担当地域…。


「ということで明日から約剣(エクスカリバー)さん方はこちらの()()()さんと4番隊の皆さんと一緒にクメシアルを目指しながら、途中にある村々に寄ってもらいます。」


 アルさん…「ということで」ではないから!

 僕まだ状況が理解出来てないから!

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