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厨二病なのは認めるけど、本当に冒険したいわけじゃない!  作者: 水希
第2章 厨二病勇者、旅に出る!
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第7話「ただただタウンに向かって。」

 休憩だとアルさんが言い、皆が荷物を置いて一段落付いた頃


「では、今日も私達がご飯を作ります。 コメスさんもお食べになりますか?」


 そうアルさんが言って、コメスさんが「はい」と返事をした事で今日も騎士団の人達が作ってくれる事になったのだが…。


「この俺が今日は素晴らしい物を作ってやろう。」


 僕はそう今日の晩御飯の準備をかって出た。


 何故なら、アルさん達騎士団が作ってくれたご飯は美味しいし何より僕としては楽。

 だが、今日僕は皆がミノタウロスと戦っていた時にただ見ていただけ。


 勇者が見てただけというのを考えると、流石に僕にも罪悪感が湧いてくる。


 それに、流石にもういつものご飯は飽きてしまった。

 コメスさんも色々と食べ物を持っていたようだったしで、自分で作ろうと思ったからだ。


 騎士団の人達には少し移動してもらったので、焚き火の所(基本的に料理をする所)には僕とシャーロットにアルゴンの3人しか居ない。

 ちなみに、何でアルゴンとシャーロットがここに居るのかは分からない。


 何を作るのかと言う事だが、コメスさんに食材を確認したところ牛乳があったということでシチューを作る事にした。


 どうでもいい事だが、シチューにはパンではなくてご飯を入れる派である。

 だが残念な事に、お米はなかったのでパンをつけて食べる事になるだろう。


 ちなみになぜ僕が料理を出来るかというと、地球に居た頃に一時期だが料理にハマっていた頃があったからだ。


 コレは厨二病とかは全く関係なくシンプルにハマっていた。

 きっかけは、両親が家に居ない事が度々あったので自炊してたらそのままハマった感じだったと思う。


 料理番組名ではないので作る行程は基本カット。


 僕が作っている途中に、真横でシャーロットが調理行程をチラチラ見てきたりがあった。

 なのでシャーロットが焚き火の所に残った理由は料理に興味があったからだろう。


 シャーロットの理由は分かったが、アルゴンは調理を見てきた事はなく話しかけてもこなく単に居るだけだったので、なんでアルゴンが焚き火近くに居たのかは謎である。


 僕が牛乳を入れる行程に入った頃、


「何を入れているんですか?」


 チラチラ見ているだけだったシャーロットがそうきいてきた。


「え…牛乳だけど!?」


 「急にきくな…。」僕はそう思いながらもシャーロットに返す。


「牛乳ですか!?」


 僕の答えを聞いたシャーロットの顔は驚き1色。


「…マジ!?」


 座っていただけだったアルゴンも、急にそう驚いた様子で声をかけてきていた。


 シャーロットとアルゴンの反応的に…この世界にはシチュー的な牛乳を使う料理はない!?

 口に合うか?


 まぁでも、(日本で)シチューが嫌いと言う奴は居なかったし大丈夫だろう。

 それに、今更別の料理に変える技術もないし…。


 そんなこんなでシャーロットとアルゴンの反応は無視してシチュー作りを続けた。




 牛乳を入れてから適当な時間煮込むとシチュー作りは終わり、完成した。


 貸して貰った包丁はすっごく切れ味が良くてビビったりもしたけど無事に美味しく出来ただろう。


 味見もして僕的には美味しかった。

 地球で作る材料とは違う物があるから、皆にうけるかと思うと分からないが…。

 ともかく、できた!


「出来たんですか?」


 僕ができたできたと、どのタイミングで皆を呼ぼうか考えている時に隣で見ていたシャーロットが料理が完成したのかと声を掛けてきてくれた。

 良い匂いもほのかにしたし、近くに居たから分かったのだろう。


 シャーロットの顔見ると、アニメだとキラキラという演出が出るくらいに顔を輝かせていた。

 

「出来たの?」


 さらにはシャーロットの声を聞き料理風景に飽きて焚き火から離れていたアルゴンがそう言ってこっちに来る。


「え、うん。」


 僕がそう答えるとさらに、


「完成したようですよ!」


 そう言って騎士団も何人か笑顔で焚き火に来た。


約剣(エクスカリバー)さん、完成しましたか?」


 続けてアルさんもやって来きてそう僕にきく。


「あぁ。」


 僕がそう答えると、アルさんがコメスさんなど離れていた人達にも伝えたことで焚き火付近に大集合。


 ここからはシチューの配膳を騎士団の人達に任せてしまい、座って食べるだけだ。




「コレは…何と言う食べ物でしょうか?」


 皆にシチューが配膳された頃、コメスさんがシチューのおわんを片手に僕の方に寄って来てそうきいた。


 コメスさんが急に来た事と、「美味しい〜」と何も考えていなかった事もあって頭の中は大混乱。

 え〜と…


「白きホワイトソースのクリーミーシチューだ。」


 僕は厨二病言葉でそう答えた。


「ほぉ、白きホワイトソースのクリーミーシチューですか…。」


 コメスさんはフムフムといった感じに色々と考えているような反応をしてくれる。


 コメスさん…そんな考えることなんてないですよ…。

 名前に関しては適当に言っただけだし。


 勇者という面目を壊さない為に、厨二病言葉を使って格好いい感じを演出してるけど…シチューに格好いいもなくね?

 少し冷静になると、僕はそう思ってしまった。


「コレを再現したいと言ったら、嫌ですかな?」


 と、少し時間が経った後にコメスさん。


 どうやらコメスさんは、シチューのネーミングとかではなくて商品化について考えていたみたいだ。


「いや、全然。」


 陰キャで断る事を知らない僕はそう答えた。


 断る事を知らないと言っても、実際シチューが商品化される事は別に嫌じゃない。


 地球には普通にある物で僕が作り出した食べ物ではないし。

 それにお金はたくさんあるので特許をとって稼ぐつもりは微塵もないからだ。


約剣(エクスカリバー)さん!! 作り方を教えてください。」


 話を近くで聞いていたらしいシャーロットが目を輝かせながら僕にそう言ってくる。


「了解。」


 騎士団の人もシチューの作り方を知りたいのか、僕が「了解」と言った途端に僕の方に寄って来た。


 その後は断る必要はないのでシチューの作り方を皆に説明しただけ。


 「パンを付けても美味しい。」的なことも説明すると、みんな速攻で試し始めて面白かった。


 騎士団の人達のガチ度、そんなに食に飢えてたのか…。


「騎士団の食事は毎回あの料理なんですか?」


 食に飢える騎士団の人達を見たシャーロットがアルさんに質問した。


「そうですね…実はもう少し簡単に作れるものですね…。」


 アルさんは苦笑いで少し変な顔をしながら話す。


「この料理、騎士団でも作っていいですか?」


 僕らの近くで話を聞いていて「簡単に作れるもの」に深く頷いていた騎士の人がそう僕にきいてきた。


 何故かかなり必死な顔をしてきいてきていたので、「いつものご飯って…。」などと質素すぎるご飯を想像しながら僕はもちろん了承。




 料理を作ってもらったからとテントは騎士団の人達が立ててくれた。


 ミノタウロス戦では全く勇者っぽくなかったが、(料理を作って)人を笑顔にする的な勇者っぽい事をしたので、ミノタウロスの事は帳消しだ!

 そんな要らないプライドを変に考えながら僕は眠りに入ったのだった。


―次の日の朝―


 朝ご飯は、いつも通り騎士団の人に作ってもらう。


 またシチューを作って下さいと言われたけど、朝からシチューってのは少し何か違うと思ったのと何より僕は起きたばっかりで眠かったのでパスした。


 それに、昨日かなり牛乳を使ってしまったために今日もシチューを作るには足りなかったからだ。


「今日もコメスさんにパンを貰えたので…まぁジャムでも塗って食べて下さいね。」


 と、僕にアルさんがパンとジャムと(ジャムを塗る用の)スプーンを持って来てくれた。


 僕の少し離れた所でパンを食べながら「またシチュー食べたいな…。」とシャーロットが言っていたりちらほらそんな声も聞こえはしたが、どちらかといえばシチューは夜ご飯のイメージである。


 そして僕は人に頼まれないように(頼まれると断りづらいので)みんなから離れた所で朝食を皆さっさと食べ終わった。

テントを畳んでこの場所をもう出発するらしい。


「あれ…俺、ご飯食べてないんだけど…。」


 皆が畳み始めたテントの中から、アルゴンが出て来てそう言った。


「あ…、忘れてましたね…。 すみませんでした。」


 シャーロットが口を開けて「あっ!!」という顔でそう言って謝ると、その後アルゴンが


「もう、何してくれてんの?」


 と、シャーロットに文句を言う。


 シャーロットはかなり可哀想だと思ったので、アルゴンの肩に手をポンっと置いてシャーロットに文句を言っているのを止めた。


 シャーロットと同じで僕も、おそらくアルさん達も忘れていた気がするのでシャーロットだけが文句を付けられてるのはね…。


「まぁ、良いや。」


 いつも通りアルゴンは少し時間が経ったらそんな感じに怒りが収まっていた。


「アルゴンさんには本当に申し訳ないことをしましたね。 テントは私達がやりますのでアルゴンさんはパンを食べ出てください。」


 アルさんにそう言われたアルゴンは満足そうに岩に座ってパンを食べている。


 僕らが悪いからアルゴンが何もせずにパンを食べているのには納得だけど、だけど…ニヤニヤしながらこっちを見てるのは、正直少し頭にきた。


 アルゴンは毎回こういう行動は悪意があってやってんのか?


 そうこうしている内にテントを畳み終わったので、その場を出発する。


「さぁ、出発しましょうか。」


 アルさんが声を掛けた事で皆は歩き出し、コメスさんの馬車も出発した。




―出発してからかなり進んだ頃―


「コメスさんとはもう少しでお別れですね。」


 シャーロットがそう切り出したのだった。


 僕は「マジか!?」と一瞬思ったが、陰キャな僕からすると知り合ったばかりでそんなに仲良くないコメスさんとの別れは何とも言えない。


「確か…クメシアルに勇者様は立ち寄る予定がありましたよね? 直ぐにまた会えますよ。」


 と、コメスさんからはそう返ってくる。


 …クメシアルに多少は寄るという予定がバレてるけど良いの、それ?

 仮にも、他国の住民だし…。

 ラファルク王国の情報網的にはけっこうな問題なんじゃない?


「あの〜アルさん? 私達の旅の予定が知れ渡っているみたいな感じなですけど、良いのですか…。」


 僕が不安に考えているとちょうど、シャーロットがコメスさんには聞こえないような声でアルさんにコッソリきく。


「あぁ、ソレは国王様が他の国にもある程度発表されたので問題ないですよ。 ラファルク王国以上に魔王に苦しまれている国が多いので。」


 アルさんいわく、らしい。


 人類にとっては希望になるいい事らしいのだか、僕は思ってしまった。

 「それは僕が通る予定の道を魔王サイドが知っちゃったわけだ。 つまり、魔王の手下なんかが待ち伏せしてるかもしれないという事…。 国王様、何しての!?」と。




―また結構進むと―


「この度は誠にありがとうございました。 貴方様方のおかけで特に大きな怪我などなくここまで来れました。」


 2つに分かれている道が見えて来ると、コメスさんがそう僕らに言ってくれた。


「いえいえ、ご謙遜を。 こちらこそ、色々とありがとうございました。」


 と、アルさん。


 アルさんはコメスさんの言葉をご謙遜とか言っているが、ミノタウロスとの戦いは凄かった思うよ。


 アルさんはとても謙虚だ、というか過ぎる。


 そして別れ道は直ぐそこ。


「では、ここまでありがとうございました。勇者様、クメシアルにお越しの際にはどうぞ、カール商会をお願いしますね。」


 コメスさんはお礼を言いつつお店の宣伝も挟むと去って行った。


 異世界系のアニメでの別れは湿っぽい感じだったが、この世界では全くそんな事はない。


 僕がスマホがないこの世界で仲の良い友達と別れるとしたらシンミリ別れるだろう。


 この世界の人はこういう事(人と知り合っては別れてという事)には慣れてるらしい。

 それに、かなり運命的にバッタリ会うことがあるとか。


 騎士団の人の中にはこれについて、神話の女神様のおかげです的な事を言っていた人も居たが…「あの少女に限ってそんな事あるのか?」と僕は思った。


 話は変わるが、僕はこのパーティー(アルさん達騎士団を含める)なら魔王城まで旅をしてもいい気がしてきていた。


 今はもう結構、少しは皆(騎士団の人達)とも話せる…少しは。

 だがタウンに着けば5 番隊の皆と別れて別の隊の人達と出発しなければならない。


 コレを提案したのは国王様だっけ?


 要らないよこんなこと!!

 と言ってやりたいが僕の首が飛んでしまう事に成るかもしんない。

 現にアニメだとそういう展開もあるし出来ない、けどなんでいちいち別れる必要があんの?


「あ…すみません。 予定違いでした。 今日のもうすぐタウンに着けます。」


 急に集団の先頭を歩いていたそうアルさんが言った。


 僕やシャーロット、アルゴンの反応的には


「…!?」


 こんなだったと思う。


 何をどう間違えればこんなにも予定がズレるのだろう?

 ミノタウロスとの戦闘もあって疲労しただろえし、てっきり少し着くのは遅くなると思い始めていたのんだけど…。


 せっかく5番隊と離れるのが寂しいみたいな雰囲気を少しずつ出そうと思っていたのに。

 一気に出していくのは、少し打ち解けて来たとは言っても勇者像が壊れかけるからできない…。


 でもタウンには4日間位は居るって言ってたしその内出せばいっか!


 と、まぁそんな事を考えている間にかなりの時間が経っていたようで、もうタウンと思われる街の外壁が見えていた。


 最初にタウンを見た感想は単純にデカいだった。

 スモールシティという小さい町しか見ていなかったのだから必然的にそんな感想になる。


 タウンの大きさを地球で例えるのなら、分かりやすいのだと東京ドーム…は僕が分からない。

 う〜ん、普通に考えても20万人くらいはキツキツにもならず住めそうなくらい大きい。


 ちなみに、スモールシティは見た感じタウンの10分の1くらいの大きさで、1万人も住んでなさそうだった。

 …スモールシティがシティって着くのはおかしくない?


 そんな事を考えている内にタウンの入口へついてしまった。


「着きましたのでまずは門の所で検問をしましょう。約剣(エクスカリバー)さん、申し訳ないのですが受けて下さいね。 規則になっていますので。」


 と、申し訳無さそうな顔でアルさんはそう言った。


 申し訳無さそうな顔だが、正直別に不快でもなんでもない。

 検問…日本で言う手荷物検査みたいな感じのやつだろうし。


 犯罪対策的なのはしっかりとしてるようだ。

 まぁ、検問をした所で冒険者とかは普通に剣とか弓とか持って入っているのが見えるが…。


「え〜と、ラファルク王国騎士団5番隊隊長のアルさん!? お疲れさまです!」


 門の所で検問をするためにそこに居た騎士の人がアルさんの事に驚きながらも挨拶をする。


「はい、お疲れさまです。」


 驚かれた顔を見てた軽く笑った後にアルさんはそう優しい声で答えた。


「貴方様が勇者の約剣(エクスカリバー)さんですね。 お疲れさまです!」


 検問の騎士の人が僕に挨拶をすると、ガタイの良い人が門の反対側からこちら側に来てその人も僕にペコっとお辞儀をして


約剣(エクスカリバー)様、お疲れさまです。」


 挨拶をしてくれた。


 様を付けてもらえて少し嬉しかったが、そんな事よりも僕は、凄くガタイの良いイカツイ人が僕にお辞儀をした事に対してメチャクチャビビっていた。


「では、検問をお願いします。」


 僕がビビっているのに気付いてくれたのかは分からないが、アルさんがそう言ってくれた。


「はい、失礼しました!」


 そう言ってずっとお辞儀を続けていた門番の人は僕たちの検問をしていく。


 検問の内容的にはマントを脱がされて何か隠してないかとかをチェックされた。


「問題なしです、どうぞお入り下さい。 ようこそタウンへ。」


 検問が終わると、門番の人達はそう言ってまたペコっとお辞儀をして僕たちを通してくれる。


 建物とかの雰囲気は、地球では産業革命後くらいの時代の建物のイメージに近かった。

 レンガ造りで2、3階立ての建物もみえる。


 でも車とかはなさそうな感じ。

 この世界は地球でいうと大体いつぐらいの時代なんだよ…そう思いながらも、この世界に来て初の大きな()に入ったのだった。

補足。

シチューの作り方の説明は、厨二病言葉だけでどうにかこうにか頑張ったようです。

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