第1話「厨二病、異世界に行く。2」
「…何だったんだ?」
僕は目を瞑っていたのに何かが光った事が分かるレベルの強さの光に少しビビリながら目を開けた。
そして目を開けると同時に、また驚きビビった。
もの凄い光のせいで今は目のピントがぼやけて大まかにしか分からないが、目に10秒前までの景色は映らないのである。
「これが家の布団の中ならば最高だったのに…。」
ピントの合わない今は無断話を少し考えれた。
だが、目が元に戻ってくるに連れてそんな無断は考えられなくなっていった。
目のピントが合い目に映ったのは、身長140くらいで10歳ほどに見える白い羽衣を纏った白髪の少女が目の前に立っている姿。木などは何一つなく、宇宙空間が広がっていいて僕は宙に浮いている感じのこの空間だった。
凝ったドッキリではないのは一目瞭然。
そこは最新の科学技術でも無理な神々しさが少女とこの空間から、平均的な僕でも感じれたからである。
何か光ったと思ったら無音の宇宙空間に神々しい少女と共に浮いている…深く考えれば考えるほど、脳は昏迷していった。
僕がそんな状況の中、
「こんにちは約剣さん。」
神々しい少女は口を開けると、とても優しい口調で目を丸くして突っ立っていた僕に話しかけた。
声は1/fゆらぎなどと言われるような、リラックスしてしまうような物だった。
「あぁ、この約剣に何か用か?」
頭が混乱して普通は何も出ずに固まってしまっただろう。
だが今のこの状況、僕は1/fゆらぎからか頭は静かで冷静にいつも通りの行動を取ってしまったのである。
そう、中二病セリフにポーズをだ。
(ちなみに…厨二病ポーズとは基本的には足は開いて仁王立ち、右手をパーにして左目に被せる、左手は自由、といった厨二病患者にはよくある感じのポーズである。)
「へ〜、驚いたりはしないんですね!その理解力に感激です。今日1日あなたを観察してきて確信しました。あなたこそ世界の救世主となる人!あなたのその性格にピンときましたから♪」
少女は普通の小学生達が親に何かをねだる様な万部な笑顔で首を軽く傾け、座っている僕のためにしゃがみ、目線を合わせさらに説明を続けた。
僕は少女が穏やかな口調で話している話を、この状況を理解しようとカオスで穏やかとは真反対の頭で聞いていた。
そして
『観察していた!!??世界の救世主!!?? 性格にピンときた!!??』
若干諦めの入ったそれだけが今出た一生懸命な感想だった。
「あなたをこれから異世界に送ります。」
少女は考える事を止めかけている目の前の人の事などお構いなしに話をつづける。
「うん。うん。」
僕は少女は普通ではないと言う事を頭では理解していた。だが、さっきその少女から向けられた普通の子供っぽい笑顔。
そこから体は小さい子への話し方を出してしまった。
「理解が早くて助かります。」
さっきとは違い、子供には出せない満足気だが穏やかすぎる笑顔を浮かべた。
「その世界では魔王のせいで人々が苦しめられています、倒してください。見事魔王を倒された際には、何でも一つ願い事を叶えて差し上げましょう。 もちろん、家に返しても可です。」
スタッと少女は立ち、しゃがみ込んでしまっていた僕の周りを大股で歩きながら説明をした。
「それでは頑張って下さいね。」
説明が全て終わると少女は僕の目の前に立ち、手を僕に向け振りだしてしまった。
『異世界転移ってこと?ろちょっと待て展開が早過ぎ…何にこれ!?』
一生懸命絞り出した答えは異世界転移。アニメの王道系だ。
が、完全に状況を整理する前に僕はこの空間に来た時と同じような光に包まれてしまった。
「これは本当の本当に異世界転移…?今の学校生活などに不満があるわけではない…わけではないけど、異世界などには別に行きたくない!ねぇ、ちょっと!!」
『本当にまずいかも…。』
ただそれだけを理解して、本能的に厨二病なんか捨てて僕はそう叫んだ。
本当に困っているんだろうな、助けるぞ!という人の本能を刺激するような顔と声で。
だが、この神々しい少女は人ではない神々しい何か。
人の本能なんて持ち合わせていなかった。
そしてさらには約剣の姿は眩しい光に包まれていた事で少女には見えず分からない。また、人間の声はこの少女からすると聞こうとしなければただの騒音になってしまうので、聞こえなかったのである。
「あぁ、それとその世界では魔法を信じる心がないと魔法は使えませんのでご注意を。魔王は魔法でしか倒せませんので〜。」
少しずつ少女の声が小さく遠くなっていく状況の中、少女の急に思い出したかのようなだけが一方的にこの空間に響いた。
『信じる心がないと魔法は使えない? 何を言っているんだあの少女は。』
頭で考えるためのキャパなどとうにぶっ飛んだ。考えが浮かぶだけで口は動かない。
「それでは頑張ってくださいね。」
「え…ちょっ」
口がやっと動いた時には時すでに遅し。
ゆったりとした少女の声に(この時一瞬光が弱まってことで見えた)笑顔で手を振っている少女の姿。
それが一瞬目に映り聞こえたかと思うとキーンと耳鳴りがし、さらに一瞬意識が飛んだようだった。
―ピカッ―
少ししてとりあえず目を開けると、僕は固い地面の上にあぐらのような格好で座っていた。
「ここは?」
まず出たのは呆然としたシンプルな地声である。
そして目を開けると日本にはない形の木、日本では本当の田舎にでも行かないと見ないような建物達が見えた。どう考えてもここは日本ではない場所。
とにかく頭では地球上のどこかであることを祈っていた。
『本当にあの少女がやったのか?
本当にドッキリでも何でもない?
本当に異世界だとしたら笑えない。』
「お空が綺麗だぁ…。」
次に二語目としてはIQが一桁代の様な声。上を見上げるとそこには日本と何ら変わらない空があった。空は地球かもしれないという希望持たせてくれた。
「本当に何なんだ。神々しい空間に少女といい…。本当に異世界だとしたらやばすぎる…ゴニョゴニョ…。」
そして人間が窮地に行き着いた時の行動よりも、とにかく少女や起こったことなどを色々と大きな声でブツブツ言った。
すると、予想外にも近くにあった建物から人が出て来て僕の方へ寄って来てくれたのだ。
まぁまず、人が居ることは良い事だろう。
「まぁそして、メチャクチャ凝ったドッキリでした〜!! は? いや〜遅いねぇ〜!」
僕は人に見られていながらも恥を我慢してノリノリに1人ノリツッコミをし、今もなおそれだけを待った。
…が、空を再度見上げるとさっきは地球かもしれないという希望を持たせてくれた空がその希望をぶっ壊した。
「鳥が群れで飛んで来るけど…あれ、ニワトリじゃん!?」
「あぁ、そうだな、ニワトリだ!」
「ニワトリが居るのならやっぱり地球だよ!」
「いや、ちょっと待て。 …ニワトリって飛んだっけ?」
「いやいや…突然変異種だよね…?」
またさらに1人芝居をやって。そして静かに、冷静になった。
「…グスン。」
無理である。
空を飛ぶニワトリ達しかり、ここが地球だと証明出来る事が何一つとして存在していない。
「人を異世界に飛ばせるほどの力があるのなら本心くらいなら簡単に分かるだろ…。僕は表面上だけの中二病なんだよ!!異世界に行きたい願望がある奴を選んでって!」
そしてついにここが異世界であると嫌々ながら認め、叫んだのだ。
「本当にふざけんなよ…あのクソ少女!!」
と。
こうしてお先真っ暗な異世界冒険ストーリーが幕を開けてしまったわけである。
本当はニワトリは少し飛べたりするらしんですけど…地球でも飛べない事にしてください