第3話「地図を見る!」
今回は国とかの説明回です。
場面で言うと、ずっと座って話を聞いている感じで行動はしません。
それに、上手くまとめられず長くなってしまったので全然読み飛ばして頂いて良いです。
「ラクト、世界地図はこの家にありません? なければないでも良いのですが。」
アルさんにそう言われたラクトさんは少し考えた後、どこかから縦70cm✖横50cm程で茶色の古びた地図を持って来た。
「シャーロットさん、一旦左角を押さえてください。」
「了解です。」
ラクトさんからその地図を受け取ったアルさんはその大きな地図を目の前のテーブルにしっかり拡げて置いた。
地球の比率は海が7割、陸地が3割。
が、この地図によると比率は地球と逆の様な感じだ。
まぁつまり、陸地が大きそうと言うことである。
地図にはおそらく国名や何kmとかも描いてあるっぽいが、日本語で描いてある訳ではないから僕は良く分らないし分かったとしてこの世界の単位は理解できないだろう。
「約剣さんは転移者という事なので、国関係の説明しましょう。」
僕が軽く地図に目を通せた頃、アルさんが口を開いた。
「まず、この世界は大きく分けて9つの国が在ります。この村が在り、我々騎士団が仕えているこの国がラファルク王国です。」
アルさんはそう言うと地図の右下あたりを指で囲い、着ている甲冑の左胸部にあった国章を指さした。
よく見ると、アルさんが囲ったあたりには国境線と思われる線も描いてあった。
アルさんの説明によると、この国ことラファルク王国の政治制度は議会となっているとの事。
では疑問に思うのは「何故僕は国王様の認定勇者とかで直ぐに旅に出たのか?」だ。
そこに関してを詳しくききはしなかった。
が、話を聞く限りでは絶対王政とは行かないが、なんだかんだ言って国王様の発言力が最強なんだとか。
じゃあ議会なんて関係ないじゃんと思うが、国王様でも流石に国に大きく関係することは1人では決められない。
決めようと思えば決められてしまうらしいが、代々ラファルク王国の国王達が1人で勝手に大きな事を決める的なことはなかったらしく、議会で物事を決めるのが伝統になっているみたいだ。
まぁ1人で大きな事を決めてしまえば反乱が起こるかもしれない。
国のトップに立つ者として流石にそういうのは分かっているのだろう。
「ラファルク王国はこの世界の国の中でとても古い歴史があり、反乱なども起きずに内政も安定しているので国としての発言権的なものがとても高いんですよね。」
アルさんの説明が一通り終わると、シャーロットが僕の方をチラ見しながら自慢げにアルさんに話しかける。
この世界の国は全く知らないと割り切ってはいるが…シャーロットの自慢げな顔は少しムカついてしまった。
「その通りです。ですので、ラファルク王国の国王様の認定を受けている勇者様、つまり約剣さんは基本的にどこの国でも大きな街などならほとんどの方々が知っていると思いますよ。」
アルさんは少し誇らしそうに胸を張って情報を追加してくれた。
アルさんは見た目は完全に小学生程なので見栄をはっている感じに見え、なんとも可愛い感じである。
…いや、そんな事どうでもよいのだ。
アルさんは良かれと思って教えてくれたのだろう、が、僕にとっては全然よくはない。
僕の事を何万人もの人が知っている。→お腹が痛くなる情報だ。
そう、僕はプレッシャーに弱いのである。
「次に、ラファルク王国の地図で言う左上、実際の方向では西北に位置する街が商業都市、クメシアルです。」
次にアルさんは話した通り、ラファルク王国の少し左上を指で囲った。
「クメシアルは商業都市と言われる通り、商業が盛んです。商業都市なので食べ物やそれ以外にも重要な物等が多くありますよ。」
物流が良い東京は面白いし楽し場所である。
という事は…
「つまり叡智の宝庫兼、快楽地…?」
「?まぁ、おそらくは?」
僕の声の低い独り言に、シャーロットは良く分かっていない感じながらも反応をした。
「この国の政治制度は国王等は居なく、完全に議会で重要な事が議決されます。」
食べ物は凄い。政治制度は日本に近いであろう民主性。
魔王討伐に絶望したら、ここに移住しよう!
「ラファルク王国ではそこまで身分等はありませんが、このクメシアルでは簡単に言うとどれだけお金があるかで偉さが変わりますね。」
つまりは資本主義国家。日本に近い。
お金も国王様に貰っているし、本当にいざとなったらここへ移住である。
「ちなみに…奴隷等のラファルク王国では違法な事もクメシアルの表向きでは禁止と言っていますけど、裏ではそういう噂も聞くのでクメシアルに行くのなら、十分注意して下さい。」
アルさんは少し強い口調でここを話した。声は高いので異圧力はないのだが…雰囲気的には出ていた。
と言うか、奴隷か…。
現在地球上の国では完全にそんな事は違法。さらにアニメとか見る限りではそんなに良いイメージはない。
よく勇者が奴隷解放をしているが…僕にはそんな勇気はないので、移住は要検討ということで。
「そしてラファルク王国の上、方向で言う北にあるのが貴族階級の国、アルソフィナ王国です。」
今度はアニメ王道の貴族異世界恋愛シュミレーションゲーム系の国である。
が、ワクワクはたったの4割と言ったくらいだ。
僕は顔が悪い訳ではないが、恋愛アニメの主人公級のボンボンなんかが中心の場所はそんなに興味はないからである。まぁ、そんな奴に恋愛シュミレーションで勝てるわけもないからだ。
「アルソフィナ王国はかなりの貴族主義で国王の権力が強すぎるのはもちろんのこと、貴族階級の高いものだけが政治に絡めます。産まれた家門で人生の全てが決まると言っていいほどの貴族主義です。」
アルさんはこの国に思うことがあるのか、少し呆れたような感じな声のトーン。
正義感の強いアルさんがこうなのだから、やっぱり血筋こそが全て!みたいなつまらない国なのだろう。
「アルソフィナ王国では勇者様や魔法使いなど通用せず、どんなにお金を持っていようが関係がない国。他の国で産まれた者が立ち寄るのはあまりおすすめ出来せんね…。」
貴族のイザコザを見るのは楽しいだろうが…巻き込まれたくない。
アルさんも言っているわけだし、近付くことはなさそうだ。
「そうですね、ここへは絶対寄らない方が良いでしょう!」
ここで急にシャーロットだ。アルさんの言葉に強く頷いている。
何か嫌なことでもここで起こったのか?そう言えばシャーロットは出身地を隠していたな…。
いや、深くは考えずにいくほうが良い。僕は何にも考えなかった!ゴタゴタには巻き込まれたくないし、何も知らん!
「先程紹介したクメシアルの左隣の国がズティア国です。 この国は獣人種と言う、ラファルク王国や今さっき説明したアルソフィナ王国に多い人とは別の種族が住んでいる国です。 ちなみにですけど、クメシアルには多少獣人種が居ますね。」
「ケモミミ…悪くない!」
「!?…ビックリしましたよ。急に普通に(大きさの)声を出して。と言うか、やっぱり何を言ってるんですか?」
シャーロットの事で葛藤してからの獣人、ケモミミ!その上がり下がりから反応をしてしまった。
そして、何かあった時用の移住地が決まった。
絶対にここである。ケモミミはロマンなのだ。
シャーロットの反応から…ケモミミ文化はないのか?独占できるし、ここで決定である。
「この国は簡単に言うと、完全に実力主義です。 貴族やお金とか全く関係なく、力、強さが全てを決めると言われています。」
そう言えば確かに獣人種は実力主義だった気が…。やっぱり移住地はまだ保留だ。
「え〜、そして獣人種の国、ズティア国の下、南側に在る少し細長い国が…いえ、今この場所に国はありません。少し前まではありましたが、その国が反乱によって滅亡。15年ほど前にもその場所で国が滅んでいます。」
物騒過ぎると言うか、呪われてでもいるのか…。
いや…15年(最近に)で2つ。魔王の策略なんじゃ!?
「ちなみに、国が滅んだ理由は両方内戦です。」
…原因が魔王じゃないって、どう考えても魔王関係の場所の流れだった。
と言うかこれが内戦なら、魔王は何の悪いことをしてるのだろうか?
「表向きには、内戦で滅んだということになっていますが…裏では後で紹介する西の帝国や領土拡大を狙う他の国が関わっていたのかも…と。」
『あぁ、そういう…。』
内緒と言う雰囲気のアルさんに言われた事で、僕はかなり深く納得できた。
まぁ、多分魔王の可能性がどうせ高いのだろう。
「そして今そこの場所では西の帝国やズティア国、他には野心の強いクメシアルの商人達の何人かがその辺りの土地を獲得するために動いてたりしていますね。」
まぁ、これに関してはでしょうねである。
「では次に西の帝国を話しましょう。」
そう言うとアルさんは、とても大きな左のスペース(何か線が描いてあったりはしているが、この世界の字が読めないのでスペースと言っている。)を大きく丸く指で囲み、
「この大きな場所にあるのが、西の帝国です。」
冷静そうな、静かな声でそう言った。
スペースを囲ったアルさんの手を見た僕の感想は「デカい」だけだった。他に言う事が出て来ないくらいに、他の国と比べて大きいのだ。
地図を縦に4等分したら、その内の1つは全て帝国の領土というくらい(言い過ぎでもあるが)。
「この国はこの世界随一の軍事国家になります。最強軍隊ですね…。」
アルさんは少し悔しがっているのか、口が少し尖っていた。駄々をこねるようにも…。
「その軍隊で巨大な領地を手にしてきました。そして政治体制は議会等はなく皇帝が1人君臨していて…といった感じですね。以上ですね。」
アルさんの説明を理解するなら、絶対王政でその人が絶対という事。
つまり、アルソフィナ王国の様な血統が全てか、ズティアの様な力こそパワーって事だろうか。
…ん!?以上って言った?
帝国について分かっている事はそれだけ?
「それだけなの?」
ここで、この世界在住で国については知っているはずのラクトさんがとても驚いたとアルさんにきいた。
「はい、そうですね…。これだけですけど、一応は極秘情報です。軍の強さ、量、どれ1分かっていません。」
また少し悔しそうにしながらアルさんは答える。
それだけでさえも極秘情報になりえる国。
本当の本当に何1つ分らない秘密国家的なやつということになる。まぁアニメで言うと1番関わっちゃいけない国だろう。
「追加で言えることは、西の帝国には魔王も関与出来ない程の軍事力があるのだろうということです。それと、帝国は世界の先を行っていますね。」
ラクトさんとあってからは感情の起伏が結構見られたが…いつも冷静なアルさんが素直にヤバイと言っている。
僕はそのアルさんの話し方に息をのんだ。
そして、その世界最強の帝国が魔王を倒せばよくない?という疑問が生まれた。
「その帝国さんが魔王を倒してはくれないんですかね?」
物知りなシャーロットも、流石に帝国の事までは知らないらしく首を傾げている。
「そうなんですけどね…。協定でも結んでいるんじゃないの?というくらいに魔王と帝国は相容れません。」
結局、帝国については皇帝は何をしたいのか、何者なのかが分からない事だけが分かった。
そもそもだが、僕は討伐対象である魔王の正体、目的も知らない…。
王道の世界征服とかだろうけど、命をかけて魔王を倒しに行くんだから勇者(僕)には魔王の目的を伝えてくれても良いだろうと思う。モチベにも繋がってくる物でもあるのだ。
「魔王城はここですから…」
帝国の話後、少し静まり返ってしまった事を感じ取った様なシャーロットが(原因はそれと戦うかもしれないのか…と言う僕の緊張のせいである)、サラッと魔王城の場所の確認をこの場でした。
魔王城の場所はまだなの?と待っていた僕からすると、シャーロットにラッと言われテンパり物だ。
そして、肝心の魔王城は西の帝国とメチャ近い場所にあった。
魔王城は帝国がある場所から地図では少し右上、実際の方向では北東の方向である。距離感的には、地球で言う日本と中国間くらいだろうか。
本当になんで魔王と帝国はお互いにやり合わないのかが謎の距離関係だ。
「経路で言うと、タウンに寄りクメシアルを突っ切る形になるのでしょうか?」
「はい、そうなります。出来る限り道中の村などには寄ってもらう形にはなりますが、最短で行けるような経路になっております。」
『マジかぁ〜。(少し絶望)』
出来る限り道中の村に寄る。それを聞いた僕はそう思った。
道中で時間を使うくらいならその分魔王を早く倒そうぜ!と言う建前と、早く日本に帰りたいんだよなぁ…。という本音からだ。
「そして、タウンを出ますと私達5番隊とは別れて今度は4番隊の方々と。クメシアルからはまた騎士団の部隊が変わり2番隊の方々。3番隊は事情がありまして飛びます。魔王との直接戦闘は1番隊の方々とを予定しております。」
タウンからは別れると言う事を自分で言いながら、アルさんは少しシュッんとした顔をした。しょんぼりしている感じに見える。
ろ毎回アルさんが表情を変えるたびに子供の反応と合わせちゃうんだよな…。
まぁ、こう愛着を持ってくれていると陰キャの僕としてはメチャクチャ嬉しい。
「魔王との戦闘は最強と名高い1番隊隊長さんとの共闘ですか!!」
シャーロットはアルさんの話を聞き、安心した様に笑顔になった。
シャーロットがこういう反応なので僕も魔王対象について安心できた。
「アレ?さっきは゛この世界は大きく分けて7つの国が在る。゛と言っておりましたが、魔王城を国とみても6つしか国がありませんよ?」
「先が短いからってそんなに焦らないでください。今から説明しますよ。」
話が脱線してきたとこの場の皆が感じ取ってきた頃、ラクトさんがニヤッとしながらアルさんに1言。
アルさんはアルさんでラクトさんに営業スマイルと言われるような笑顔で返した。
…仲いいね。
しっかり者のアルさんだが、友達のラクトさんと話している時は見た目相応の子供っぽく見える。
と言うか、さっきの話し方的に内戦で国が滅んだ場所の事をカウントしてしまっていただけなのでは?ラクトさんもそれを思ってイジワルを言った様な感じだし。
「まず、公の場で国として公言されているのはラファルク王国とクメシアル、アルソフィナ王国にズティアそして西の帝国の5つだけですね。」
「魔王城は国じゃあないですもんね。」
「はい、その通りです。魔王城の場所は西の帝国は特に何も言っていませんが、ラファルク王国、クメシアル、アルソフィナ王国にズティアの4つの国は完全に合意で国とは認めていません。」
まぁ、急にできて尚且つ自国を攻撃してきているヤツを国とは認めたくないだろう。
ラファルク王国は魔王城からはかなり離れていて被害はなさそうだけど、他の国が襲われているから「No」と言う事だ。
「公の場で公言されているのは先程申した5つだけです。後の2つは存在を知らない方々もいらっしゃいますし、寄りもしないのでサラッとだけです。」
話し方系に伝説上の国が実は在るんです。みたいな扱いな国っぽい。
「まず1つはエルフの国です。私はハーフエルフですがエルフの国出身ですし。」
場所は、内緒なんですけど。そう言わんばかりにアルさんは机に拡げてあった地図を丸めた。
そしてそれを聞いた僕の感想としては、「場所を教えてよ!普通に行きたい。」だ。
と言うか、ズティアと違い実力主義とかではなければ普通に移住もしてみたい。
「もう1つは物語でとても有名な国ですよ。王国騎士団の1番隊隊長様は行かれた事もあると申してましたので確定です。」
「私はまぁ行ったことはありませんが…。」ラクトさんに聞かれアルさんはスッと答えていた。
「そこは天使達が暮らすと言われている場所ですね。」
それを聞いたシャーロットは恋愛アニメの夢見る乙女の様に顔をキラキラさせ、僕は「…。」一概には言えないような感情が出た。
天使と言えば、神様や女神様の部下ってイメージである。
つまり僕をこの世界に勝手に送りやがったあの女神の仲間いや、部下達が住んでる国って事だからだ。
「…以上?」
それを口に出しアルさんにきいたのは、目を大きく開き、興味がありますけどと言う顔をしたアルゴンだった。
「え、はい、説明は以上です。」
「「え!?起きてたの!?」」ここに居る全員、アルゴンが起きていた事に衝撃を受け、アルさんは少し戸惑い。僕とシャーロットは固まってしまった。
「じゃあ、もう解散だな。おやすみ!」
アルゴンは立ち上がると同時に笑顔でそう言い、家を出て行った。
「あ、アルゴンはさ〜ん!明日は明日の午後1時頃にこのラクトの家の前に集合して下さい。」
去って行くアルゴンに焦って大きな声で話したアルさん。
明日の詳細も聞けたことで僕もさっさと家を出て使って良いと言われた家で眠ったのだった。