第2話「村に着いたんでノンビリ休みたいんですけど…。」
あれから(アルゴン指示戦法が採用されてから)まる1日程が経った。
スモールシティを出発して、歩いて、夜を越して(寝て)だ。
昨日の総合歩行距離で言ったら…分からないが、時間はまる6〜7時間ほどだっただろう。
さらに歩いたのはガンガンに山道だった。街から街へ行くのなら流石に整備された道の一本あるはずなのだが…。
要は何が言いたいかと言うと、僕は今日の朝から(昨日から覚悟はしていたが)すっごい筋肉痛をくらっていた。
レベルがオカシイのだ。レベチだ。
これまでに体験した事はなかったし、したくもない程。例えるのならゾンビ映画で意識はあるが体はゾンビで足が取れたような…?まぁ、上手く言えないがそんな感じなのだ。
さらにだ。僕らは今、また昨日に引き続き森の中をドンドンと進んでいる。
こんな所に街があるとは思えないし、思いたくもない。つまり目的地は知らず進んでいる途中。
モチベーションはもうほぼなく、さっきからずっと文句と共に歩いているアルゴンと一緒にしていない事を褒めて欲しいまで来ていた頃だった。
「そろそろ第一の目的地の村に到着です!」
やっとアルさんから欲しかったはずだが正直意味の分からない言葉が発せられたのだ。
『第一の目的地の村…??』一体全体アルさんは何を申しているのだろうか?
目的地はタウンと言う街1つだったはずなのだが…。
「やっとですか〜!! もうとてもクタクタです。」
?しかない僕とは対照的にシャーロットは分かっている様子をしている。
パーティーメンバーは分かっていてリーダーは知らない。そんな事はないはずなので僕が逃避している時に話された情報なのかもしれない…。
とりあえず僕はそう勝手に決めつけ、筋肉痛、長旅、第一の目的地、色々…また村まで逃避タイムに入ったのだった。
そうこうしている内に僕の目に家の三角屋根の様な物が映り、少し経つと村の中に入った。
『やっと…着いたぁ〜!!』
「約剣さん、着きました。」
心の中で泣き崩れ、体も泣き崩れそうな僕はアルさんに声をかけられた事で持ち直した。
勇者という手前、そんな簡単に崩れてはいけない!と言う謎の意識からである。
村の全貌も見えたのでそろそろこの村の雰囲気を言おう。
まぁ前に行った村達とほとんど同じだ。レンガではなく木の家で、15から20くらいの家々が集まっている。
どうでもが、僕の頭の中には村を自分の目で確認した事で1つの考えが浮かんだ。
「もう冒険…終わりでよくない!?」と。
そのくらい村に到着したという感動は大きかった。
が、(アニメの)常識的にこの村の村長さんに挨拶に行くことになるのだろう。
でも今はとりあえずベットでゆっくりのんびりしたい。
『なので騎士団の人達、やっといてくんね?』
だが、もちろん人生はそんなに上手く回らない。
そんな事を言い出す勇気もない。
いや、だが、ここで勇気を出さないでどうするんだ?
勇気を感じる所も、出そうとする所も完全に場違いな僕だったのだが…。
僕は前髪を左手でかき上げデコを出し、右手は騎士団の方に突き出し、ついに口を開けた。
「お前らに試練をやろう。 それは挨さ…」
「ゴニョゴニョ言っていないでさっさと村長さんのお家へ挨拶に行きますよ! その後、お手伝いです。」
「へ!?あ、はい…。」
シャーロットに左手を握られ上げた前髪はパサリと元に戻った。シャーロットに引っ張られた反動で右手も下がり体は傾く。
要は失敗である。
僕は頑張って勇気を出した。出しはできてしっかり口は開けたはずだった。
問題は声が小さすぎていたことらしい。さらに体は縮こまっていたかもしれない。
シャーロットに言われ僕は恥ずかしくもなり、ノコノコと皆と一緒に挨拶をしに行くことになってしまった。
ちなみに、お手伝いというのは何でも屋的な事をするらしい。
この辺は魔王からの被害は少いはずにも関わらず何で村の問題を勇者の僕が解決しないといけないのかと言うと、この世界の人々に僕の事を勇者だと認知してもらうためだ。
村などは町とは違い情報が伝わりずらく、勇者の事を知っている人はほとんど居ないとか。
魔王からの被害もないなら、勇者の事も知らない内に魔王を倒しちゃえばいいと思うのだが…。
「この村での村長さんのお宅はソコを左に曲がって…」
アルさんが村長さんのお家への経路を話すと共に僕は騎士団の人達に押され、いつの間にかこの大所帯の先頭で歩く状況になってしまった。…いや、させられてしまった感じだ。
なのだが…僕には今1つの不満がある。
それは何故か僕が騎士団の前、この大所帯の先頭に立って歩いていること。
…いや、歩かされているということだ。
勇者はけっこう集団の前に立って歩いている気もするけが、それをやるのは大体みんなのために行動出来るヤツ。つまり、ザ・勇者って人。
つまり僕のような陰キャコミュ症厨二病のヤバいやつなんかに前を歩かせない方がいいだろう。
というか、陰キャの僕に大所帯の先頭を歩かせないで欲しい。
てか、大所帯の先頭を歩けるメンタルがない。
極めつけに、僕が騎士団の前に立ち歩き出してからは僕はスッゴイ注目を浴びていた。…シンプルにつらい。
コンコンコン。
大所帯の前に居るという羞恥心に堪え、村長さんの家の前まで行くとアルさんが後ろからヒョイッと出てきてドアをノックした。
「はーい。」
ドアの奥からはカスれた様なでも元気のある声が聞こえ
ガチャ。
少し経つとドアが開き、アルさんと比べると10センチ差くらいの白髪のお爺さんが出てきた。
「こんにちは!? とりあえず家の中へどうぞ。」
「はい、おじゃまします。」
僕らはお爺さんに言われて家の中へ入った。
「どうぞお掛け下さい。」
お爺さんはそう言うと僕らを座らせ台所の方へ行き少し経つと暖かいお茶を出してくれ、さらに何か取りでも行ったのか、お爺さんがこの部屋から出た時だった。
「ねぇ、騎士団ではアルさんしかここに居ないし、俺は別にここに居なくて良いよね? 休みたいんだけど…。」
お茶をゴクゴクと飲み干したアルゴンが口を開いたのである。
騎士団全員(アルさんを除いた15人)はこの家には入れないので、アルさん以外の騎士の人達はでどっかで休憩しているらしく、今この家には騎士団のメンバーはアルさんしか居ない。
が、流石に自己中感が出すぎてしまっている感じだ。
「アルゴンさん、貴方は勇者様の正規なパーティーメンバーですので…。一様こういう会議的な場所には出てもらう事にはなります。」
「そうですよ。戦おうとしなくても貴方は勇者パーティーの一員なんですから。」
アルゴンが席を立とうとした時にアルさんが止め、シャーロットが畳みかける感じで軽く皮肉った事でアルゴンはイヤイヤそうにしながらも諦め座り直したのだった。
一悶着がありそこから1分ほど経過した後。アルゴンがウトウトし始めていた頃に、お爺さんがやっと戻って来たのである。
「う、うん!!」
そしてお爺さんは威厳タップリの咳払いをしてしてから
「それでアル、この方達は?」
僕らに言った。
「あの人何でもっかい来たの?」
お爺さんからアルさんへの質問だったが、ここで答えたのはと言うか口を開いたのはアルゴン。
確かに気になる事だ。が、今は別の話である。
疑問どころでいうと、話し方的に村長さんはアルさんの事を知っている?という事だ。
まぁ、王国の騎士団の隊長さんなのだから知られているのは可怪しくないのだが…。話し方がかなりフランクに感じた。
「アルゴンさん、多分彼は威厳でも出したかったのでは? そうそうラクト、このお方達は勇者様パーティーの方々になりますよ。要件と言ったら…少し場所を借りたいくらいですかね。強いて言うと、困っている事があれば助けるよということですね。」
ラクトさん?それが村長さんの名前っぽいな。
自己紹介ターン前にネタバレをされてしまった。自己紹介くらいは(コミュ症関係なしに)ちゃんとやるんだけどな…。
友達?のラクトさんに会った影響か、丁寧語ではあったがアルさんにしては珍しい若干の早口言葉だった。
「そうでしたか。これはこれは初めまして。 この村の村長よラクトと申します。 アルとは私が子供の頃からの知り合いなんですよ。」
「そうでしたか。私は勇者パーティーの…荷物持ち…ゴニョゴニョ…。 シャーロットです!よろしくお願いしますね。」
「俺は、アルゴン。剣士。よろしく。」
ラクトさんに連れられ先に2人が自己紹介を終え、僕の番になった。
「俺の名は約剣。天に呼ばれこの地に参った勇者である。」
いつも通りの中二病挨拶…。
この挨拶、アルさんは暖かい感じで毎回聞いてくれていた。ラクトさんや初見の人は驚きながらも拍手をくれ…。一番つらいのは毎回近くで聞いてニヤニヤ顔をするシャーロットとアルゴン。
という事で確定の挨拶は(笑われないが、中二病を出せるギリギリラインの物を)考え中。毎回少しづつ違っている。
「おぉ、約剣様! よろしくお願いします。 そうですねぇ…困っている事は特にありませんので、小さな村ですがゆっくりしていってください。」
僕は互いに挨拶を終えた事でお休み時間が来るだろうと高を括っていた。村長さんにもゆっくりしてと言われクタクタだったし、それしかないと決めつけていた。
が、挨拶が終わった時にアルさんが口を開き
「ラクト、少しこの場所をお借りしますよ。 勇者様、ここらで1つ、この世界の国々の情報。旅の経路なんかをお教えいたします。」
と言ったことで、休憩は延期。
クタクタなままだが、この場で学習会と言う事になってしまった。