第1話 「勇者、旅に出る。」
「これから勇者様方は今存在する街の中でも一番古いと云われるタウンに行向かってもらいます。」
声に声変わりは完全に確認できず、身長はシャーロットより少し小さいくらいで染めるというよりは地毛のようなサラサラとした金髪。
見た目から14歳、いや、12歳程の少年。…少年?少女?どちらかとは言い切れない中性的な顔。
スモールシティを出発してからはそんな子が大人の騎士たちを差し押さえ僕ら(約剣、シャーロットにアルゴン)に話をしてくれていた。
「ほう。」
タウンがどこで何なのか分からないが、取りあえず話が分かってる勇者感を出すために僕は腕を組んみ頷く。
「理由は2つ程ございます。 まず1つ目です。タウンはスモールシティ程ではございませんが、魔王からの被害が少ない街だからです。 2つ目はタウンならば勇者様を助ける武器があると国王様に言われまして…。」
「そうか、それが選択か。」
分かっている感を出してしまっていたが、アルゴンが分からないという顔をしていたために説明が貰えた。
さらに説明後にも僕は分かっている風の雰囲気を出しておいた。
と言うか、国王様は僕が序盤から魔王と接触するなんて事にならない様にしてくれていたらしいな。
強制的に魔王討伐に出発させられてしまったが、なんだかんだ勇者の事を大切に扱ってくれていると言うのはかなり嬉しい事だ。
いや、今はそんな事よりも大事なのは2つ目の理由の方。
僕を助けてくれる武器という事は…つまりは伝説の剣って事だろうか。
勇者と言えばやっぱり剣だよな?魔法ではないよな!やっぱりシャーロットがオカシイだけだった訳だ。
「お2人は勇者様のパーティーメンバーでしたね。 「勇者様以外に魔王討伐を背負わすのは…」と国王様が特別にパーティーを解散させても良いと許可を出してくれましたが、勇者様と魔王討伐なんて言ってしまうとアレですけど、良かったのですか?」
「そうですね、魔王討伐は嫌でしたけど…。 お金は沢山貰えて騎士の人も来てくれるのなら良んじゃないかと!」
「俺は他に選択肢はなかったし…。」
『アレ…僕にそんな話来てないんだけど?』
現金なシャーロット。シンプル良い奴のアルゴ…なんか面倒くさいけどみたいな空気を出してんな。
いや、今はそんな事はどうでもいい。どんなに深く考えてもやっぱり僕にそんなパーティー解散話が来た記憶がないのである。
魔王退治に行くのだからポケ◯ンで言う旅パではなくガチパが良い。この2人との共闘ガチ戦闘は本当に敵を倒し切れるイメージが湧かないのだ。
「俺の軍には強き者が必よ…。」
「あのぉ〜、誰もきかなかったので失礼ながら私がききますけど…。ところで君は誰?」
僕の言葉を遮ったシャーロットはさっきから不思議そうに少年をジロジロ見ており、ついに我慢できなくなったようで失礼を承知と言いながら質問した。
が、シャーロットの行動は子供への口調に少年目線に顔を持って行く行為。さらに(話を遮ったので)僕にも普通に失礼である。
「あれ…名前を言ってませんでしたか? 私はアル。 この騎士団の隊長をしています。 見た目は13,14歳の子供に見えますが、私はハーフエルフなのでちゃんと成人していますよ。」
「「…え!?」」
本当かと思い周りの大人の騎士たちを見ると、ウンウンと頷いている。
すっごい驚き情報。僕の目は点だ。
『でもまぁ…確かに口調が見た目の年齢からは丁寧すぎるとは思ったわな。』
「君なんて言ってすいませんでした。」
僕がアルさんについて立ち止まって考える横で、さっきその隊長さんに向かって子供へ態度を取ってしまったシャーロットが素晴らしい速さで腰を45度に持っていった。
実際、僕は僕でアルさんをどっかのボンボンだと思ってしまっていた…。
まぁ、口や態度に出してはいないのでセーフだろう…心の中では既に謝ったし。
「いえいえ。 ハーフエルフの方は耳がエルフの方みたく尖っている方と、私みたいに尖っていない方がいらっしゃりますからね。まぁ慣れてますよ。」
アルさんはペコペコし過ぎているシャーロットに若干引いた笑顔を見せている。
「それと、タウンに行く途中途中で村を通ります。トラブルなんかがあれば勇者様方、お願いしますね。」
「あ…あぁ。この俺に遂行を必須とされるのならば。」
この時、「間違えたのだから、何かあったらあなた達がお願い。」シャーロットに引いているアルさんの顔から少し僕はそう言われているように感じてしまった。
コレの本当の解釈的には、アルさんは勇者に色々な経験値を積ませたいという好意があったのだが…。
まぁ、特段重要と言うわけではない情報である。
「何かご質問でもございますか?」
「そうですね…では失礼ですが、アルさんの今の年齢は何歳なのでしょうか?」
少し経って僕らが騎士団の人達の集団の後ろで静か〜に歩いていた時、そんな一見仲がよくなさそうなのを見かねたのかアルさんが先頭から下がって来た。
「私の歳ですか。ちゃんと数えてはいませんが、そうですね…。 確か400歳くらい、人族で言えばおそらく20歳くらいですかね。」
「400歳ですか!? まぁでもハーフエルフならば。」
「な〜んだ、400歳か。」
「400!? …年とはそうか。」
「…約剣さんの反応、難しいですね。理解が…。」
シャーロットが僕に対して何か言っているが、それよりもアルゴンの反応がオカシ過ぎるだろ!
アルさんの歳には仰天物だが、謎にそこに目がいった。本当にそれを下に見ていると言うか何と言うか…本当に謎の反応だった。
と言うか、人間で言えば20歳…。アルさんは全くそんなふうには見えないのだが…。
「人間にしては20歳。 失礼ですが、かなり若く見えません?」
「そうかもしれませんね。 良く言われますし、同い年のエルフにも「お前、すっごく若く見えるな。」と言われたことがありましたし。 400歳で若く見えるって、自分で言うのもですけど笑っちゃいますよね!」
アルさんは本当に笑いながら頭を掻いた。
つまり、童顔ってやつらしい。400歳で童顔と言うことだ。
いや、と言うか童顔ってレベルの若さじゃないんだけど。よく寝なかったのかな…。
などと、どうでもいい事を考えながら知り合ったばっかの人とは珍しく僕はかなりリラックスしながら聞いていた。
「400年も生きているなら、騎士団の1番隊くらいになりそうだけど?」
「「…。」」
まったりとした雰囲気の中で、アルゴンがボソッと1言。
流石は雰囲気ブレイカーアルゴンである。
かなり失礼な事をバサっと言いやがった。彼は本当にこの後の空気感をどうするのだろうか。
「まぁ、そうですねぇ。 ただ、私が戦ったり訓練などを始めたのは、ほんの20年前なので妥当だと思いますよ。」
僕の心配は杞憂に終わった。
400歳アルさんの大人の対応だ。見た目はどう見ても400歳、人間で言えば20歳には見えないが、確かにそのくらいの年の功の発言がアルさんには多い。
「歳もレベルも、突き詰めたレベルなのだよ。」
シャーロット、アルゴンだけではなくアルさんもいたので僕は中途半端な中二病が出た。
「は?」
僕の言葉に?を飛ばすアルゴンを見てニコっと笑うアルさん。僕の言葉を聞いてから無言のアルゴン。しらけられた事でビビって次の言葉を出せない僕。
「職業…あ、騎士だから職業じゃなかった、え〜と、戦闘スタイルとかはなんですか?」
この気まずい静かな空間は耐えられないとばかりのシャーロットだ。
「まぁ、その通り騎士ですが…皆さんが想像していらっしゃるのとは少し違うと思います。 私は2つの短剣を使いますね。 私以外ですと…こちらに来て居る5番隊の方々は皆剣と盾ですかね。 …失礼、2人弓使いがいました。 ところで、勇者様方はどんな戦い方ですか?」
「え〜と…」
聞き返されシャーロットは言葉が詰まった。
シャーロットに戦い方などなく(戦えないので)、職業は荷物持ち。
素直に答えづらいし答えたくもない質問だったのでろう。
「…私はそんなに戦闘はできないですね、ハハハハハ…。約剣さんはまぁ、わかると思いますが魔法使いです。アルゴンさんは指示出しですね。けれども、基本的には…」
「そういう事で、俺が指示役をやってやろう!!」
「げ!? いや、それは…」
急にしゃしゃり出てきたアルゴン。
戦闘なんかやる気はなかったであろうシャーロットはこのアルゴンの申立にテンパり始めた。
「せっかく戦いのプロが(騎士団の事)居るのにまた私はオトリ!?」おそらくそんな感じなシャーロットだっただろう。
「勇者様もアルゴン様の指示に馴れていると思いますし、騎士団としてはそれでよろしいですよ。」
「よし! それで行くぞぉ〜!」
「へ…本当の本当に本当ですか…。」
アルゴンの指示で誰かしらに絶望が起こる事を知らないアルさんは良かれと思っていたよう。
アルゴンは素直に「よし!」と。シャーロットは「嘘だろ」と。
そういう僕は正直誰が指示を出すにしても勇者は強制的に戦う事になるだろうので、どうでも良かったのである。
僕らとは、エクスカリバー、シャーロット、アルゴンの事をさします。