第10話「臨時のパーティーメンバー!?2」
「クエストを受けるにあたって、あなた方の事を教えてください。」
シャーロットは、同じパーティーメンバーなのでもちろん教えてくれますよね?と言う感じだ。
シャーロットの出身地などの情報を僕とアルゴンは知らないんのだが…。
『何言ってんだコイツは?』
「僕はタンクだな。 エラは一応、盗賊ということになっているよ。」
あなた方の事とは職業の事だったらしい。
まぁ、常識的に考えれば、戦闘に出身地なんて重要じゃない物である。
というか、冒険者は出身地不明が(訳ありが)やるというイメージすらあるのだ。
出身地が分かって学歴があって…とかいうちゃんとしてるやつは、異世界でも安定した職についている気がする。
『一応って何だ?』と思うが、訳ありが着く職が冒険者。
濁すという事は秘密にしたい事だろうと、特に追求しなかった。
「では…そうですね…出身地は?」
静かで気不味い空間にしたくないのか、シャーロットはさらに続けた。
シャーロットの話作りの内容に、僕はさらに思った。
『何いってんだコイツは?』と。
シャーロットは自分の出身地は言わないくせに他人には普通に質問したからである。
「出身地? それは、ひ♡み♡つ。」
エラさんは右手の人差し指を唇に持っていき、体をくねらせたエロいポーズを取った。
トロンとした目が色気を大きくさせている様に見える。
僕はもちろん女性経験はなので、そのエロい雰囲気に惹きつけられた。
謎にアルゴンは睨んでいた。
「このボンクラ2人は男ですけど、私は女なのでそういうのをされても…。」
エラさんの顔を見ながら、自分は困った表情のシャーロット。
あんな答え方をされるとは考えていなく、戸惑っている様である。
『というか…ボンクラ呼ばわりかよ。 シャーロットの方が何もしない気がするけどね!』
「ひ♡み♡つ♡。」
戸惑い後ずさんでいるシャーロットにエラさんはさらにそう続けた。
エラさんのひ♡み♡つ♡連打の前にシャーロットは押し負け、それ以上の質問はなく、ただただ静かな空間が続いたのだった。
「村が見えてきましたね。 村人と交渉するにあたってたぶん約剣さんは当てにならないので…ウィリムさん、交渉お願いします。」
「!? あぁ…分かった。」
シャーロットに全く意味の分からない言葉をかけられたウィリムさんは疑問を浮かべていた。
本当にシャーロットが何を言っているのかは分からないが、謎にアルゴンは頷いていたのだった。
「あのさぁ…。 クエスト主、村長の家ってどこ?」
村に着くなり、やる気のなさそうだったアルゴンが以外にも行動を起こしたのだ。
「村長さんのお家ですか…。 村長さんのお家でしたら真っ直ぐに歩いて行けば、ありますけども…ありますけど…。」
アルゴンに捕まえられた(質問を受けているだけで、縄で捕らえられたりはしていない)村人は何故か少し涙ぐんでいた。
コンコンコンコン。
「は〜い。」
教えてもらった家のドアをノックをするとお婆さんがドアを開け、こちらをキョロキョロとした顔で、何も知らなそうな顔で
「どちら様でしょうか?」
シワれているがゆっくりと優しい声でおばあさんは首をかしげた。
反応的には僕らの要件をマジのマジで知らない様子。
クエストを出したのだから普通は覚えがあるはずなのだが…。
『「認知が入っちゃってて…。」なんて言われたら、ここまで来た疲れもあるし張り倒してしまいそう。 …もちろん、アルゴンが?』
「僕たちは冒険者で、村長さんに依頼を受けて来他所在ですが…。」
シャーロットに言われていた通り、ウィリムさんが会話を切り出した。
「そうですか…そうですか。 遠い所、こんな村にワザワザありがとうございます。 ですが、主人は1年程前に亡くなっておりまして…。」
「それは、ご愁傷さまです。」
「ご愁傷さまですわ…。」
「ご愁しょ」
「まぁ、悲しいとかはいいです。 そんな事よりも…主人が、依頼者が亡くなると依頼はなくなってしまうはずですが…。 皆さんは何故ここへ? おかしいですね。」
ウィリムさんエラさんに続いて僕もお悔やみを言おうとした所だった。
お婆さんは僕が話すのを途中で止めると、探偵のごとく口調で話しだしたのである。
「確かに何かおかしいですわね。」
お婆さんの後にはエラさんが言い、
「はい、おかしいですね。」
シャーロットも続いた。
「え、単純にギルドが知らなかっただけじゃないの?」
探偵ごっこでも始めるの?という感じの3人に割って入ったのはアルゴンだ。
正直、僕もアルゴンと同じで何がおかしいのか分からない側であるし、シンプルにギルド側のミスだろうとも思うのだった。
「いいえアルゴンさん、それは違いますよ。 クエスト用紙と言うのは魔法が一つ一つに掛けられています。 ギルドからの依頼は別ですが、個人からの依頼で依頼人が亡くなってしまうと消えてしまうようになっているのです。 間違って受けて頑張ってクエストをクリアしても報酬は出ないですし…それをなくすためです。 また、依頼というのはクエストボードに何百とあるので、そうでもしないと管理が出来ませんからね。」
「その通り、確かにおかしい事だ。 …ここは少し調べてみないか?」
シャーロットの説明からおかしいという事の協調性が強まった所で、ウィリムさんから「するよね!?」という雰囲気の提案が入った。
「えぇ、そうするべきだわ。」
まず一番に力強く頷居たのはウィリムさんのバディーでもあるエラさんだ。
「やはり面倒くさい事になりましたが、ここまで来たことです、やりましょう!」
まだ探偵気分が続いて居るのか、面倒くさいと言うことに珍しくシャーロットも「やる」と言った。
「いやいや、面倒くさいし別にいいよ。 帰ろう!」
このやる雰囲気の中、「No」と言えるアルゴンには流石の1言を送りたい。
僕には出来ない事である。
「約剣さんはどうですか?」
アルゴンの「No」が少し雰囲気を悪くした。
それを感じたのであろうシャーロットは僕に「Yes」と言ってもらう事で雰囲気を戻そうとしたのだろう。
残念ながら、僕はNo派である。
アルゴン言う通り、確かに面倒くさそうであるからだった。
「約剣さん、どうです?」
シャーロットが早く空気を良くしようと(対立の雰囲気を無くそうと)、回答を急かしてきた。
僕の答えは1つの。
「もちろんこの俺も調べてやろう!」
ドーン!!
僕は厨二病セリフと厨二病ポーズ(右目を隠すポーズ)を取りながらそう答えたのだ。
「は? マジかよ約剣…。」
そう言ったアルゴンは呆れ顔も混じった凄い嫌そうな顔をしていた。
もちろん、僕はNo派であった。
が、多数決的に僕1人では覆らない状況。なんならお婆さんもやりなさい雰囲気を出している中、陰キャに少数側に行く勇気はないのである。
『すまんな、アルゴン。』
「時間がかかるなら臨時の期間を少し増やしても良いわ。 さぁ、調べましょうか。」
エラさんはかなりやる気満々だ。
「それじゃあ…僕とエラは村を調べてみよう。 約剣にシャーロット、アルゴンは村周辺の森を調べてみてくれ。 2時間後くらいにこの家の前に集合させていただこうか。」
「私は何かありますかな?」
「そうですね…結果を楽しみに待っていてください。」
役割を振ったウィリムさんに、アルゴンよりもやる気満々なお婆さんだったが…歳的に流石にだった。
「さぁ、では早速森を探索してみましょう!」
ウィリムさん達は先に歩いていき、シャーロットの声と共に僕らは森の方へ歩き始めた。
「森には来たけど…森を探索って、何やるの? フワァー…。」
「アルゴンさん、少し隠しません? やる気ないのがダダ漏れですし…。 ともかく、おそらく何か変な物がないか、変なモンスターが居ないかを見ればいいと思いますけど。 まぁ、私は森を探索したことはないですが。 タラタラやりましょう〜!」
ウィリムさん達の前ではやる気満々優等生みたいなシャーロットだった。
が、僕らの前ではそんな優等生なんか演じる気はなさそうである。
「というかシャーロット。 やる気ないなら、やらない派に手上げてれば多数決に勝てたよな!?」
「…私は真面目なので! そんな事よりも、まずは3人別々に行動しましょう。 なによりも時間が節約できますから。 丁寧よりも時間です!」
「まぁ、それでいいけど。 お前の話は矛盾してるぞ…。 真面目な人間は時間よりも丁寧さを重視するんだよ…。」
「え!? …レッツゴーです!!」
図星を突かれてしまったシャーロットは言い直すことはなく、シンプルに勢いで押してきたのだった。
僕的にもさっさと終わらしたかったので賛成したのだ。
が、ここで何故かアルゴンが
「反対!!」
大きな声を上げて反対意見を出してきた。
「何でですか? 直ぐに終わりますよ、その後は寝てもいいですし…。」
頭の中の悪魔は、このシャーロットの様な物なのだろう。
可愛い顔と、まさかのアルゴンに反対されたと言う混乱顔からとても可愛い顔で悪魔の囁きをしている。
「アルゴンを丸め込みたいのは分かるけど、寝てもはよくないから!」
「俺を丸め込むってなんだよ…。 ともかくさ! モンスターと俺が出会ったら、誰が倒してくれるの?」
「あぁ〜。 確かにですね!」
「…。 はぁ?」
『アルゴン…お前、剣士なんだろ。 戦闘はお前(剣士)の得意分野のはずだろ!』
普通にこのままでは僕にはマイナスな事しかない。
僕はシャーロットに目を合わせ訴えた、「逃げればいいだろ。」と。
「やっぱり、固まって動きましょうか。」
シャーロットと目があった気がしたが、僕の訴えは意味がなかったようである。
もちろん多数決で敗北。
3人で行動と言うことになってしまったのだった。
「さぁ、行きましょう!」
―1時間40分後―
「何もありませんでしたね…。 時間的にはもう村長さんのお家の前に戻しましょうか。」
そう、僕らは村に沿って森を適当にグルっと一周したのだが、怪しい物どころかモンスター1匹見当たらなかったのだ。
「ウィリムさんとエラさんの方は何かあったかもしれませんね。」
「ないない。」
シャーロットの言葉にはアルゴンが食い気味で即効否定をしていた。
「何かありましたか?」
遅れることもなく僕らは村長さんの家の前でウィリムさんとエラさんと合流できたのだった。
「いいえ、村には何もなかったけど…村の人に聞いたりしたらここから40分くらい行ったところにある洞窟から時々変な音がしたりするそうよ。 今日はもう遅いから、この村に泊まって明日行ってみないかしら?」
『アルゴンがすっごい嫌そうな顔をしている。 流石に隠せって…。』
実際、僕も気持ちは分かっていたが顔には出さなかった。
出来る男は顔から違うのである。
「そうしましょう。」
ウィルムさんとエラさん(僕とアルゴン以外)の前では真面目ぶるシャーロット。
その返事のせいで今日は残業が決まってしまった。
『お前も僕とアルゴンと同様に「No」と言えば、多数決に勝てただろ!!』
コンコンコンコン。
ウィルムさんが村長さんの家のドアを叩き、お婆さんを呼んだ。
この村に泊まることになってしまったので寝床確保の情報収集のためである。
「は〜い。 何か分かりましたか?」
ゆっくりとした返事とは反対にまだ探偵気分なのか、お婆さんがドアを開けるのにはほとんど時間がかからなかった。
「今夜はこの村に泊まる事になったので、この村で泊まれるところを知りませんか?」
「そうですか、そうですか。 でしたら…村の教会に泊まると良いでしょう。 ここから、歩いてすぐです。」
「ありがとございます。 そうさせていただきます。 では。」
明日着いてくるのじゃ?そう思わせるくらいに僕らが泊まることを聞いたお婆さんの目はキラキラ輝いていた。
教会は地球では言う所のキリスト教の建物の様な物で、少し村外れにあったがキレイに清掃されており埃っぽくもなくのわりかし快適空間だった。
「ワガママを聞いてくれたお礼に、夜ご飯は私がお作りするわね♡」
ご飯も持ってきてないし、寝るか…。そんな時にエラさんからそんな話が出た事で僕は頭をつねって目を無理に覚まさせた。
少し経ち、エラさんが作ってきてくれたのはポトフの様なスープに少し硬めのパンだった。
味は美味しかったと思う。
というのも初の女性の手料理。
それからか、風邪だったのか少し興奮気味で今日の後のことははっきりと覚えていなかったのだ。