第9話 「勇者パーティー、日常」
ここまで手直し出来ています
「今日も元気に、気分良くゴブリン退治に行きたいんですけど…。」
僕は今ギルドの入口前でテンション低くしているシャーロットと、ゴブリン退治のクエスト用紙を手に立っていた。
立っている時間はまだ15分、20分。そんなもんだが、精神的にはこの朝から疲れてしまっている。
今日でアルゴンをパーティーに入れてしまってから中3日。
その間にゴブリン退治に2回ほど行ったのだが…成果と言っては低賃金のお金と(ゴブリン退治時で見るようなゴブリンの血等に対する)グロさ耐性、アルゴンは遅刻常習犯と知った事くらいである。
お金にグロさ耐性とパーティーメンバーアルゴンに対する不安。どう考えても釣り合わない事が朝から疲れてしまっている大きな要因である。
「アルゴンさん…また遅刻みたいですね。」
シャーロットは自分の腕時計を見てため息と共に美しい(普通は変な顔になるはずの)呆れ顔を披露。
ギルド前に設置されている時計を見ると、今日の集合時間のはずの9時を10分過ぎている。
ちなみに、アルゴンには集合の30分前を伝えていたのだが…。
―15分後―
「…ファ〜、おはようだな。」
15分経ち、集合時間から25分の遅刻。アルゴンに伝えていた時間からは55分の遅刻のアルゴンは堂々と歩いてギルド前に現れた。
「…眠いのと時間感覚がだな、」
「はい、さっさとゴブリン退治に行きましょうか。」
口を開いたアルゴンの言い訳を一刀両断とばかりにシャーロットは関門に向けて歩き始めてしまった。
僕もちゃんとアルゴンの遅刻には無視を決め込んだ。
これは5分10分と少しずつ遅刻は少なくなってきているのと、アルゴン相手に無気になると負けと言う事をここ数日で学んだためである。
そしてその後、僕らはいつもと同じゴブリンの縄張りへと移動した。
ちなみに、いつもと同じ場所でゴブリンは居るのか?答えは「Yes」である。
理由としては薬草採取よりもゴブリン退治は割の悪いクエストと言うのが常識的で僕らの以外のパーティーは手を付けないからだ。
さらにちなみに僕らがゴブリン退治をやらないとなると、ゴブリンも増えてしまうのでゴブリン退治専門の業者を雇うそうだ。
では何故そんなゴブリンを僕らが狩っているかと言うと、基本このパーティーにはそんなにやる気があるやつが居ないからである。
僕はこの世界に来たばかりで色々とビビっていて、なんだかんだ強い敵とは戦いたくない。
シャーロットは戦えないので軽く文句は言いつつも、基本的に僕とアルゴンが選んだクエストには嫌だと言ってこなかった。
アルゴンはけっこう面倒くさい事を避けるっぽいので、ゴブリン退治以外のクエストという意見は出て来ていないからである。
「そう言えば…アルゴンさんはどこの出身何ですか?」
移動中は雑談したり、無言だったり各自ノンビリしていたり。
今回はシャーロットが話題作りにと口を開き、アルゴンに質問を繰り出した。
「え!?俺?え〜と…ここから上に行った所の所だよ。」
地面に咲いている花を見ていたり、そんなシャーロットにアルゴンも空を見上げながらの大まかな回答で応戦。
「上ってことは…クメシアル?」
「へ〜…」とシャーロットは頷きながら、鳥を見ながら何かの国名を出した。
上とはおそらく地図を見て上、つまり北と言う事なのだろう。
まぁ僕はこの世界の地理はまだ全く分っていないのだが…。
「まぁ、そんなだな。」
国名らしき名前を出したがそんな丁寧に聞いてはいないシャーロットに、アルゴンも丁寧に答える気はなさそうな感じである。
さらに空を見上げながら頷いた様なだ。
「…お前はどうなの?」
「私ですか。…まぁ、スモールシティよりも何倍も大きな街の麗しのお姫様ですかね」
ハハハハハと。シャーロットのわかりきった冗談の回答を聞いたアルゴンは笑っている。
まぁ、「麗しの」って部分は冗談でも何でもない事実だが…。でもどちらかと「痛い気な」と言った方が近いような。
まぁ…そんなことはどうでもいいが、2人して互いの言ってる事が嘘だろと言わんばかりの笑顔でハハハと笑っている。
うん、2人して異世界アニメあるあるの訳あり冒険者と言うことなのか!
そんな感じに僕も適当に聞いていただけに結論はそう出たのだった。
「約剣さんは?」
もちろん僕のターンなのか…。
そんなに興味はなさそうなシャーロットからである。
アルゴンは謎に僕の方を見て話を聞く体勢になってくれているが…僕だけ真面目に本当の事を言っても馬鹿らしい。
「俺は異世か…」
僕は異世界からと言おうとしたが、魔王と言う存在が居る世界でそれを言うとヤバそう…と、言いかけて1拍黙った。
この世界、魔法使いが特別扱いされると言うのはマジのマジの事実だった。理由としては魔王を倒せるのは魔法使いだけだと本気で信じられているかつ、魔法使いの人数が100人いないかららしい。
そんな魔法使いはギルドでは身元など調べられないのだ。
では身元不明の僕が他の世界から来た!等と言えば?
魔王からのスパイと思われる可能性があるのである。
「私達のを聞いていたのんですから、黙秘はなしですよ。ね、アルゴンさん。」
特に注意して聞いてなかったくせに…。
シャーロットは黙った僕に顔を向け、そう発言を促しアルゴンにまで同意を迫った。
「…いや、別に無理に聞く必要は」
「黙秘はなしですよね!」
キラキラ〜。目を大きく開きそんな笑顔を見せるシャーロットにアルゴンは最初は渋っていたが、負けた。
アルゴンを黙らせたシャーロットは僕にもキラキラ可愛い笑顔を向けてくる。
「…学校には行っていた。」
時間がなくなる中、考えた僕の答えは異世界云々を言わない事である。
出身地とはずれるが、この世界にもあるのならそれで話はずれると思ったのだ。
「学校ですか!」
シャーロットはキラキラ顔から一転、目を大きく開けてはいるがパッチリとした少し驚いた様な顔をした。
僕の話を聞こうとしていたアルゴンはそうぞうに話を聞いていたみたいで謎に
「学校ってあの!?」
と、完全に疑問形の声を上げた。
あのって?と疑問形になりたいのは僕である。
「…アルゴン、お前は学校にどんな認識してるんだ?」
「う〜ん…学校は学校だろ?」
学校を伝説上の物の様に反応をしたアルゴンに聞き返すと、意外にも悩む事ない普通の返答が返ってきた。
あのっで謎に疑問形になったのが不思議なくらいに清々しい感じだ。
そして、僕らがそうこう会話をしている内に20メートル先にゴブリンの姿が見えてきた。
ちなみに、毎回ゴブリンを見つけるのは謎にアルゴンだった。目が良いのか何なのか…。
「よし、いつもと同じでシャーロットはオトリ、約剣が倒せ。」
毎度の如くと言うか、このパーティーの司令塔はアルゴンと決まった様な感じになった。
僕は戦闘の知識はゼロで、シャーロットの戦闘経験もゼロ。そんな時に仕切りだしたアルゴン。
必然的になった感じである。
「何で今回も私がオトリなんですか?」
ゴブリンがギャーと殴りに来たときだ。
オトリで走り出すはずのシャーロットはほっぺを膨らませる可愛いぷっくり顔でその場に立ち固まった。
「しゃ、シャーロット!?」
「今のタイミング!?まぁそうだな…理由的にお前は基本戦えないからじゃん。」
今、そんな冷静に反論する?
ゴブリンがバタバタと近づいてくる中、冷静にシャーロットに理由を話すアルゴンに聞くシャーロットを見て僕は大パニック状態。
とりあえず、殴られたくはない…。僕は2人から何歩か離れた。
「はい!?私だって本気になればですよ」
「じゃあ、ゴブリンと殴ってくる?」
「…しょうがないですね。」
僕が離れる中、2人は会話を続けると最終的にはアルゴンに丸められたシャーロットがオトリに走した。
本気になれば戦える的発言はどこに行ったのだか…。
「…倒せました。今日は15匹分ですね♪」
いつも通り僕が風魔法で倒す。シャーロットが耳を集めて、反省会をして即帰宅だ。
ゴブリン退治に反省会…?とはなるが、パーティーとしての一応の会である。
まぁほぼただのトークタイムなのだが…。
「そういえば、魔王討伐はやらないの?」
やはり今回も反省会じゃない。
しんみりも反省も何もなさそうだが少し深刻そうなアルゴンが話を出した。
「…だよな!?」
アルゴンの顔につられて僕はハッとした。
僕はここまで、ゴブリンを倒しお金を貰ってのんびり生活。そんな時を過ごしてすっかり、魔王退治なんてものを忘れかけていたからだ。
と言うか、そう考えると魔王討伐が最終目標のやつが何で最弱のゴブリン倒してんだよ。
そんな疑問も湧いてくる。
「いえ、魔王を倒せるのは何だか天に認められた勇者様だけだとかですから…。強くて有名な方々が揃って魔王討伐に行かないのを見るとそう言う事なのでしょう。なので、勇者様でもない私達が魔王退治に行く必要なんてないですよ!」
何で魔王退治に行かないのかと考えていた僕に正回答が降った。
僕は自分が勇者と知っていても、何も知らない人からすると何で最強の勇者がスモールシティなんかに?と言う雰囲気から自分自身も魔王退治を忘れゴブリン退治に精を出していたからだった。
そんな事より、魔王退治を思い出した今となっては自分が勇者と証明する方法である。
何かないのか…。僕はそれだけを考えた。
この自分には関係ないと鼻を高くしているシャーロットを道連れにする方法を。
すると僕はそんなモチベーションから思い付いた
「あれ…勇者は伝説の剣。それで魔王を倒すんだよね?」
と。そして、
「あぁ〜!」
僕の言葉には「確かに!」と口を開けながら納得するアルゴンの声が続いた。
アルゴンも同意してくれたし、タングには魔法と言われたけど結局は伝説の剣。
日本生のアニメを愛する僕からしたらこれ以上はない答えだった。
「いえいえ、勇者様と言ったら魔法ですよ…。何かの有名な剣はどこぞの街にあるにはあるらしいですけど。」
首を横に振り少し悩んでもやはり剣に否定的なシャーロットに僕はアルゴン、シャーロット、どっちが正しいのか分からなくなってしまった。
だが信用できるのはシャーロット…。
なので無理無理に僕を納得させたが、
「あれ…でも、どうやったら天に認められたって分かるの?」
自分が勇者と言う事はまぁ確定。
だが、他の人が僕の事を勇者と説明しようとしても証明は出来ない。
剣でもない。しやを巻き込むための説明はどうするのだろうか?
「私もそこまでは知りませんよ…。」
シャーロットはまた横に首を振り、「私に言われても…」と。
まぁ考えてみれば、召喚された勇者自身が分からないことをシャーロットが知ってるはずはない。
…うーん…。
そうこうしているうちにスモールシティのギルドに着き、シャーロットがゴブリンの耳を受付けにウキウキした顔で持って行ってお金を貰って。
「何で私はこんなに頑張っているのに二人と同じ金額しか貰えないのでしょう」
ため息を吐きながら僕らに同額を渡すシャーロットはそうだなオトリについてほざいた。
シャーロットは確かに可愛そうではある。
だが、まともに戦闘が出来ないシャーロットにはそれをやってもらうしかないし…。
結局のところ、
「「お前は荷物持ちなんだから当たり前だろ…」」
それが僕とアルゴンの意見である。
「あ〜、私の代わりになってくれるタンクさんが入ってくれないですかね…。」
さらにほざくシャーロット。
おそらく、その荷物持ちさんのおかげで入っている者が居ないんですけど?
まぁ、もう追加メンバーは無理だろうなと言う時だった。
僕らはガタイが良く大きな盾を背負った20歳くらいの男性と20歳くらいの美しい女性の二人組に声を掛けられ、
「君たち、僕らふたりを2日間臨時でパーティーに入れてくれないか?」
男性の方にそう言われたのだ。




