第1話「厨二病、異世界に行く。1」
「前を歩いているのは…。よう、約剣!」
それは学校終わりの放課後だった。
僕が家へ歩いていると、友達が近づきながらそう話しかけできたのである。
「この俺、約剣に何か用か?」
僕は完全に作った低い声と共に振り返え、友達の方に近寄った。
だが、
「いいや、また明日な。」
友達からはそう一言だけ。
さらにはせっかく近寄った僕を追い越すと近くのコンビニに入って行ってしまった。
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…先の場面は別に要らないか。
話したとこ悪いが、忘れてほしい。
さて、まずは何から話そう?
そうだな…僕の名前は約剣!
…それは既に知っている事か。
でもまぁ、一応説明をしよう。雰囲気も大切だ。
名前を聞いて「ふざけるのか?」と大抵の人は思うだろう。
「もしかして…」と思う人もいるかもしれない。
そう、僕の名前はキラキラネームだ。
これはかなりの自由人、いや、変人な両親につけられた名前である。
両親を簡単に説明すると、頭のネジが2,3本…普通に10本から20本は外れている人たちだ。
息子が言うことではないだろうが、両親はバカップルという次元の話ではなく、完全にイカれちゃっている。
そんな変人の両親は僕に「俺らは好きにするから、お前も好きにしろ」とよく言ってくる。
だが、変人じゃなくネジも外れていない僕には何をどう好きにするのか、そもそも両親が何の事を言っているのか、理解不能だ。
…名前の事に話を戻そう。
そもそも、エクスカリバーは「約束された勝利の剣」と日本語では書く。
なので、最初と最後の文字を取って約剣(エクスカリバー)と読むのはかなりの無茶苦茶だ。
せめてどうしてもエクスカリバーを使いたいのであれば、もう少ししっかりとした当て字にしてほしかった。
そもそも普通の名前が良かった。
両親に約剣なんて名前にした理由をきこうと思った事はあったがその時に、
「格好いいから!」 「なんか…ノリで!」
などの答えが冗談無しで返して来るのでは…?と考えてしまった。
本当に変な答えが返ってきてたら…という恐怖心で名前の由来を聞いたことはない。
まぁそもそも、キラキラネームのほとんどはノリと勢いで付けられてしまう物だろうが…。
「お前らの息子の名前、もっとちゃんと考えてほしかった!」
僕はそんな感じにつくづく思っていたのだ。
そんな所で自分の悲しい名前に付いて話している僕はお腹いっぱいで限界。
なので、流石にもう名前の話から僕という人物に話を変えさせてもらう。
僕は身長は174センチ、体重65キロの平均的な体格。
髪の毛と髪型は高校の校則で短く黒で特徴はない。
顔も特段格好いいわけではないが、父が格好良かったのでどちらかと言うと僕も格好いい分類だろう。
要するに、全体的に平均的な高校2年生である。
ではそんな僕を一言で言うと?
そうだな…陰キャの厨二病野郎が良いだろうか。
学校というか、僕を知っている人の前限定にはなるのだが。
その僕を知っている人が多い学校での立ち位置は、陰キャだがクラスの中心という不思議なポジションだ。
なんでそんなポジションに居るのかという理由は意外と単純である。
何故なら、キラキラネームの原因もあって厨二病という、濃いヤツという印象を作ってしまったからなのだ。
では何故、陰キャの僕がそんな面倒くさそうなキャラを作ってしまったのか。
理由は簡単、名前からしておそらく僕は周りからイジメられてしまう…。
じゃあイジメられないようにするには…
「あ! この名前に乗っかれば良いんだ!!」
そんな感じの発想からだった。
正直、ぶっちゃけると、僕はこの厨二病キャラが好きじゃないし辞めたい。
だが、このキャラを辞めるとしたら起こりうる事態がある。
辞めたとして待っているのは、この前まで調子に乗っていた奴がクラスカースト転落!転落者に関わると関わった奴のカーストも転落!
つまり、誰も関わってくれなくなる。
待っているのは、ボッチになると言う事だろう。
そして、それを覚悟してカースト転落しようとしよう。
陽キャの奴なんかはキャラを変えて一時友達が離れて行っても、また直ぐに関係は直せる。
が、僕は大前提として厨二病以外の言葉での会話は一切出来ないほどのコミュ症モンスター。陰キャでさらに人見知り、おまけに口下手。
そんな陰キャでコミュ症の僕が自然体で友達関係を1から、いや0から…いやマイナスから構築するなんて無理なのだ。
まぁつまり、僕は厨二病キャラを辞めるとほぼ全ての人間関係は絶望的って事。
なので今更キャラを変えれない、出来もしない、する勇気もない。
なので僕は陰キャの厨二病野郎なのだ。
――――
必要最低限しか厨二病ゴッコはやりたくないので学校外では1人行動が基本。
何故なら、登下校中なんかも厨二病ゴッコなんてやってられないからである。
「今日は金曜日だし、とても眠いし…。さっさと家に帰ろう♪」
「ん?約剣、お前今何か言ったか?」
タイミング悪く独り言は友達に聞こえてしまっていた。
約剣…学校との雰囲気違う?と悪気やイジではなく、シンプルに疑問に思った彼が声をかけてきたのだ。
「!?いや…今日も黒く不穏な影のない平和な一日だった。」
僕はプライベート気分中に不意に声をかけられたので一瞬は固まった。
下手を打てば学校での立場は消滅するという若干の恐怖からだ。
が、固まったのは本当に一瞬だけ。
長年厨二病言葉を使ってきたこともあり、不意に話しかけられてもある程度は直ぐに答えれるのである。
ちなみに、不意に話しかけられて直ぐ返せるのは厨二病言葉だけだ。
普通語なら答えられずに戸惑ってしまう…。
「そうだな…。」
一生懸命考えて言葉を出したのに、彼からは素朴で適当な反応が返ってきる。
適当な反応が返ってくる理由、それは飽きられているからが正解だ。
厨二病キャラというのは、初めは面白可笑しくても時間がたてば面倒くさいだけなのだろう。
厨二病について中学生の頃のは周りからは暖かい目があった。
だが高校にもなると流石に卒業しろよと思われ、人が大勢居る所では楽しんでもらえるが一対一だとこんな素っ気ない対応がほぼなのだ。
さらには彼は話しかけてはきたが、約剣がいつも通りだと分かるや否や、1人歩いてどこかへ行ってしまった。
「フワ〜…。 眠い眠い…。」
人通りのなかっあ陸橋で僕は手で口を抑えようとしても隠しきれないほど、大きな欠伸を1つ。
「何で今こんなに眠いんだ? 昨日も確か眠かった事もあって昨日の夜はそんなに覚えていないんだけど…勉強でもしてたのか? いや…でも…ゴニョゴニョ…。」
さらには周りが見えて居ない様に、変な視線など気にせずに独り言を早口で適当にゴニョゴニョ。
これは特段頭の回転が早いわけではないのだが、考える時は結構考え込んでしまうタイプだからだった。
「いや、まぁそんな事はどうでもいいか…。 どうせアニメだろ。 あ~眠い眠い。 フワァ〜。」
僕はそんな感じに目を閉じてしまうくらい大きな欠伸をもう1つ。
なんだかんだいつものルーティン。日常を過ごしている、その時だった。
―ピカッ―
僕は一瞬光った眩く強い光に包まれ、次の瞬間にはその場から忽然と姿を消したのだ。