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ラブコメ・恋愛

幼馴染が断捨離したので、俺だけは捨てないでと泣きついた

 

 久々に、女子の部屋に来た。

 突然、幼馴染女子にお呼ばれしたからだ。

 もちろん、久々の前に入った女子の部屋も幼馴染の部屋だ。


 様変わりしていた。

 ミニマリストみたいな部屋になっていた。ベッドと机と椅子ぐらいしかない。クローゼットには服やカバン等はしまってあるのだろうけど。

 

「どう、ニューわたしの私室」


 幼馴染は自慢げに部屋を見せてきた。わたしの私室というの二重表現を指摘することもなく無視して、俺は崩れ落ちた。

 高校生男子、女子部屋はもっと女子部屋していてほしい欲。いい香りがしない。幼馴染の髪の方がいい匂いだ。無味無臭。生活感がないです。


「ミ、ミニマリストに目覚めたのか」


「うん、ネット動画見てね、これだと思ったの。受験もあるし、部屋を綺麗にして、集中できるようにしようって」


 わかるわかるよ。ネットには自称ミニマリストは溢れていて、大学に行ったら、勝手に部屋をかたづけられて処分される悲劇。ならば、今のうちに自己整理をつけるのも一つの策。

 でも、でもさ、男子は、女子の部屋に夢を持ってるんだよっ。

 女の子女の子した部屋がいいんだよ。大学で一人暮らしだと危険だからと、男っぽい風の部屋にしてしまうだろう。今だけなんだJKブランドというカワイイに全力投球できる夏は。

 女子大生は大人な色気というシックな味わいにシフトチェンジして化粧という装いを鎧うようになる。


「なんで固まってるの。どう、良くない。ダンスもできるし、バットも振れるよ。何もないから」


 でもムードがない。

 これ、部屋の貸し出しができるレベルの部屋です。生活感って大事だなぁ。



「お、俺も、そうやって断捨離するんだな。俺のことも捨てるんだな」


 秘技、泣き落とし。メンヘラ男子発動。

 

「えっ、あー、今、むっちゃ捨てたいと思った」


 逆効果だった。

 人間関係も断捨離の罠にやはりかかっているのか。


「俺たちの思い出の品も捨てたのか」


「ん、んー、それって何のこと?」


「うわーん、捨てるぐらいなら、俺が全部引き取ったのにーっ」


 もうつけられなくなったブラジャーとか子供の頃抱きしめていたぬいぐるみとか中学時代のノートとか。全部、俺が宝物入れに収納したのに。

 嘘だけど。


「いやいや、なんでそんなめんどくさ気持ち悪いアピしてるの。クローゼットには残ってるよ、捨てたくないもの」


「検分します」


「だめっ」


「なぜだ、やましいことはないんだろう」


「プライバシー。荷物検査だからって、なんでも見られたらキモいでしょ」


 今時、荷物検査とかやってないだろ。それこそプライバシー問題だ。大麻でも栽培してなければ。

 力づくでスライド式のクローゼットのドアを開け放った。


「あ、ああっ!!」


 これはっーー。


「なんて可愛らしい私服なんだ。至福だ」


「閉じろ、バカっ!」


 クローゼットが閉められた。

 おかしい。ここには俺の写真が一面に貼られてある的なヤンデレストーカーじゃないのか。

 捨てられないのは、あなた、じゃないのか。

 あかさたな、から傘を抜いたら、あたな。


「今日からもったいないお化けとして、ここに定住します」


「あのねー」


 ムッチャクチャめんどくさい顔をされた。


「こんなに広いんだ。ヒロインだ。ヒロインなら、男の一匹ぐらい増えても」


「身の危険を感じるから。寝室は絶対別派だから」


 なるほど。

 ダブルベッドを購入しよう。全く、ツンデレなんだから。


「それで、俺は、ここでどうすれば。あっ、座る場所ベッドしかないな」


「正座」


 フローリングに着陸しました。


「それで、わたくしは、どうすれば。なんのために、この白い空間に呼ばれたのでしょうか。遊ぶものもなさそうな、この空間に」


「人の部屋を空間、空間、言わないでくれる。ただ綺麗になったから見せたかっただけ」


「よし、ジグゾーパズルでも作るか」


 これだけ広いのだから。


「捨てるのもめんどいよ、大きいと」


 捨てること前提で動くな。修繕費や資産除去債務のことは忘れようじゃないか。

 そうだ、絵画を飾ろうじゃないか。喫茶店でもよく分からない絵画が飾ってある。あれが、そこはかとない集中力を生み出すのだよ。受験生に、一枚。俺の描くキュビズム。

 正座から立ち上がる。そしてーー。


「人の部屋の壁に、トリミングの構えをして何してるの」


「いや、どれぐらいの絵を飾ろうかなって」


「あのね、飾らないから」


「えっ、壁画でいいの。この真っ白なキャンパスにスプレー缶で、やっちゃっていいのか」


「いいわけないでしょ。落ち着こうか」


 はーい。等身大の俺の写真を貼るのも悪くないのに。


「それで、俺の銅像が欲しいんだっけ」


「うん、サンドバック用に」


 手を痛めるよ。心配だよ。


「とか言って、抱き枕にするくせに」


「はい。一名様、おかえりでーす」


 ぬあー、背中を押される。フローリングを滑っていく靴下の悲劇。


「あっ、やめて。俺、ミニマルになるから。捨てないでー」


「捨てても帰ってきそう」


「ふっ、幼馴染、もう遅い、ざまぁ」


 俺は素晴らしいキーワードを口ずさむ。

 幼馴染ヒロイン、可哀想なぐらい負けヒロイン。 


「あー、捨てて後悔しないようにキープした方がいいかな」


「そうそうキープ!キープ!」


 うん?キープ?


「捨てるか迷う場合は、うん、とりあえず大学受験終わってから考えるね」


 あっ、こいつバッサリ高校時代の友人フェードアウトするつもりだな。同じ大学について行ってやる。

 幼馴染と同じ大学に行くんだもん。





 大学受験終了後。


「さーて、どこでシェアハウスする?」


「当たり前のように、そんな前提立てないでくれる」


「大丈夫。ミニマリストの分、俺がいっぱい持ち込むから」


 俺が考える最カワの女子大生の部屋にしてあげる。


「意味ないよね、それ。スペース埋まるよね」


「ベッドは二つあると場所をとるな。ダブルベッドにしようか」


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