⭕ 井戸の中からパンパカパ~~~ン♥️ 1
むかし、むか~~し、のお話です。
ある所に “ ガンライ ” という名前の青年が居ました。
ガンライは仕事でとある村へ来ていました。
ガンライは廃屋と化している家を徒歩で転々としていました。
1人で寂しく廃屋巡りをするのは寂しい為、ラジオを聴きながら歩いていました。
ガンライ
「 あぁ゛ぁ゛~~~~ついてないなぁ!
何でハズレ籤を引いちまったんだ…。
何が『 呪縁の舞台になりそうな空き家を見付けて来い! 』だよ……。
こんな廃屋ばっかの村で都合良く空き家なんか見付けられる訳あるかよ… 」
ガンライはラジオ番組を聴きながら歩き続けていると、道端に俯せになっている白いワンピース姿の女性を見付けました。
ガンライが女性だと思ったのは、黒髪が長かったからです。
ガンライ
「( 7月の暑い日中に長袖のワンピースを着て、道端に俯せているなんて変な女だな。
夏だからかな?
きっと暑さでイカれたんだな。
可哀想になぁ……。
くわばら,くわばら… )」
ガンライは道端に俯せになりカサカサと怪しく動いている女性に声を掛ける事にしました。
この村の住人かも知れないからです。
ガンライ
「 あの~~、すみません。
お取り込み中の所、邪魔して申し訳ないんですけど……一寸お聞きしたい事がありまして……。
宜しいですか? 」
ガンライは不審人物に対して成るべく丁寧に声を掛けてみました。
近頃は銃刀法違反も無視して折り畳み式の刃物を護身用に持ち歩いている人々が多く、何かと物騒な世の中となっているからです。
この奇行を披露している怪しい人物も刃物を隠し持って居ないとは断言が出来ません。
慎重に対応する必要があるとガンライは判断したのです。
不審人物
「 ──はいはいっと。
迷子ですか?
交番に案内しましょうか? 」
道端に俯せてカサカサと怪しく動いていた人物は「 よっこらせ 」っと言いながら身体を起こして立ち上がります。
ワンピースに付いた汚れを軽く叩きながら、ガンライの質問に返答してくれました。
どうやら不審人物には言葉が通じるようで、会話が成り立つ事が分かったガンライはホッと胸を撫で下ろしました。
ガンライ
「 あの……どうして道端で俯せになっていたんですか? 」
ワンピース男
「 はぁ?
あぁ……躓いて転んだ拍子にコンタクトを落としてしまいましてね 」
ガンライ
「 そうだったんですね……。
この暑い日に長袖のワンピースで暑くないんですか?
それに長いカツラまで被って…… 」
ワンピース男
「 カツラぁ?!
これは地毛だよ、地毛。
ほら、第1次ホラーブームで爆発的人気が出たキャラが居ただろ?
黒髪で白いワンピース姿のキャラが 」
ガンライ
「 あ、あぁ……確かに居ましたね。
サ◯コ…でしたよね?
呪いのビデオブームを巻き起こした。
知ってますよ、オレは【 Withサ◯コ ~ もうサ◯コしか見えない ~ 】でオカルトに興味を持った口ですからね。
小説,漫画も買って読みましたもん 」
ワンピース男
「 オレがね、サ◯コの原型になったんだよ 」
ガンライ
「 えっ?
マジですか?? 」
ワンピース男
「 マジマジ。
この村、サ◯コの過去シーンに使われてさ、一時期は【 サ◯コ巡礼の地 】として観光客が絶えなかったんだぜ。
今は見る影もないけどな~~ 」
ガンライ
「 どうしてですか? 」
ワンピース男
「 コロナだよ、コロナ~~~。
感染力が高いだろ、蔓延防止対策で『 県外を跨ぐの禁止 』とか『 GO to企画 』もオジャンになったお蔭で、全国の観光地は大打撃を受けちまったろ。
この村も大打撃を受けた1つって訳よ。
夏と言えばホラー,オカルトだって騒いで賑わいでたのにさぁ、観光客が来なくちゃ廃れちまうだろ? 」
ガンライ
「 た、確かにそうですね…… 」
ワンピース男
「 お兄さんも映画で登場した場所、探してんの?
サ◯コが父親から井戸に落とされた場所をさ 」
ガンライ
「 あるんですか? 」
ワンピース
「 あるよ。
当時は未だ人が住んでたから、撮影する為にさぁ、家主と家族に撮影する許可を取って、撮影が終わるまで態々旅館に泊まってもらったんだ。
初代主人公が井戸の中へ入ってサ◯コの白骨死体を見付けたシーンも、2代目主人公がサ◯コに追われて井戸を這い上がるシーンも取られた有名な巡礼地だぜ。
案内しようか? 」
ガンライ
「 有り難う御座います!
以前は住んでた──って事は今は? 」
ワンピース男
「 今は空き家だな。
空き家になって未だ1年も経ってないな 」
ガンライ
「 それだぁーーーー!!
その空き家って撮影に使えたりしますかね? 」
ワンピース男
「 撮影??
何の撮影だ? 」
ガンライ
「 えと──【 呪縁 ~ 呪われた縁。もう、誰も逃がさない ~ 】ってホラー映画の撮影なんですけど…… 」
ワンピース男
「 うほっ、マジで?!
因みに監督は誰? 」
ガンライ
「 曼荼宰監督です 」
ワンピース男
「 ばんだおさむ??
聞いた事ない名前だな?
新人か? 」
ガンライ
「 さぁ?
多分…そうじゃないですかね?
色んなオカルト番組の再現ドラマの助監督をやってたみたいですよ 」
ワンピース男
「 へぇ?
再現ドラマの助監督を体験してホラー映画かぁ。
出来上がりが楽しみだな 」
ガンライ
「 そうですね 」
ワンピース男
「 着いて来いよ。
噂の井戸に案内してやるから 」
ガンライ
「 はい! 」
ガンライは白いワンピースを着て臀部まで伸びた地毛を下ろしている男に案内されるまま、村の中を歩き出しました。