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国土保全機関葬祭部門は掃除が得意  作者: ムツキ
第五章・危険な賭け
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◆ 1・ギルの大義 ◆


 ギルにとって、兄は憧憬の対象だった。強く立派な兄のように自分もなりたいと思っていた。

 その兄の訃報を持って現れた兄の上官は死因をモドリモノの大量発生に巻き込まれての戦死だと告げた。

 国境警備の任についていたはずの兄が何故モドリモノとの戦いに巻き込まれたのか、ギルには分からなかった。上官は言葉に詰まりながら、答えた。


『本来、国土保全機関軍事部掃討課の仕事だったが、来るはずだったアイブス軍曹の到着が遅れたため……戦死者の数は増え、モドリモノに転化した彼らばかりか、まだ死んでいない者さえも脅威査定に引っかかり危険と判断されてしまった。その中の一人に君の兄がいた』


 そう上官は言った。


 アイブス軍曹が拒否したせいで兄が危険に陥り、仕舞いには命までもその手によって奪われたのだと、ギルには理解できた。だが悲しみの方が大きかった。母が病み、アイブス軍曹を自分が倒すからと母を元気付けているうちに段々と、アイブスへの怒りが心を満たして行った。


 そんな時だった。彼女に会ったのは――。


『私は国土保全機関葬祭部のものだが、アイヴィー・アイブスの事を調べている。噂では州軍国境警邏隊の大量殺人事件がモドリモノ戦役による戦死と虚偽報告がなされていると聞いたが?』


 純粋に驚いた。

 兄の死に、隠蔽工作があったことを彼女から聞いてアイブスへの怒りは憎悪へと変化した。


『アイヴィー・アイブスはヘッドリー子飼いの暗殺者だ。元々彼女はヘッドリーの政敵になりそうな者の排除を行っていたが……今回、お前の兄グレンはその戦いに巻き込まれたのだ』


 聞けば聞くほど、真実味を増していく話しにギルは彼女の力になりたいと告げた。アイヴィー・アイブスを正義のために倒すのだと彼女と契約を交わしたのだ。

 ノエル・ランサムと――。


「なっ、……っ!」


 フラン達を押し込んだ部屋へと続く通路は死体と呻き声に塗れていた。

 まだ息のある兵が折り重なるようにして固まっている。


「何があったっっ、人質はどうした!」


 駆け寄る足は、すぐに止まった。

 咀嚼する音だ。

 呻き声を上げる人間と、人とは言えない存在。


「……な、なんで……」


 呆然と呟き、後ずさる。



 なんでっ、ここにモドリモノが!



 フランのいた部屋に駆け込むが、人影はすでにない。

 警備兵の死体に齧り付いているのは、いるはずのないモドリモノだった。

 どの顔もフランではない事を確認したギルは走り出す。廊下に残る死体と血の跡を辿れば、入室禁止とされていた部屋の前にたどり着いた。この部屋が何であるかよりも、中から絶え間なく響く銃音に気が急く。


 取っ手に手をかけて引けば、鍵は掛かっていなかった。中は思ったよりも暗く、拳銃を手にその中へと足を踏み入れる。自ずと視線は下り、眼下の景色が目に入った。

 化物たちの姿、そして憎い女の弟がいた。


「フラン、生きてたのか……」


 フランの事を憎いと思った事はなかった。ただ嫌いだった。なにもかもを兼ね備えたお坊ちゃんな彼が、嫌いだった。

 それでも、逃げ延びるチャンスは与えていたのだ。



 あの時、もし……休みを取らなければ、今の状況にはなってない……。俺は、どっちでも良かったのかもしれない。友達じゃない、憎い奴の家族だ、でも……。



 銃を構える。

 見上げるフランの銃は化物に向いたままだ。

 迷うように銃を持つ手が震えている。


「ギル、姉さんは本当に……お前の兄さんを?」


 ギルは引き金を引いた。

 フランの頬を掠って消える。人を殺した事はない。だが、復讐を遂げるという事はこういうことなのだと分かっている。降下のスイッチを押して、降りていく。


 撃たれても死なない死体が蠢いていた。

 当たり前だった。フランはまだきちんとしたモドリモノの知識が足りていない。どこを攻撃すべきかを知らないのだ。また、知ったからと言って攻撃する腕はこの場の誰にもない。

 恐怖は不思議と消えていた。


「フラン。銃を構えろよ。弾、残ってんだろ」

「……ギル」

「俺は、兄貴のためにお前を殺すんだ」


 自分に言い聞かせるように呟いて、銃口を向ける。フランの銃はいまだギルには向けられていない。迷いを打ち消すように、ギルは銃を見つめる。


「姉さんは姉さんで、俺は俺だっ。お前だってそーだろっ。なんで俺とお前がこんなことになるんだよ!」


 苛立ちの余り、駆け寄ったギルはその顔を殴った。


「ふざけんなっっ、復讐が何も産まねーとか言いたいのかよ! 少なくとも復讐すれば、俺の気は晴れるんだよ!」


 フランに憎しみはなくとも、フランの生い立ちの全てには憎める要素があるのだ。二度三度と殴れば、フランも殴り返してくる。


「嘘だっっ」

「貴族の坊ちゃんには分からねーよ!」


 腹を打たれ、頭を蹴られ、お互いが傷を増やす中、近寄るモドリモノをシャノンとウォルターが銃撃している。



 無駄だ……全部無駄……。信号を出す脳が詰まった頭を完全破壊するか、頭と胴体を切り離すしかないってのに……。……本気の喧嘩なんか何年ぶりだろ……。



 ふと殴り合いながら、自分の思考にギルは待ったをかける。



 喧嘩? これは喧嘩じゃねぇ……これは俺の復讐で、フランは友達じゃねーのにっ。俺は。



 フランの腹に拳が決まり、腰の銃を引き抜き怒鳴る。


「殴りあう必要なんかねぇー、生きる余地なんか与えるか! 兄貴が死んだせいで、俺の人生も変わったんだよっっ! お前の姉がホントに殺したかだってっ? 疑うなら聞いてみろよ! あのラン……っっ!」


 銃音が響く。

 胸を撃ち抜かれていた。

 ギルは血を吐き、膝をつく。思いもよらない方向から撃たれたのだ。振り仰いだそこには濃紺の制服の端を翻して去る金髪が見えた。



 そんな……、何で……っ。



 息が詰まり、もはやどこが痛いのかわからない。

 ドアが閉まる音を聞きながら、胸を押さえる。傍にモドリモノが寄って来ていた。慌てて頭を撃ちぬくが、動きは止まらない。視界の端でフランが銃を撃っていた。



 何で……。



 腕を掴まれ、引き金を引こうとしてその顔が目に入る。



 ……ノーマン……?



 引き金を引けないまま固まるギルの腕に彼の歯列がめり込み、引き裂いていった。



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