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国土保全機関葬祭部門は掃除が得意  作者: ムツキ
第四章・失望の夜
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◆ 3・トラウマ ◆


「おや、イーズデイル先輩。お久しぶりですね」


 クリフォードは北部区域統括国土保全機関作戦本部の会議室から出たところで、鉢合わせた年上の将校に声を掛けた。

 黒髪に青い目をした男はクリフォードよりは三つ上なだけで、将校連中の中では若手である。顔立ちは神経質そのもので細い銀縁眼鏡をかけていた。


「ヘッドリー大佐。先輩は止してくれ。お前はもう上役じゃないか」

「大佐と中佐。さほどは違いませんよ。私は運が良かっただけですからね、イーズデイル先輩も近々昇進と聞いておりますから、すぐに同列じゃありませんか。そうなれば、先輩は目上の方ですからね」

「相変わらず、口のうまい事だ」


 ニコリともせずにオズワルド・オブ・イーズデイルは答える。


「それで、何か用か? お前は西部区域の人間だろう? なぜ北部にいる」

「色々とありましてね。ところで先輩、少しお話しをしませんか? お互いに今抱えている案件について」

「またにしてくれないか?」

「それは困りました。こちらとしては、先輩の顔を立てて置きたかったのですが」

「ヘッドリー、何が言いたい」

「あなたの進退に関わる重要な件ですよ」


 ドアを開けて微笑むクリフォードに、イーズデイルはため息を一つついて室内に入った。扉を閉めるとクリフォードは手にしていた書類のうちの一束を取り出して渡す。


「ご覧ください」

「なんだこれは」


 答えないクリフォードに、渋々といった体でイーズデイルは書類に目を向けた。そこにはクリフォードが個人的に調べていた事が書かれている。

 無言のイーズデイルから離れ、窓辺に立つクリフォード。


「北部区域統括軍人養成所の職員数名が業務外行動をしており、別途報奨金が出ています。要請兵にも同じ事が言えますね。こちらは特別演習とされており、受けた者は全員卒業後に葬祭部総務課へと募兵されていました」

「これが何だというのだ。私に北部養成所を摘発しろとでも言っているのか? だとしても、職務外だな。養成所に言えばいいだろう」

「そこにも書いてある通り、所長のテレンス・ウォーカー大佐の懐事情が少し可笑しいんですよ。収賄が疑われます。人員の流れも資金の流れの不自然さもその書類でお分かり頂けるでしょう」

「だから何だというんだ。私にもお前にも職務外の事だろう!」


 焦れた様にイーズデイルが書類をテーブルに放った。


「勿論、これは葬祭部の問題ですから軍事部の私には無関係と言えば無関係。どこにどのように金が流れたかまでは調べておりません。先輩がこの件を調べたいと仰るなら、お渡ししようと思いまして。ああ、お父上であられる葬祭部葬務課所属ブライアン・オブ・イーズデイル中将の事を問題にはしておりません」


「貴様……っ。言うに事欠いて父上をっ」

「ですから、問題にはしておりませんし、お互いにそこまで大事にする気はないだろうという確認をしたまでですよ、先輩」

「確認だと? 私に忠告でもしているつもりか?」

「忠告? いいえ、先輩。私はそんな無駄な事はしませんよ。これは、いわゆる脅迫ですが?」


 はっきりと言葉にしたクリフォードに相手も驚きに目を見開く。


「私の義弟フランシス・オブ・オルコックから手を引いてもらえませんか? 引いてもらえるのであれば、こちらの書類にサインをお願いします。あなたのカディッサにある別邸の権利書です。そうすればこちらの書類をあなたにお渡しします。この金の流れを追えばどうなるか一番理解してらっしゃるのは先輩でしょうからね」


 聞き間違えようもない程に伝える言葉は糾弾ですらない。


「何の話か分からんな。脅迫だなどと、お前の弟の話しも知らん! 別邸をくれてやる気もないっ。冗談も程々にするのだな。調べたければ勝手に調べろ。その書類を出したければどこにでも出せばいい。お前が恥をかくだけの事だ。誰がイーズデイル家を調べるものか!」


 鼻白んだ彼は怒鳴り散らす。そうして、不機嫌そうにドアを開けて去っていった。

 クリフォードはテーブルに捨てられた書類を拾い上げゴミ箱に捨てると、手にしていた他の書類を鞄に詰め込み部屋を出た。車に乗り込んだ彼は運転席の下士官に行き先を指示する。


「カディッサの州軍警邏部に向かってくれ」


 備え付けの電話を取り、一件のナンバーを打ち込む。

 長い格式張った相手の言葉をじっと聴き一つだけ命じた。


「コリン・ミルズ大尉を待機させてくれ」




 モドリモノの事をシャノンはあまり知らない。

 彼女は人を殺すために育てられたのであって、モドリモノとの戦闘は全くの論外だった。それでもフランたちと知り合ってから、色々と知った気がしている。


 モドリモノとの戦闘では、かすり傷さえ致命傷。敵に受ける傷は毒のように体内に広がり、自分もモドリモノになる。

 分かっていても、下に広がるモドリモノに対する恐怖感より初めて友達になってくれたフランが心配だった。


 だから手を離して、モドリモノの伸ばす手に落ちた。

 運が良かったのは肉のクッションに出来た事。

 もう一つは銃が近くにある事。


 シャノンは二体のモドリモノを押しつぶしたものの、掴まれる寸前でソコから転がって逃れて銃を手にした。

 悪い事の一つは暗すぎる事だった。扉が閉まると微かに塗られた蛍光塗料が薄く薄幸する壁の明かりと天井から垂れる豆球一つのみとなっていた。


「フランっ」


 フランも肉布団のお陰でさほどの重傷はなさそうだった。

 だが、意識がないのかピクリとも動かない。

 シャノンは寄って来るモドリモノを銃で撃ち倒しながら、フランの傍まで駆け寄った。彼に手が伸びる。寸でで、手を撃ち抜きその頭を撃つと銃を構えた。

 弾には限りがある事を知っている。


「フランっ、起きて! お願い動いて……っ」


 腕を掴み、揺するが彼は小さく呻いただけだった。

 彼女は弱い自分をすでに何度も見放してきた。自分自身で自分のダメさに辟易としてきた。ネイトの言った言葉は本当の事だった。


『暗殺者にも一般人にもなれない』


 彼の言うとおり、そんな中途半端な人間の生きていく場所は狭い。殺すのが慈悲だというのも納得はできていた。


「誰を巻き込んでもいい、巻き添えで死者が出ても仕方ないって、ずっと思ってたの……思ってたけどっ、……あの時! フランが守ろうとしてくれた。だから、……だからっ、フランはもう、殺させないっ」


 彼に近寄るモドリモノに銃を撃ち続ける。撃って、撃って、更に撃とうとして――彼女は硬直した。

 そこには『シャノン・クィン』が立っていた。


「そ、……そんな……っ」


 手が伸びる。

 シャノンには『シャノン』をもう一度殺す事などできなかった。

 覚悟をしたように目を閉じかけたシャノンに、フランの足が映る。

 彼は『シャノン』の手を蹴り上げていた。体を丸めて起き上がり、シャノンの手を掴んで部屋の端に逃げる。


「弾は、後何発だっ」

「わ、わかんない……必死だったから」

「とにかく、上に、上にあがろう……」


 近寄るハラカラから逃れながら、ツチビトの合間を縫って階段を探す。どこかに上に上がる階段があるはずだった。

 モドリモノを入れた道があるはずだというフランに、シャノンも心得たように、くまなく目を凝らす。


「……ない、ないよっ」

「なんでだよっっ」

「ふ、フラン。まさか……さっきみたいに上から落としてたんじゃ……」


 良く見ればモドリモノたちの中には不自然に折れ曲がった足や腕の者がいる。


「そんな……っ。だとしたら、マズイ……」


 壁はつるりとした鉄で出来ており、クライミングなどできる気配はゼロだった。


「どうするっ、どうすりゃいい……っ」


 フランは必死で考えていた。仮にフランの肩にシャノンが乗ったところで柵には届かない。いつまでもこのままではいられないのだ。蛍光塗料は徐々に光が消費されて光源が狭まっている。


「フランっ」


 そしてフランの視界にキラリと光る眼鏡が入り、足が止まる。


「のー、まん……」


 そこにはミツギをしたと言っていたはずのノーマンが土を貪っていた。

 こちらに見向きもしない。

 体にいくつもの穴が開いている以外は綺麗な見た目と言えた。周囲に視線を走らせ、その中に見つけたくなかった姿をまたも見つける。


「ブラッド……っ」

「フランっ」


 近寄るモドリモノから、フランを引き剥がし銃弾を打ち込むシャノン。



 なんで、なんでこんな事……ギル、お前はこれを見ても何とも思わないのかよ!



 二人は追い詰められていた。



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