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国土保全機関葬祭部門は掃除が得意  作者: ムツキ
第三章・ミツギの汚業
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◆ 6・交錯 ◆


 路側帯に停めた車内で、ジョザイアは鼻歌を歌っていた。

 ライトは消している。

 それなりの距離にあるガソリンスタンドでは、先ほどまで折火花が瞬いていた。スタンドの電気が落ちてからも随分経っている。


 やがて、ボンネットに手をつく人影が現れた。ジョザイアが顔を上げるより早く、助手席側のドアが開き、乗り込んでくる。

 泥と血に塗れたメイド服の女である。そのうちの何割が自分の血なのかは分からないが、悪くない出で立ちだった。


「珍しくボロボロだね。良い色だよ」


 ユージェニーに言えば、彼女は不機嫌そうに眼鏡を外した。

 数台の車のライトが暗闇を照らし去っていくのが見える。


「ウォルターはイーズデイルの別荘だと思うよ。見てきたけど警備凄かったよ。多分、彼らも連れて行かれる先は一緒だとは思うけどね。とりあえず囮組を追うけど、行き先が分かれたらユージェニーだけ降ろして僕は行くよ。その場合は、君だけで囮組を保護する事になるかもね?」

「了解ですわ。アイヴィーにギル・パーカーを確認した旨も伝えてくださいな」

「わかったよ」


 弾を装填しながら、ユージェニーはため息をつく。


「どうしたの? もしかして情が移ったの? あの子たちが死ぬのが怖いの?」


 面白そうに聞くジョザイア。


「いいえ、少しもですわ。勿論アイヴィーにはあの子達を守るようには言われてますわ。でも、死んでしまったとしてもわたくしのせいではないし、哀しむアイヴィーを慰めるのを想像すると滾りますわ。だから困るんですの。どちらを選ぶか……揺れてしまいますわ」

「ふーん」


 興味を失ったようにジョザイアはエンジンをかける。

 ライトをつけずに車は発進する。


「僕が言うのもなんだけど、君も随分、痛い壊れ方してるね」

「殺人鬼に言われるとは心外ですわ」


 髪を梳かし、エプロンで顔を拭う。ユージェニーはそばかす一つない綺麗な顔で、エプロンを後部座席に捨てた。




 フランは目を覚ましてすぐに行動した。飛び起き、周囲を見回す。

 二人の人物がいた。

 慌てて、白いワンピースのシャノンに駆け寄る。


「シャノン!」


 揺すれば、彼女はかすかに呻いて目を開けた。

 自分にも彼女にも外傷はない。ただ頭がどうにもはっきりしない。熱を出した時のように、頭に霞がかかったようだった。


「フラン……? ここは?」

「監獄じゃ」


 体を起こす彼女に答えたのはもう一人の人物だった。

 初老の白髪の男には無精髭が生えていたが、ウォルター・クィンで間違いない。


 監獄という言葉にフランは室内を見渡す。


 ガラスの嵌った天窓からは白みかけた空が見え、壁も床もクッション性の優れた白いマットで覆われている。しかも三人とも縛られていないのだ。

 少なくとも監獄という言葉の持つイメージからは程遠い。


「ウォルター・クィン……だよな? 無事だったんだっ」


 見たところ外傷はない。草臥れた灰色のシャツと擦り切れたズボンを履いてはいるが、食事はちゃんと取れているのか、血色はいい。


「お前さんらは『目撃者』か」

「あ、まぁ……それもあるけど、助けに来たつもりだったんだ」

「……助けに?」


 捕まっている手前、力一杯頷く事もできずに目を彷徨わせる。助けにきたという人間が同じ檻に入っているようでは話にならない。

 ウォルターはため息をついて顔を伏せた。


「ワシはかつて、ここの奴らの仲間じゃった。お前さんらは来るべきじゃなかった。逃げるべきだったんじゃ」


 苦々しい声に、シャノンがその手を掴む。


「いいえっ! 絶対あなたは助けてみせますっ。シャノン、に、……代わってっ」


 フランはシャノンを見て、目を開かされた気分だった。


「そうだよな。絶対助けるっ」


 老人は呆気に取られた顔で、またため息をついた。



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