序章
・オルクドートとは何や
九六五年現在、「星欧のハリネズミ」と呼ばれるオルクセン連邦では徴兵による多数の動員兵力を誇り、エルフィンド戦争直前期とほぼ同じ頻度で予備役召集と演習が行われているため、練度も高いレベルで維持されれいる。
そんなオルクセンでは、兵営を中心に「オルクドート」というジョーク集が語り継がれ、作られ続けている。
オルクドートとは、ロヴァルナの「アネクドート」(古アレク語で「真実の話」を意味する)に由来し、アネクドートと同じく、「本当にありそうな嘘話」としてオルクセン全土で通用している。
オルクドートがいつ生まれたかは不明だが、デュートネ戦争から間もない星歴八二〇年代に出版された喜劇集本に、現在のオルクドートの原型となった話が多数収録されていたため、この時期には既に普及していた事が分かる。
そしてオルクドートは民間での普及後、軍内でも普及し、軍と民間互いで発展し合ったものと推測されている。
だが、アネクドートが強権政治と言論弾圧の中で政権批判や現状の生活への皮肉といった方面に進化したのに対し、オルクドートは言論の自由が保証されていたこともあって、政治方面に特化しなかった。代わりに長命魔族多種族王国という国情を反映し、他種族や懐古主義者への皮肉、軍の上級将校のやらかしが話の主題となっている。それ故、オルクドートにアネクドートのような「キレ」を求めてはいけないし、むしろ共感さえ覚えるようなネタが多いだろう。
ちなみに、本家アネクドート同様、政権批判に特化したジョークはエルフィンド州で語られており、こちらは「エルフドート」と呼ばれている。エルフドートについては本著の主題から外れるため紹介を省くが、もし機会があればこれも特集したい次第である。