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異世界転移して平和に暮らそうと思ったらクラスメイトたちに自分の街を滅ぼされたので、仕返しに反乱を起こすことにしました。  作者: 藍枝 碧葉
第五章 相手は魔物、人間じゃねぇんだ。それを狩ってなにが悪い。だって俺たち弱者を救う勇者様なんだぜ──室多 泰我
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第20話 簡単には終わらせない

「──室多(むろた)!」


 物陰から様子をうかがっていた拓臣(たくみ)は、金髪少年の後ろから出てきた少年──室多(むろた) 泰我(たいが)の姿をみて腰の剣の(つか)を強く握る。

 今、剣を抜いて光の刃を放てば、確実に室多を仕留(しと)められる。


「ふぅ……」


 だが、拓臣はゆっくりと息を吐き出して、(たか)ぶる気持ちをしずめた。


「ここで殺したらそこまでだ。リオンヌを、街の人たちを殺した(むく)いはそんなものじゃ許されないんだ」


 拓臣は静かに決めていた。

 最終的には室多を殺す。だが、簡単には終わらせない。


「ムロタ殿、私は軍を立て直す。勇者殿にこんなことを頼んで申し訳ないが、女たちを安全なところへ避難させてほしい」

「おう、わかったぜ、こっちは任せておけ」


 室多は再び天幕(てんまく)の中へと戻り、()身着(みき)のままの女性たちを連れ出して、闇の中へと駆け出していく。

 金髪の少年はこの軍の指揮官、リウヴェネス侯爵(こうしゃく)長子(ちょうし)スタラートなのだろう。走り去った室多たちを見送ってから、大声を張り上げる。


「お前たち、どうしてしまったんだ!? しっかりしろ!」


 だが、周りの騎士(きし)従士(じゅうし)たちは耳を貸そうとせず、一心不乱(いっしんふらん)に目の前の味方と剣を交わし続ける。


「スタラート様!」


 一人の従士がスタラートの元へと駆け寄ってきた。

 スタラートは()(よし)もなかったが、これは変装した拓臣である。


「おお、お前は正気なのだな、助かった。これは一体何が起こっているんだ!?」

「それは……私にもわかりません。酒の勢いというレベルは超えていますし」


 拓臣はスタラートに避難するように勧める。


「ここは危険です、いつみんなの剣がスタラート様に向くやもしれません。いったん、外の兵士たちと合流して、騒ぎを収めるべきかと」

「ああ、そうだな。お前の言うとおりにしよう」


 目の前の騒乱から身を(ひるがえ)して、この場を離れようとする。


「お前もついてこい、急いで歩兵たちをつれ──ぐぶっ!?」


 スタラートの胸から剣の切っ先が突き出ていた。

 背中から拓臣が胸を貫いたのだ。


「お、お前……!?」


 苦痛と恐怖に満ちた表情で振り返るスタラート。


「おまえはこの軍を率いてノーヴァラス──魔族(まぞく)と人とが共存する街を滅ぼし奪った。それが、ここで僕に殺される理由だ」


 そう言うと拓臣はスタラートの腰を蹴りつけて地面へと転がした。

 剣が抜けたあとの傷から血がとめどなく流れていく。


「……スタラート様! どちらにおわす!?」


 歩兵たちだろうか、遠くから指揮官を探す声が聞こえてきた。

 拓臣は無言のまま剣を振って血を払いのけてから(さや)へ戻す。

 無言でこの場から立ち去ると、檻車(かんしゃ)がある方へと向かう。


   ○


 この日、スタラートが率いる軍隊は壊滅した。


 突然発生した騎士や従士たちの同士討ちにはじまり、その後、騒ぎを聞きつけて駆けつけた歩兵たちにも襲いかかるという醜態(しゅうたい)を見せたことは王国内に大きな衝撃をもたらした。

 貴族たちで構成される騎士や従士たちの狂乱に、平民である歩兵たちは防戦に徹することしかできない。

 さらに、混乱の中で指揮官であるスタラートが戦死し、さらに隊長や参謀(さんぼう)クラスの騎士たちも同士討ちの混乱の中で倒れてしまったことで指揮系統(しきけいとう)が完全に崩壊した。結果、軍隊は国境目指して散り散りに逃げ出す形になってしまったのだ。


 原因は過度の飲酒による衝動的な同士討(どうしう)ちということに結論づけられた。

 責任は、混乱の中で辛うじて生きのびたスタラートの副官(ふくかん)と歩兵隊の隊長にあるということになり、彼らの処刑が即日決定された。だが、それはスタラートと勇者ムロタをかばうための理由づけであるということは、誰の目にも明白だった。


 そして、かばわれたとはいえ、同行していた勇者──室多に向けられる視線には厳しいモノが混じるようになる。


「勇者様は女どもを連れて魔帝領から逃げ帰ったとさ」

「スタラート様を見殺しにしたお偉い勇者様さ、俺たち下級兵士はともかく貴族様よりも偉いってさ」


 この件については箝口令(かんこうれい)──軍によって口止めがなされたが、兵士達の間の噂話は水面下で、王国や各国の領内にまで拡がっていったのだった。

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