オークとの激闘
[相棒視点]
俺は風下でオークの隙を狙っていた。
キョロキョロと当たりを見渡していたオークは、安心したのか少しだけ動きを止めた。
ギリギリと弓を引き絞り、矢を放つ。
シュッ
「ブギァァァアッ!?」
その矢は真っ直ぐにオークの右目に飛んでいったが、オークは咄嗟に顔を背け矢が目に刺さるのだけは回避した。
だが目の上に傷が出来ていて、流れ出した血が右目を伝い顎まで垂れていた。
俺はすぐに身を翻し、別の場所へ移動する。位置がバレないようにするためだ。
ゆっくりとオークの背後に移動し、矢をつがえる。右足の膝裏に狙いを定め
シュッ
今度は外すことなく膝裏に突き刺さった。
よし、上手くいってる、これでやつはうごけなッ!?
目があった。
怒りの形相で俺を睨んでいた。
足に矢が刺さっているのをものともせずに突進してくる。
「ギッ!」
俺は急いで木に登るが、オークはそのまま木に向かって体当たりしてきた。
ドンッ!
鈍い音がしたと共に俺の体は宙に投げ出される。
俺は空中で信じられないものをみた。
嘘だろ……どんな馬鹿力だよ
オークは体当たりで木を根元からへし折っていたのだ
やつは顔をあげて、ニヤリと笑った。
ああ、終わった……
オークは槍を構え、落ちてくる俺に狙いを定める。
そして勢いよく槍を突き出した。
―――――――え?
やつの槍はあろうことか俺の手前で止まっていた。
俺は咄嗟に槍を払いのけながら、オークの顔面をナイフで切る。
素早く距離をとった。
そうか、やつは片目が血で染まっていて、距離感を誤ったんだ。
俺は顔を抑えてるオークに向かって矢をつがえ、放った。
今度は腹に当たったが、角度が悪かったのか、浅い切り傷を作り矢は弾かれていった。
オークは血塗れの顔で俺を睨んだ。
そして突進の構えをとる。
「【輪】」
オークは突進の勢いがつく前に俺の罠につまずき、
シュッ
今度は肩に切り傷ができる。
「ブオオオオ!!!」
オークが怒りの雄叫びをあげるなか、俺は更に矢を構えた。
だが放つよりも先に、オークが地面をすくい上げ、俺に投げつけていくる。
オークの力で投げつけられた土は散弾銃のように襲いかかり俺は衝撃で後ろに倒れた。
オークはゆっくりと立ち上がると、槍を構えてずしんずしんと走ってくる。
「ギャッ」
俺は急いで弓を顔に向かって放つと、当たったかどうかも確認せずに後ろを向いて全速力で走り始めた。
あんなの無理だ、防御力、攻撃力が高すぎる。
俺がいくら攻撃してもほとんど効かず、オークは土を投げるだけで俺を吹き飛ばせる。
無理だ。逃げよう。
と、思った。
幸い、オークは足が遅い、本気で走り続ければ逃げられるだろう。
逃げられる?
疑問に思った。
逃げられる程のスピードの違いがあるのか。
なら勝てるのでは?
自問自答を繰り返す。
今俺は傷を負っているのか?
いや、相手は傷だらけだが、俺には傷はない。
つまりあのオークは回避能力が低い。
片目も血で染まっていてあまり見えていない。
だけどどうやってあの防御力を突破する?
弓矢を刺さったのは1本だけ、他は弾かれた。
ナイフだって切り傷を作っただけだ。
いや、待てよ。突破する必要はないんじゃないか?
オークだってただの魔物だ。血を流せば弱まり、いずれは死ぬ。
今だって血は流れ続けているではないか。
あとはあの攻撃に絶対に当たらなければいい。
それは簡単だ。俺は狩人。
隠密、罠、不意打ち、全てを使ってあのオークを狩る。
俺は全速力で走り、草むらに飛び込むと、伏せながら移動を開始した。
*
[オーク視点]
なんなんだあのゴブリンは
俺は何と戦っている
シュッ
痛い
何時間戦ったか思い出せない
もう声を出す体力はない
臭いを嗅ぎ奴の位置を特定しようとするが、ある時を境に全く臭いがしなくなった。
シュッ
痛い
気づけば俺の右足には矢が3本も刺さり、切り傷が沢山出来ていた。
もう歩くのがやっとだ。
シュッ
だめ押しと言わんばかりに右足に矢が飛んでくる。
俺は膝をついた
矢の飛んできた方向をたどって位置を特定しようとするが
ッ!
背中を切られた
俺は咄嗟に槍を振り回すが、手応えはない
後ろを振り向くがゴブリンの姿はもう見えなかった。
ガサッ!
右で草を踏む音がした
俺は一か八か槍を投げる
やったのか?
突然後ろから頭を捕まれる
ブチュッ
視界が真っ黒に染まり、遅れてくる激痛で体がいうことを聞かない
左目がつぶされたんだと理解した。
俺は真っ赤に染まる右目で周りを見渡す。
気付けば背の高い草むらの中に俺はいた。
臭いだ、早く臭いでゴブリンの位置を特定しッ
鼻を切られた感覚
俺は最後の力を振り絞り音のする方へ両手を振り回す
なんで!なんで!!
攻撃が当たらない
どこにいるのかわからない
意識が薄れゆく中で、俺の頭は疑問だらけだった。
少なくともこれだけはわかった。
奴に一回も攻撃を当てられなかった。
*
「勝ッタノカ」
俺はオークの後ろから近づき、石を投げつけ、もう動かないことを確認する。
本当に勝ったのか、あのオークに
俺は全身に塗りたくった土をはたき落としながら、オークの死骸を見つめた。
《レベルアップしました》
《レベルが上限に達しました》
《進化しますか?》
進化か。
ああ、もちろんだ、進化する。
全身の構造が変わっていくのを感じた。
力が漲ってくる。
これで俺はまた強くなれる。
*
[とあるゴブリンの視点]
おかしい
今日はやけにオークの数が多い。
まさか村の位置がバレたか?
いや、やつらは何かに恐れている、何を焦っているのだ。
「ギ」
俺はオーク達を見下ろしながら、原因を探るとする。
オークが来ている方向へ、木々を渡りながら向かっていった。
暫く進むと、煙が見えてきた。
何かが燃えている?
急いで向かうと、村があった。オークの村だ。
村の中央にはオークの死体が積み重ねられ、真っ黒に焼け焦げていた。家々は今もなお燃えていて、村の周囲には何十人もの人間が陣取っていた。何でこんなところに人間の部隊がいるんだ。何かを探しているのか、部隊長らしき人が何やら命令をしている。
これは村長に報告しなければ。
俺は木々を渡ってきた道を戻った。
部隊長の目線が、焦って帰るその後ろ姿をじっと追っていることにも気づかずに。
この日、外に出たゴブリンが村に戻ることは無かった。




